シレット語の文字による日本語表記

2月21日は国際母語デー且つバングラデシュでベンガル語国語化運動記念日です。

バングラデシュやインドで用いられるインド語派のシレット語シロティナーガリー文字というナーガリー系の固有文字で表記される言語で、ベンガル文字も用いられます。
シロティナーガリー文字は各種インド系文字で有気音だった字母が高平調を示す字母に変化しています。

今回はシロティナーガリー文字による日本語表記を取り上げます。


母音字

ベンガル文字やデーヴァナーガリー文字など一般的なインド系文字と異なり、原則的に母音記号による長短の区別がされません。
母音記号の配置を説明するために、母音字Aꠀ ・ আ》[a ア]を“担母音記号”として用いています。

  1. Aꠀ・ꠀꠣঅ・আ》】ア

  2. Iꠁ・ꠀꠤই・অিまたはঈ・অী》】イ

  3. Uꠃ・ꠀꠥউ・অুまたはঊ・অূ》】ウ

  4. Eꠄ・ꠀꠦএ・অে》】エ

  5. Oꠅ・ꠀꠧও・অো》】オ - シロティナーガリー表記において母音記号OOは語頭と語中では表記されない。

半母音表記

ベンガル語ベンガル文字と同じく、イ段母音字ꠁ◌ / ই◌》と他の母音字との連字でヤ行音, オ段母音字ꠅ◌ / ও◌》あるいはウ段母音字ꠃ◌ / উ◌》と他の母音字との連字でワ行音を表します。

