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ドラフト候補の「即戦力」は年に何人いるのか

ドラフト候補の評価を聞くときに、「即戦力」という言葉を何度も聞くし、見かける。
ここ数年はプロ野球のレベルが上がっていることが原因かどうかは分からないが、ドラフト上位の選手でもプロ入り初年度から活躍することは、一昔前と比較すると難しいように感じる。

そこで、即戦力となっている選手がここ5年で何人いたのかを確認して行こうと思う。


即戦力の定義とその理由

即戦力」の文字通り、1年目で以下の成績を残した選手が何人いるか調べていく。※短縮シーズンの2020年は除く

・先発投手:90回
規定投球回数:143回×2/3=95回

・救援投手:35登板
2024年パ・リーグ登板数ランキング:30位 37登板
2024年セ・リーグ登板数ランキング:30位 38登板
10月1日現在

・野手:290打席
規定打席:441打席×2/3=294打席

前年のドラフト1位のみ同時に振り返っていく。

2020年(120試合制)

※2020年は120試合のシーズンであったため以下の定義とする。
・先発投手:75回
規定投球回数:120×2/3=80回

・救援投手:30登板
2020年パ・リーグ登板数ランキング:30位 33登板
2020年セ・リーグ登板数ランキング:30位 35登板

・野手:240打席
120試合の規定打席:372打席×2/3=248打席

先発

森下暢仁  (広) ドラフト1位 明治大
防御率:1.91  登板数:18  勝利:10  敗戦:3  投球回:122.2  奪三振:124  WHIP:1.09
防御率:2位 勝利:5位 投球回:5位 奪三振:3位 新人王

救援

宮川哲   (西) ドラフト1位 東芝
防御率:3.83  登板数:49  勝利:2  敗戦:1  ホールド:13  セーブ:0  投球回:44.2  奪三振:45  WHIP:1.54
登板数:9位

伊勢大夢  (De) ドラフト3位 明治大
防御率:1.80  登板数:33  勝利:3  敗戦:1  ホールド:4  セーブ:0  投球回:35.0  奪三振:39  WHIP:1.14

津留﨑大成 (楽) ドラフト3位 慶応大
防御率:4.19  登板数:33  勝利:1  敗戦:1  ホールド:1  セーブ:0  投球回:34.1  奪三振:24  WHIP:1.40

野手

小深田大翔 (楽) ドラフト1位 大阪ガス
打率:.288  打席数:437  安打:109  本塁打:3  打点:31  盗塁:17  出塁率:.364  OPS:.745
打率:6位 盗塁:8位 出塁率:7位

楽天・津留崎
https://hochi.news/articles/20200207-OHT1T50003.html

セ・リーグ新人王は森下が獲得。
小深田は新人王を逃したものの西武・平良と新人王票を分け合った。
宮川は勝ちパターン定着とまではいかなかったが、ピンチ時から登板し火消しや、僅差で投げる場面もあった。

過去の新人王をまとめた記事は以下。

2019年ドラフト1位

太文字は「即戦力」

阪神 西純矢(創志学園)
広島 森下暢仁(明治大)
横浜 森敬斗(桐蔭学園)
巨人 堀田賢慎(青森山田)
ヤク 奥川恭伸(星稜)
中日 石川昂弥(東邦)

オリ 宮城大弥(興南)
千葉 佐々木朗希(大船渡)
福岡 佐藤直樹(JR西日本)
楽天 小深田大翔(大阪ガス)
西武 宮川哲(東芝)
ハム 河野竜生(JFE西日本)

大卒社会人の2人がしっかり1年目から活躍。
即戦力として期待に応えた形となった。
森下は単独指名なんだ、今でも鮮明に覚えてる。

2021年

先発

伊藤大海  (日) ドラフト1位 苫小牧駒沢大
防御率:2.90  登板数:23  勝利:10  敗戦:9  投球回:146.0  奪三振:141  WHIP:1.22
防御率:4位 勝利:6位 奪三振:3位

伊藤将司  (神) ドラフト2位 JR東日本
防御率:2.44  登板数:23  勝利:10  敗戦:7  投球回:140.1  奪三振:79  WHIP:1.09
勝利:5位

早川隆久  (楽) ドラフト1位 早稲田大
防御率:3.86  登板数:24  勝利:9  敗戦:7  投球回:137.2  奪三振:127  WHIP:1.18

救援

栗林良吏  (広) ドラフト1位 トヨタ自動車
防御率:0.86  登板数:53  勝利:0  敗戦:1  ホールド:0  セーブ:37  投球回:52.1  奪三振:81  WHIP:0.97
セーブ:2位 新人王

