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「自分らしさ」とは何か

多様性は企業が促進すべき価値観のひとつとなり、広告は「自分らしさ」のワードで溢れるようになった。画一的な基準に人間側が合わせるのではなく、すでにある状態をひとつの美しさとして認めることで、健やかさと美しさを両立できる可能性が広がった。

その一方で、「自分らしさ」とは何なのだろう、と考える機会も増えた。今日の自分が昨日の自分よりも自分らしくなったか、自分らしさレベルでいうと今の自分はどのあたりなのか、そもそも目指すべき自分らしさとは何なのか。明確な基準がなくなった分、「自分らしさ」のワードによって迷子になる人も増えているのではないか。

私がミッションとして掲げている「知性ある消費」には、流行のみを追うのではなく自分の意思を持って選びとる姿勢も含まれている。ゆえに、「自分らしさとは何か」は長らく考えてきたテーマのひとつだった。自分の意思で、自分らしい選択をすること。言い換えれば、他者から影響を受けることによって出来上がった自分という人間の皮を一枚一枚剥がしていったときに行き着く核。そんなものが果たして存在するのかどうか、折に触れて思考をめぐらせてきた。

日々消費と文化について調べ、学び、体験し、考える中でふと浮かび上がってきたのが “コンディション“という言葉だった。

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余談的小売文化論

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「知性ある消費」をテーマに、現代の消費行動や理想論と現実的な問題のギャップについて考え、言語化しています。「正解」を語るのではなく、読み手…

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