ストロング

朝、電話をした恋人の声は元気がなさそうに聞こえた。彼に励ましてほしいと言われたので、「大丈夫だよ」と言い、それが仰々しく響くのが恥ずかしくて「たぶん」と付け足した。そしてすぐに、これは彼を不安にさせてしまう余計な一言だったなと後悔した。

2限の講義が終わり、自転車で走っていると一台のループに追い越された。その運転者が片手にミスドの箱を持っているのを見て、思わず笑みがこぼれた。ミスドはなんとなく幸せの象徴な気がする。

休憩時間にカップ式自販機でコーヒーを買おうとすると、レギュラーとアメリカンが売り切れていた。仕方なく選んだストロングを中和するために、ミルクも入れた。
お金を下ろし、残高にショックを受けた。なんで最近減りが早いのだろうと考えて、自動引き落としの年金のせいだと合点がいき哀しくなった。

3限のドイツ史の講義で精悍なビスマルクの写真を見て、もっと昔はさぞかっこよかったのだろうと想像した。「ビスマルク 若い頃」で検索をかけたが、ベテラン俳優のそれとは違い、期待したような写真は出てこなかった。

漠然と苦手なドイツ語のクラスメイトを見かけて、ポニョの父親に似ているなとふと思った。登場人物一覧を調べてそいつがフジモトと呼ばれることを初めて知り、その似つかわしくない現実的な名前に驚いた。同時に、リサの25歳という若さにも仰天した。

5限の芸術学の講義で、『パリ、テキサス』のワンシーンを観た。面白かったので、京都で上映しているうちに行きたかったなと思った。

学生寮に帰り、食堂に行くと友人がいた。かなりストレスを溜め込んでいるらしい秀才の彼女は、もう勉強と競馬しかしたくねえ〜と嘆いていた。相容れなさそうな二つが並列されているのが可笑しかった。

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