キュービィロップ
昼前に起きた。
春の京都博覧会で買った、紺色の花柄のワンピースを着た。住んでいる寮の玄関で会った寮母さんが、昭和レトロな感じで素敵、とにこにこしてくださったので嬉しかった。
案の定外はひどい暑さで、なにか飲み物が欲しくなった。そこで、かねてより行ってみたかった、丸太町のItalGabonというブックカフェへ向かった。
入店して、奥の方にある席に座った。悩ましいほど数あるエスプレッソのメニューの中から、ラム・カフェラッテを注文した。(カフェラッテを口にするのは少々恥ずかしかった。)ちょうどお昼時だったけれど、お腹が空いていなかったのでフードは頼まなかった。店内はガーリックの匂いで満ちていて、これは“お洒落なカフェのランチの匂い”だなと思った。
BGMには雰囲気のよい曲が流れていた。そのうちの一曲をShazamで調べると、Seabearの“Softship”という曲だった。
カフェラッテを飲みつつ、開高健さんの『ベトナム戦記』を手に取って読んでみると、予想していたよりも面白かった。たまに傍線が引かれていて、誰かが後書きしたんだ!とわくわくしてしまったけれど、よくよく見ると印刷だった。古本にある手書きの線や文字に、これを読んだ先人がいたのだな、とロマンを感じるのは私だけだろうか。
お店をあとにし、すぐ側にある誠光社という本屋さんへ入った。同じく開高健さんの、『地球はグラスのふちを回る』というエッセイ集を購入した。エッセイを買うのは自分にとって珍しいことである。愛想のよい店員さんに、ブックカバーつけますか?と訊かれ、大丈夫です、と断った。
そこから河原町まで移動し、ふらっと歩いた。
クリームソーダのカフェを曲がった路地に、ずっと気になっていたとてもかわいい店構えのRomanceというショップがあるのだが、今日は勇気を出して行ってみた。
ぱたりと閉じられたドアをそうっと開けると、ウキウキするようなファンシーな空間が広がった。ふたりの店員さんが笑顔で迎えてくださったのでほっとした。
服は私には手の届かない値段のものが多かったので、アクセサリーを中心に見た。どれもカラフルで心が躍った。私についてくれた店員さんは、延々と悩む私をフォローしながら、きらきらした目でやさしく接客してくださった。ようやく選んだのはチェーンのかたちをしたパステルカラーのピアスで、私はピアスを開けていないためイヤリングに付け替えてもらえた。30分後に出来るとのことだったので、そのあいだにべつのお店を見ることにした。お待たせするお詫びに…といって、店員さんは飴の入った箱を差し出してくださり、私はキュービィロップをえらんだ。
ちょっと歩き、MILOUという古着屋さんに行った。1人でいた店員さんがたくさん話してくださり、彼の子どものときの思い出や、好きな音楽などについて談笑した。おすすめのアーティストをきくと、Momが好きだと言われたので同意した。私は数曲しか知らなかったのだが、『悲しい出来事-THE OVERKILL-』というアルバムは特にいいらしい。
ワンピースを4つ試着する間も、店員さんは待っていて、カーテン越しに喋ってくださった。最初に着たものと、三番目に着たものの計2着、それとパールのネックレスも購入した。ちょっと大きな買い物だったけれど、それでも店内半額セールをしていたためかなりお買い得になった。実質1着分の値段で2着買えたことになる。
イヤリングを取りにRomanceへ戻ると、おかえりなさいと言ってもらえた。店員さんはまた飴を選ばせてくださり、私はまたキュービィロップを取った。
帰宅する途中、好きな後輩と会った!
彼女は、今日かわいいですね!さいこうです!と褒めてくれたので、ありがとうございます、とへらへら笑って返した。いってらっしゃい、と手を振って別れたが、どこ行くの?とか、あなたもかわいいよ!とか言えば良かったかもなと少しだけ後悔した。
ご飯を食べながら『時計じかけのオレンジ』を流した。今のところハマりはしていないけれども、名作なのでとりあえず全部観てみようかと思っている。アレックスが目をガン開きにさせられたところで中断した。
就活エージェントの相談会に初めて出席した。メンターの方が優しく快活に話してくださったので、単純ではあるが就活に希望が見えそうな気がした。
先述したMomのアルバムの中から、「今日のニュースとこれからの計画」を聴いてみた。Momにしては不穏さはなく、歌詞も明るかった。こっちの方がよっぽど、あかるいみらいである。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?