  1. IAꠁꠀ・ꠀꠤꠀইঅ=অিঅ・ইআ=অিআ》】ヤ・イア・ャ

  2. IUꠁꠃ・ꠀꠤꠃইউ=অিউ》】ユ・イウ・ュ

  3. IEꠁꠄ・ꠀꠤꠄইএ=অিএ》】イエ・イェ・ェ

  4. IOꠁꠅ・ꠀꠤꠅইও=অিও》】ヨ・イオ・ョ

  5. OAꠅꠀওঅ・ওআ》】ワ・オア・ァ=ヮ - 語頭あるいは母音の後に用いる。

  6. UAꠃꠀ・ꠀꠥꠀউঅ=অুঅ・উআ=অুআ》】ウア・ァ=ヮ - 子音のあとでウ段母音記号と共に用いる。

  7. UIꠃꠁ・ꠀꠥꠁউই=অুই》】ウィ=ヰ・ウイ・ィ

  8. UEꠃꠄ・ꠀꠥꠄউএ=অুএ》】ウェ=ヱ・ウエ・ェ

  9. UOꠃꠅ・ꠀꠥꠅউও=অুও》】ウォ=ヲ・ウオ・ォ

二重母音

二重母音は原則的に母音字あるいは母音記号と母音字の連字で表し、ドヴィスヴァラという二重母音記号を用いる場合があります。

  1. AIꠀꠁ=ꠀꠂ・ꠀꠣꠁ=ꠀꠣꠂঅই・আই》】アイ

  2. UIꠃꠂ・ꠀꠥꠂউই=অুই》】ウイ - ワ行のウィ[wi]との区別のためにドヴィスヴァラを付加。

  3. EIꠄꠁ・ꠀꠦꠁএই・অেই》】エイ

  4. OIꠅꠂ・ꠅꠁঐ=ওই・অৈ=অোই》】オイ

  5. AUꠀꠃ・ꠀꠣꠃঅউ・আউ》】アウ

  6. EUꠄꠃ・ꠀꠦꠃএউ・অেউ》】エウ

  7. OUꠅꠃঔ=ওউ・অৌ=অোউ》】オウ - ベンガル文字と異なり、専用の母音字・母音記号が存在しない。

  8. AEꠀꠄ・ꠀꠣꠄঅএ・আএ》】アエ

  9. OEꠅꠄওএ・অোএ》】オエ - ベンガル語では語末のYYA》を用いてAYঅয়〉[オエ]あるいはOYওয়〉[オエ]という風に表すことが多い。

  10. AOꠀꠅ・ꠀꠣꠅঅও・আও》】アオ

  11. EOꠄꠅ・ꠀꠦꠅএও・অেও》】エオ

鼻母音表記

カ行・ガ行の撥音はANGKOꠀꠋꠇꠧআঙ্কো》〉[アンコ]やENGGIꠄꠋꠉꠤএঙ্গি》〉[エンギ]のようにKO》及びGO》の前にアヌスヴァーラꠀꠋ》[-ŋ- ン]付き字母を配置します。
TAN-Iꠔꠣꠋꠁতাঙি》〉[タンイ]やKING-IOꠇꠤꠋꠁꠅকিঙও》〉[キンヨウ]のようにンとア行・ヤ行を分ける表記にも用いられるように推測できます。

  1. ANGꠀꠋ・ꠀꠣꠋ-অঙ্・আঙ্-》】アン

  2. INGꠁꠋ・ꠀꠤꠋ-ইঙ্=অিঙ্-》】イン

  3. UNGꠃꠋ・ꠀꠥꠋ-উঙ্=অুঙ্-》】ウン

  4. ENGꠄꠋ・ꠀꠦꠋ-এঙ্=অেঙ্-》】エン

  5. ONGꠅꠋ・-ꠀꠧꠋওঙ্=অোঙ্-》】オン

子音字

シロティナーガリー文字の各子音字は原則的に広いオ[ɔ]を含む音節文字となっていて、オ段が語末に来る場合に限り、母音記号Oꠀꠧ》(※母音記号配置の説明のため、母音字A《》を担母音記号として使用)が使用されます。

シロティナーガリー文字の現行正書法ではハサンタꠀ꠆》を子音字の上部に付加して、次の子音字との連字でKKIUꠇ꠆ꠇꠤꠃক্কিউ》〉[ッキュウ]やNMAꠘ꠆ꠝꠣন্মা》〉[ンマ]という風に促音》及び撥音》を表します。

ベンガル文字やデーヴァナーガリー文字と同じく合字が存在し、ユニコードでは恐らくビラーマ付き子音字ꠇ꠬》あるいはハサンタ付き子音字ꠇ꠆》と子音字を合成してKKOꠇ꠬ꠇ=ꠇ꠆ꠇক্ক》〉[ッコ]やNNOꠘ꠬ꠘ=ꠘ꠆ꠘন্ন》〉[ンノ], CCHOꠌ꠬ꠍ=ꠌ꠆ꠍচ্ছ》〉[ッソ], MBOꠝ꠬ꠛ=ꠝ꠆ꠛম্ব》〉[ンボ]のように表すと思われるのですが、未対応のフォントが多いようです。

