しりとり

2つ前の恋人が夢に出てきた。自分のなかから既に彼への思慕は消えているので、2つ前、という数字でしかなくなってしまう。

インターン関連のメールを作成した。ものすごくだるかったが、キーボードを打つ最中はアドレナリンが出ていた。

DYGLを聴きながら、歩いて三条の交差点へ向かう。約束の15時には5分遅れた。座っている恋人に声をかけたとき、あ、かっこいい、と思った。彼はいつもビビッドカラーばかり着るが、今日のカーキのTシャツのように落ち着いた色のほうが似合う気がする。それは口に出さなかったけれど。

彼が調べてくれたカフェ、so-bに行った。先客はいない。私たちは納涼床を期待していたので、店主さんに尋ねると、本来は予約が必要だが、空いているということで案内してくださった。
鴨川を望むバルコニーの、端の席に腰掛けた。眺めも気候も、きわめて穏やかだった。彼はオリオン、私はコロナビールを頼んでかるく乾杯した。

旅行先どこにしようね、とだらだら話し合った。白浜、鎌倉、小豆島、伊勢、熱海、岐阜、沖縄などいろいろ挙げたあとで、金沢で決定の方向になった。けれど、旅行割のキャンペーンが終わっているサイトが多いとわかり断念した。彼も私も、自分の行ったことのない場所を希望したため、最終的には最初の案だった京都の日本海側で確定した。

頭上の木にやってきたカラスに私が怯えていると、彼がカラスにカラス語で諭してくれたのでまもなくどこかへ行った。カラス語、こう文字にするとほんまにありそう。

551食べたい!と言った彼に乗じて、高島屋に行った。肉まん2個セットを買い、聖書布教団体のいる外のベンチにすわって食べた。人の往来が激しくてそわそわした。

それから、私の家まで一緒に歩いた。すこし疲れていて、お互いほとんど喋らなかった。しかし私に限って言えば、それは全く不快ではなかったし、特段気を遣うこともなかった。ただずっと手を繋いでいた。

部屋のベッドで抱き合った。私はここ4週間、生理(のようなもの)が続いているので、血(のようなもの)を彼に見せないよう、はらはらしていた。結局真っ白の下着はよごれてしまった。

橙色に暗い部屋のなかで、彼は眠った。私は起き抜けに彼の名前を呼んだ。

「ん?」
「しりとりしよう」
「いやだ」
「大工」
「…」

目が冴えてしまったあとで、しりとりできなくてごめんね、と彼は笑った。

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