森浦大輔  (広) ドラフト2位 天理大
防御率:3.17  登板数:54  勝利:3  敗戦:3  ホールド:17  セーブ:0  投球回:48.1  奪三振:41  WHIP:1.24

野手

中野拓夢  (神) ドラフト6位 三菱自動車岡崎
打率:.273  打席数:525  安打:127  本塁打:1  打点:36  盗塁:30  出塁率:.321  OPS:.649
盗塁:1位

牧秀悟   (De) ドラフト2位 中央大
打率:.314  打席数:523  安打:153  本塁打:22  打点:71  盗塁:2  出塁率:.356  OPS:.890
打率:3位 安打:6位 本塁打:8位 打点:8位 OPS:3位

佐藤輝明  (神) ドラフト1位 近畿大
打率:.238 打席数:455  安打:101  本塁打:24  打点:64  盗塁:6  出塁率:.284  OPS:.749
本塁打:6位

横浜・牧
https://news.ntv.co.jp/n/tsb/category/society/ts32edd1707b274188b0ae6f5a3d7aab6c

セ・リーグ新人王は栗林が201票で獲得。
しかし、が76票、佐藤が8票、中野が5票、伊藤が4票と5人のルーキーが新人王票を獲得。
パ・リーグ新人王は255票を集めた高卒2年目のオリックス・宮城が受賞。
伊藤も21票を獲得した。
栗林伊藤は東京オリンピックにも出場した。

2020年ドラフト1位

太文字は「即戦力」

阪神 佐藤輝明(近畿大)
広島 栗林良吏(トヨタ自動車)
横浜 入江大生(明治大)
巨人 平内龍太(亜細亜大)
ヤク 木沢尚文(慶応大)
中日 高橋宏斗(中京大中京)

オリ 山下舜平大(福岡大大濠)
千葉 鈴木昭汰(法政大)
福岡 井上朋也(花咲徳栄)
楽天 早川隆久(早稲田大)
西武 渡部健人(桐蔭横浜大)
ハム 伊藤大海(苫小牧駒沢大)

ルーキーで4人の選手が「即戦力」として活躍。これは過去5年で最多の人数となっている。

2022年

先発

該当者なし

※投球回1位 隅田知一郎 (西) ドラフト1位 西日本工業大
防御率:3.75  登板数:16  勝利:1  敗戦:10  
投球回:81.2  奪三振:73  WHIP:1.47

救援

大勢    (巨) ドラフト1位 関西国際大
防御率:2.05  登板数:57  勝利:1  敗戦:3  ホールド:8  セーブ:37  投球回:57.0  奪三振:60  WHIP:0.89
登板数:5位 セーブ:2位 新人王

松本竜也  (広) ドラフト5位 ホンダ鈴鹿
防御率:3.56  登板数:50  勝利:4  敗戦:2  ホールド:4  セーブ:0  投球回:55.2  奪三振:54  WHIP:1.31

北山亘基  (日) ドラフト8位 京都産業大
防御率:3.51  登板数:55  勝利:3  敗戦:5  ホールド:16  セーブ:9  投球回:51.1  奪三振:58  WHIP:1.27

野手

上川畑大悟 (日) ドラフト9位 NTT東日本
打率:.291  打席数:301  安打:76  本塁打:2  打点:17  盗塁:8  出塁率:.360  OPS:.716

巨人・大勢
https://www.nikkansports.com/baseball/column/bankisha/news/202306030001654.html

2022年は90回以上投げた新人は0。
隅田の勝ち星がもう少しついていれば、到達したかもしれない。
大勢が抑えとして新人王を獲得。
北山はドラフト8位、上川畑はドラフト9位
日本ハムは下位から2人も即戦力を獲得した。
素晴らしい指名だったと思うし、彼らがこの順位まで残っていたという事実。

2021年ドラフト1位

太文字は「即戦力」

阪神 森木大智(高知)
広島 黒原拓未(関西学院大)
横浜 小園健太(市和歌山)
巨人 翁田大勢(関西国際大)
ヤク 山下輝(法政大)
中日 ブライト健太(上武大)

オリ 椋木蓮(東北福祉大)
千葉 松川虎生(市和歌山)
福岡 風間球打(ノースアジア大明桜)
楽天 吉野創士(昌平)
西武 隅田知一郎(西日本工業大)
ハム 達孝太(天理)

