ハニーディップ

11時過ぎに起きて、恋人と電話した。
前回行けなかったご飯のリベンジのため、夜に会う約束をした。私がどこで何を食べるかを決めかねていると、彼が家の近くで定食を食べて、次の日モーニングも行こう、とうれしいプランを立ててくれた。いつもありがたい。同時に、私はこのように任せてしまうことが多いので改善しなければとも思う。

14時から19時までインターンに行った。終わると一旦家に帰り、メイクを直したりアイロンで髪を伸ばしたりしてから、自転車で恋人の家に向かった。夜でもまだまだ暑くて、いつになったら着くのか、と気が遠くなりつつ走った。

アパートのドアから出てきた彼は、初めて会ったときみたいな顔をしていた。

ふたりとも自転車に乗り、彼の家の周辺をぐるりと回った。道中、彼はご飯屋さんを何軒か指でさして紹介してくれた。
それから、先客のいない古びれた定食屋さんに行った。いちばん狭い角の席に座り、私はおそらく最もコスパが悪いそうめんを、彼はかつ丼とうどんのセットを頼んだ。あとは生ビールを飲んだ。斜め上のテレビでは避暑観光地ランキングの番組をやっていて、ここ行ったことある?と訊いたり、お互いの修学旅行の話をしたりした。貴船の川床行きたいね、と言い合った。一緒にぼんやりとテレビを観るのはなんだか幸福感があった。

帰る前にドラッグストアで歯ブラシを買った。彼は歯磨き粉を買っていたので、レジで順番にお会計するのがちょっと恥ずかしかった。

家に着いてまもなく、エアコンのリモコンを取った彼に後ろから抱きついて、そのまま抱き合った。
終わると、キスをして、腕の中に入れてくれた。彼は疲労がすごいと笑っていたが、それでもこういうふうに毎回隣に居させてくれ、絶対に放置しないところがとても安心できる。

しばらくまどろみ、そして交互にお風呂に入った。テレビのYouTubeで、彼の好きな曲たちのMVをみた。森田童子の「たとえばぼくが死んだら」が流れて、曲も映像もめちゃめちゃいいなと思ったのだけれど、Spotifyでは見つけられなかった。

日付が変わる前にベッドに横たわり、もうすぐに寝れそうだと彼は言った。私はあまり眠くなかった。彼が隣で寝息を立てはじめて、私はお手洗いに行った。戻ってくると抱きつかれたので、無意識にしろ意識的にしろ嬉しかった。
たまに彼の寝言を聞いた。You should...だけ聞き取れて、そのあとはよくわからない言語を喋っていた。どうやら以前の渡航先の夢を見ていたらしい。

8時にアラームが鳴って、目を覚ました。眠気を払拭するために彼が音楽をかけてくれたので、朝に合う曲をリクエストした。SATELLITE LOVERSの『SONS OF 1973』が良かったが、これもSpotifyに無かった。

ゴゴという喫茶店でモーニングを食べようと提案してもらい、自転車で出町柳まで行った。止まってくれた車や避けてくれた歩行者に片手を挙げて応える彼を後ろで見ていた。まったく嫌味もなく自然で、ああ好きだなと思った。彼の人の良さとか気遣いを見るたび、この人はだれと付き合っても相手を幸せにするのだろうなと思う。

自転車を鴨川沿いに停めてから、やっぱり今出川のタナカコーヒに行こうということになった。しかし結局、その途中で見つけたミスドに満場一致で入店した。

迷った挙句、ハニーディップとポン・デ・エンゼルを食べた。彼はパイと、一番好きだというチョコファッションを食べていた。
この前一緒に観た『ルックバック』の感想を訊いてみた。てっきり私と同じくそこまで感動しなかったのだと思っていたが、余韻に浸ってた、と彼が答えた。人の気持ちとはわからないものだなと考えた。彼とは、とくに映画への評価は一致しないことが多い。
食べ終わったあとも少しゆっくりして、彼が渡航先で撮ったご飯やお祭りの写真を見せてもらった。

このあと大学に行くという彼と逆方向に別れた。院生さんは夏休みも大学に行くらしい。裁量研究制だ、と彼は言っていた。

自分の家に帰って服を着替え、大量に溜まった洗濯物を洗い、クリーニングのためにカーテンを取り外した。今日がバイトやインターンの無い日で良かったと安堵した。

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