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ユートピア色のディストピア

ちょうど2週間前、ジョージ・オーウェルの名作「一九八四年」を読み終わった。
海外文学が苦手な私が1ヶ月もかからず読了してしまうほど展開が面白く、読み終わったらすぐに感想を書こうと思っていた。

そう、終盤に差し掛かるまではたしかにそう考えていたのだ。

一九八四年」は、"党"を盲信的に崇拝しルールに則った生活が強制される管理社会を描いている。
誰もがスクリーンに監視され、生活水準が下がっているにも関わらず"党"を肯定し続け、彼らから発せられた改竄済みの情報を嬉々として鵜呑みにする。

そんな思考停止社会の中で、主人公だけは私たちから見て「まとも」に思える疑問を抱き、密かに"党"への反逆を企てる──というのがこの本のあらすじだ。

中盤までは主人公が少しずつ人間的な自由を取り戻していく過程に希望を見出し、ハッピーエンドを期待する。

しかし後半に差し掛かるにつれて、だんだんと雲行きが怪しくなってくる。

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