2022年、ドラフト1位で即戦力となる活躍をしたのは大勢のみ。
過去5年で唯一社会人卒のドラフト1位がいなかったことも原因かもしれない。

2023年

先発

荘司康誠  (楽) ドラフト1位 立教大
防御率:3.36  登板数:19  勝利:5  敗戦:3  投球回:109.2  奪三振:93  WHIP:1.26

救援

渡辺翔太  (楽) ドラフト3位 九州産業大
防御率:2.40  登板数:51  勝利:8  敗戦:3  ホールド:25  セーブ:1  投球回:48.2  奪三振:46  WHIP:1.03
ホールド:4位 

青山美夏人 (西) ドラフト4位 亜細亜大
防御率:2.96  登板数:39  勝利:0  敗戦:3  ホールド:1  セーブ:3  投球回:45.2  奪三振:34  WHIP:1.20

大津亮介  (ソ)  ドラフト2位 日本製鉄鹿島
防御率:2.43  登板数:46  勝利:2  敗戦:0  ホールド:13  セーブ:0  投球回:40.2  奪三振:21  WHIP:1.11

松山晋也  (中)  育成ドラフト1位 八戸学院大
防御率:1.27  登板数:36  勝利:1  敗戦:1  ホールド:17  セーブ:0  投球回:35.1  奪三振:50  WHIP:1.05

船迫大雅  (巨)  ドラフト5位 西濃運輸
防御率:2.70  登板数:36  勝利:3  敗戦:1  ホールド:8  セーブ:0  投球回:30.0  奪三振:33  WHIP:0.97

野手

森下翔太  (神)  ドラフト1位 中央大
打率:.237  打席数:377  安打:79  本塁打:10  打点:41  盗塁:1  出塁率:.316  OPS:.691

門脇誠   (巨)  ドラフト4位 創価大
打率:.263  打席数:348  安打:83  本塁打:3  打点:21  盗塁:11  出塁率:.302  OPS:.638

茶野篤政  (オ)  育成ドラフト4位 徳島IS
打率:.237  打席数:344  安打:74  本塁打:1  打点:23  盗塁:7  出塁率:.291  OPS:.560

福永裕基  (中)  ドラフト7位 日本新薬
打率:.241  打席数:325  安打:70  本塁打:2  打点:15  盗塁:2  出塁率:.289  OPS:.612

村松開人  (中)  ドラフト2位 明治大
打率:.207  打席数:304  安打:57  本塁打:1  打点:20  盗塁:1  出塁率:.252  OPS:.492

ソフトバンク・大津
https://column.sp.baseball.findfriends.jp/?pid=column_detail&id=015-20230612-02


荘司は1年を通してコンスタントに先発した。規定投球回には届かなかったが、大卒1年目ということを考えると素晴らしい成績。
青山
は開幕戦でセーブシチュエーションで登板もセーブ失敗し、すぐに中継ぎに回った。
もしシーズン序盤にセーブ失敗がなければ、もっとセーブ数を伸ばしていたかもしれない。
松山はシーズン後半から高い奪三振力を誇り勝ちパターンに定着。戦う顔をしている。
森下は中軸として活躍し、日本シリーズでも存在感を放った。
村松はOPS4割台にも関わらず、300打席に立った。ここは打撃成績しか記載していないが、守備指標がいい。
中日のセカンドレギュラーが不在だったというのもあるが、高いレベルで守れると多少打てなくても我慢してもらえる。よって後から打撃がついてくるパターンもある。
今季は打率:.278 OPS:.668と打撃成績が大幅に向上している。
ドラフト2位ということもあり、ポテンシャルを期待されていたのもあるかもしれない。


2022年ドラフト1位

太文字は「即戦力」

阪神 森下翔太(中央大)
広島 斉藤優汰(苫小牧中央)
横浜 松尾汐恩(大阪桐蔭)
巨人 浅野翔吾(高松商)
ヤク 吉村貢司郎(東芝)
中日 仲地礼亜(沖縄大)

オリ 曽谷龍平(白鷗大)
千葉 菊地吏玖(専修大)
福岡 イヒネイツア(誉)
楽天 荘司康誠(立教大)
西武 蛭間拓哉(早稲田大)
ハム 矢沢宏太(日体大)

「即戦力」は11人と最多だが、ドラフト1位は2人。
6人がドラフト4位以下の選手。
球団視点だと、即戦力だと考えてなかった選手が思いのほか活躍してくれたかもしれない。

2024年

先発

武内夏暉  (西) ドラフト1位 國學院大
防御率:2.17  登板数:21  勝利:10  敗戦:6  投球回:145.1  奪三振:107  WHIP:0.98
防御率:2位 勝利:7位

救援

古田島成龍 (オ) ドラフト6位 日本通運
防御率:0.79  登板数:50  勝利:2  敗戦:1  ホールド:24  セーブ:0  投球回:45.2  奪三振:43  WHIP:1.03
登板数:7位 ホールド:4位

