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序論 はじまりの鐘

心情をあらわにすることは、できはしない。
かといって、それを心にだけとどめることもできない。

===アナザー・スカイ==


幾分なりとも、それが言い表されたのは、比喩の問題であって、彼にとって、現実のことは、目に入らなかった。
彼の目には、永遠の時があるがゆえに、言葉以上に、想像する未来、それもかなり遠くの未来に心躍らすのである。
果たして、彼の目にどのような未来が見通されているだろう。
誰も知らない、そう、誰もそこに未だ居ない・・・。
ワトソンは、ヒトの悪い点を見つけて、それによって、自己を正すという性質がある。彼の特徴は、未来を見通す目がないということだ。
現実に健康診断が悪くないと、それで良いという結論を導き出す。
ワトソンは、言った。

「現実そんなこと起きやしない。
不安の99%は、起きない」

ホームズは,ワトソンと違っていた。
彼は、ヒトの悪い点に目もつむり、自己を改善する未来を見通す目があった。
彼の特徴は、現実健康診断が良かろうとも、起こりうる、現実に備え、結論を導き出すのであった。
ホームズは言った。

「現実に、起こりうることは、起きる」

〈序論 はじまり〉

警鐘が鳴り止まない。
彼の目には、つぶさにみえる埃があり、それを覚まされるのは、現実に目をあけているときだけだ。
目を瞑っていると、ホコリは目に入らない。
従って、目覚めてないということだ。

アンドルワ「埃をなんとかしてくれ」

光の路に、埃が舞う。
それを見ている。しかし、光が照れば、塵も輝いてみえる。目覚めているアンドルワにとって、このとき、最大の目覚ましだった。

アンドルワ「眩しい、まったく、なんて朝だ。しかしいい天気だよ、皮肉にも全くそう。」

警鐘はまだ鳴りやまない。

アンドルワ「今日は、教会に行く日だった。忘れていたよ。」

鐘の音と、光とほこりに目が覚めたワトソンは、むくっと起き上がり、時計をみた。
午前6時、鐘の音の合間に、時折、チュンチュンと、鳥の泣く声が聴える。

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