  1. KOꠇꠣকা》/ꠇꠤকি》/ꠇꠥকু》/ꠇꠦকে》/ꠇ・ꠇꠧ《ক-・-কো》/ꠇ꠆ꠇক্ক》】カ/キ/ク/ケ/コ/ッコ

  2. GOꠉꠣগা》/ꠉꠤগি》/ꠉꠥগু》/ꠉꠦগে》/ꠉ・ꠉꠧগ-・-গো》】ガ/ギ/グ/ゲ/ゴ

  3. CHOꠍꠣছা》/ꠍꠤছি》/ꠍꠥছু》/ꠍꠦছে》/ꠍ・ꠍꠧছ-・-ছো》】サ/スィ/ス/セ/ソ - アッサム文字と同じく有気音チャCH / छ》に対応する字母を用いる。

  4. SOꠡꠣসা》/ꠡꠤসি》/ꠡꠥসু》/ꠡꠦসে》/ꠡ・ꠡꠧস-・-সো》】シャ/シ/シュ/シェ/ショ - Omniglotによるシレット語ベンガル文字表ではシャ行音の表記にSA》を用いる。

  5. JHOꠏꠣঝা》/ꠏꠤঝি》/ꠏꠥঝু》/ꠏꠦঝে》/ꠏ・ꠏꠧঝ-・-ঝো》】ザ/ズィ/ズ/ゼ/ゾ - マニプーリ語JHAMꯓ / ঝ》と同じく有気音ヂャJH / झ》に対応する字母を用いる。

  6. JOꠎꠣজা》/ꠎꠤজি》/ꠎꠥজু》/ꠎꠦজে》/ꠎ・ꠎꠧজ-・-জো》】ジャ/ジ・ヂ/ジュ/ジェ/ジョ

  7. TOꠔꠣতা》/ꠔꠤতি》/ꠔꠥতু》/ꠔꠦতে》/ꠔ・ꠔꠧত-・-তো》】タ/ティ/トゥ/テ/ト

  8. TTOꠐꠣটা》/ꠐꠤটি》/ꠐꠥটু》/ꠐꠦটে》/ꠐ・ꠐꠧট-・-টো》】タ/ティ/トゥ/テ/ト - 英語経由の借用語・固有名詞に用いる。

  9. COꠌꠣচা》/ꠌꠤচি》/ꠌꠥচু》/ꠌꠦচে》/ꠌ・ꠌꠧচ-・-চো》】チャ/チ/チュ/チェ/チョ

  10. TCHOꠔ꠆ꠍꠣৎছা》/ꠔ꠆ꠍꠤৎছি》/ꠔ꠆ꠍꠥৎছু》/ꠔ꠆ꠍꠦৎছে》/ꠔ꠆ꠍ・ꠔ꠆ꠍꠧৎছ-・-ৎছো》】ツァ/ツィ/ツ/ツェ/ツォ - 語頭ではTꠔ꠆ / ৎ》が省略される。

  11. DOꠖꠣদা》/ꠖꠤদি》/ꠖꠥদু》/ꠖꠦদে》/ꠖ・ꠖꠧদ-・-দো》】ダ/ディ/ドゥ/デ/ド

  12. DDOꠒꠣডা》/ꠒꠤডি》/ꠒꠥডু》/ꠒꠦডে》/ꠒ・ꠒꠧড-・-ডো》】ダ/ディ/ドゥ/デ/ド - 英語経由の借用語・固有名詞に用いる。

  13. NOꠘꠣনা》/ꠘꠤনি》/ꠘꠥনু》/ꠘꠦনে》/ꠘ・ꠘꠧন-・-নো》/ꠘ꠆・ꠘ꠬ন্》】ナ/ニ/ヌ/ネ/ノ/ン

  14. HOꠢꠣহা》/ꠢꠤহি》/ꠢꠥহু》/ꠢꠦহে》/ꠢ・ꠢꠧহ-・-হো》】ハ/ヒ/フ/ヘ/ホ

  15. PHOꠚꠣফা》/ꠚꠤফি》/ꠚꠥফু》/ꠚꠦফে》/ꠚ・ꠚꠧফ-・-ফো》】ファ/フィ/フ/フェ/フォ

  16. BOꠛꠣবা》/ꠛꠤবি》/ꠛꠥবু》/ꠛꠦবে》/ꠛ・ꠛꠧব-・-বো》】バ/ビ/ブ/ベ/ボ

  17. POꠙꠣপা》/ꠙꠤপি》/ꠙꠥপু》/ꠙꠦপে》/ꠙ・ꠙꠧপ-・-পো》】パ/ピ/プ/ペ/ポ

  18. MOꠝꠣমা》/ꠝꠤমি》/ꠝꠥমু》/ꠝꠦ《মে》/ꠝ・ꠝꠧ《ম-・-মো》】マ/ミ/ム/メ/モ

  19. ROꠞꠣরা》/ꠞꠤরি》/ꠞꠥরু》/ꠞꠦরে》/ꠞ・ꠞꠧর-・-রো》】ラ/リ/ル/レ/ロ

  20. LOꠟꠣলা》/ꠟꠤলি》/ꠟꠥলু》/ꠟꠦলে》/ꠟ・ꠟꠧল-・-লো》】ラ/リ/ル/レ/ロ

  21. BHOꠜꠣভা》/ꠜꠤভি》/ꠜꠥভু》/ꠜꠦভে》/ꠜ・ꠜꠧভ-・-ভো》】ヴァ/ヴィ/ヴ/ヴェ/ヴォ - ベンガル文字使用言語の大半及びその近隣言語と同じく有気音バBH / भ》に対応する字母をラテン文字ブイV》に対応する字母として用いる。