野手

該当者なし

※打席数1位 度会隆輝  (De) ドラフト1位 ENEOS
打率:.255  打席数:272  安打:64  本塁打:3  打点:24  盗塁:2  出塁率:.306  OPS:.633

オリックス・古田島
https://pacificleague.com/news/10029997

武内は規定投球回、二桁勝利を達成。
感染特例でも抹消があったが、不調や調整での抹消は無し。シーズンを通してローテーションを回った。素晴らしい。
古田島はデビューから22試合連続無失点とNPB最多タイ記録を達成。
1年間1軍に帯同し50登板 防御率0点台 
24ホールドと素晴らしい成績。


2023年ドラフト1位

太文字は「即戦力」

阪神  下村海翔(青山学院大)
広島  常廣羽也斗(青山学院)
横浜  度会隆輝(ENEOS) ※高卒3年目
巨人  西舘勇陽(中央大)
ヤク  西舘昂汰(専修大)
中日  草加勝(亜細亜大)

オリ  横山聖哉(上田西)
千葉  上田希由翔(明治大)
福岡  前田悠伍(大阪桐蔭)
楽天  古謝樹(桐蔭横浜大)
西武  武内夏暉(國學院大)
ハム  細野晴希(東洋大)

東都リーグからドラフト1位が7人輩出され、話題になったが1年目では武内が抜けた状態。
巨人・西館は中継ぎで20ホールドと結果を出して、先発へ挑戦。
楽天・古謝は80回を投げて5勝を挙げた。
阪神・ 下村、中日・草加はトミージョン手術をして来年まで投げれない。

大卒or社会人卒が過去5年で最多の10人いたにも関わらず「即戦力」として活躍したのは1人。
豊作年と言われていたが、実際にプロに入らないと何も分からないということだ。

来年は誰が台頭してくるのか、武内を追い抜くような選手が出てくる事を楽しみにしてる。



まとめ

()内はドラフト1位

20年即戦力:5人(3人)
ドラフト1位大卒or社卒:5人 高卒:7人
ドラフト順位:1位:3人 3位:2人

21年即戦力:8人(4人)
ドラフト1位大卒or社卒:9人 高卒:4人
ドラフト順位:1位:4人 2位:3人 6位:1人

22年即戦力:4人(1人)
ドラフト1位大卒or社卒:6人 高卒:6人
ドラフト順位:1位:1人 5位:1人 8位:1人 9位:1人

23年即戦力:11人(2人)
ドラフト1位:大卒or社卒:8人 高卒:4人
ドラフト順位:1位:2人 2位:2人 3位:1人 4位:2人 5位:1人 7位:1人 育成:2人

24年即戦力:2人(1人)
ドラフト1位大卒or社卒:10人 高卒:2人
ドラフト順位:1位:1人 6位:1人

そう、即戦力なんてこれしかいない。
2023年ドラフトは上位36人、支配下人数は72人いて2人しかいない。
もちろん怪我や球団の方針等もあるので、一概には言えないが、ルーキーへの過度な期待は禁物。

ロッテのドラフト1位・上田希由翔はシーズン中に3カ月計画となる打撃改造を実施していたりする。実際には3カ月経つ前に1軍に上がったんだけど。

吉井理人監督(59)も「3カ月計画でちょっと打ち方修正しようというか、そういうのをバッティングコーチとコーディネーターと話し合ってやってくれた。ちょっと(1軍に)上がってくるの早かったんですけど、成果は出てる」とルーキーの活躍を喜んだ。

https://www.nikkansports.com/baseball/news/202406160001371.html

ポジション別

​先発:6人
救援:14人
野手:10人

ポジション別でみると先発が最も少なく6人​
救援はその倍以上の14人となった​

​先発は2022年に伊藤大海、伊藤将司、早川隆久の3人いたものの基本的には1人。​
救援は2023年が5人、基本的に複数人即戦力として活躍している。
※2024年は古田島のみだったが​
先発での即戦力6人の内訳を見ると、阪神・伊藤将司はドラフト2位だが、他の5人は全員1位である。​
※森下、伊藤大海、早川、荘司、武内
先発の即戦力が欲しい場合は、1位もしくは2位を使う必要があるということだ。​
逆にそのくらい能力がある選手は1位候補となるということにもなる。


2024年ドラフトで即戦力候補だと以下の4人の名前が多くの媒体で上がっている。
関西大・金丸夢斗
明治大・宗山塁
愛工大・中村優斗
青学大・西川史礁
この4人の中から「即戦力」は何人出てくるのか、1年後を楽しみにしておこうと思う。

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