性欲
朝の10時過ぎから1時間くらい恋人と電話をした。はやくご飯を食べたかった私は話がひと段落する度に、電話切る?とそれとなく言った。すると、試されてる?と彼が笑ったので、声を張って否定した。恋人を試すような面倒な奴には断じてなりたくない。
電話を終えてベッドから跳ね上がり、そそくさとご飯の準備をした。冷蔵庫に保存しておいたお米を1合以上使って納豆チャーハンを作った。分量を計らなかったりだしを忘れたりしたので味が薄かった。喉を詰まらせながら食べ続けた。
anone,というセクシュアリティ診断をwebで受けてみた。シスジェンダー(体の性とこころが一致)でヘテロセクシュアル(異性に性的欲求を抱く)という結果は、まあそうだろうなという感じだった。しかし、恋愛指向ではレズビアンだと言われて少々驚いた。私にはこれまで自分が好きになった(と思い込んできた)人たちが15人弱いるのだが、そのすべてが異性だからである。ただ、性別にとらわれずに恋愛することへの憧れはずっとあって、それが無意識に診断結果を左右したのだろうか。
もしくは、私が恋だと信じて疑わなかったものは実際はそうではなく、異性に惹かれるのは(メディアに影響された上での)性的な関心が根底にあるに過ぎない、と解釈することもできる。納得のいく答えは思いつかず、私はまだまだ自分の恋愛観を模索する段階だ。
ごろごろ寝転びながら、先日買った、僕のマリさんの『常識のない喫茶店』を読んだ。喫茶店で働く筆者はお客さんをとことん観察し、嫌ったり好んだりする。マナー違反をする人をバッサリ切っていく様にはわくわくが止まらない。そして、店員さんには良客だと認識されたいものだなとつくづく思う。
開店より1時間遅れでシフトに入って欲しいと言われていたので、その通りにバイト先へ向かった。特別なイベント日だった今日はお客様が大勢いらっしゃった。去年の秋に美術館で出会った人が来店して、はっとした。気まずくなりながらも、お久しぶりですと挨拶した。
結構好きな同僚がいて、パーマだった髪を、好感度の高そうな髪型に変えていた。私が脳死で褒めると、笑って悪態をつかれた。バイトが終わってからその同僚と飲みに行きたいなと密かに考えていたけれど、雨が降ってきたせいもあってそれは叶わなかった。2人とも自転車出勤なのだ。またそもそも、私が誘う勇気を持ち合わせていなかったのもある。
恋人からのラインに挨拶と感謝を返してから、すきだよ、と打ってしまおうかと迷った。お酒を飲んだために家に帰ってからもほろ酔い状態だったので、なにかに甘えたかった。しかし、文脈を無視した「好き」は自分本位でしかないだろうと思ってやめた。酔ったときに出る依存心や性欲は好意とは別次元なのだと、いいかげん理解しなければならない。
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