見出し画像

点字の字母名について

今回は点字の字母名について取り上げます。

ユネスコ式ブライユ点字の字母名

1950年代にユネスコでアジア・アフリカ諸言語の点字表記法作成の基盤として作成されたルールに基づく字母の呼称です。英語版ウィキペディアの【International uniformity of braille alphabets】の項で字母名が確認できます。
資料は https://unesdoc.unesco.org/ark:/48223/pf0000071103 で確認できます。

ブライユ点字に対応するラテン文字は英語の字母名と共通で、派生音を示す字母は“セカンド”が前についたり、連字は英字母名で読まれます。
日本語表記における字母名は便宜上、日本語本来のローマ字母名で示しています。
各言語におけるラテン字母の連字の字母名が存在するものも記載しています(※各言語の点字表記と発音が異なる字母を含む)。
配列はブライユ点字順で、全角ギュメ内はブライユ点字に本来対応するラテン字母です。5段目の字下げA~Jは便宜上、点字A~Jに対応する算用数字で示しています。

DOTS-1 AA》】エー[a ア/ɑ ア/ɐ ア/ə ア]
DOTS-12 BB》】ビー[b ブ]
DOTS-14 CC》】シー[k ク/s ス/ʦ ツ/c チュ/ʧ チ]
DOTS-145 DD》】ディー[d ド]
DOTS-15 EE》】イー[e エ/ɛ エ/ə ウ]
DOTS-124 FF》】エフ[f フ]
DOTS-1245 GG》】ジー[ɡ グ/ʒ ジュ/ʤ ヂ]
DOTS-125 HH》】エイチ[h ホ/x ハ]
DOTS-24 II》】アイ[i イ/ɪ イ]
DOTS-245 JJ》】ジェイ[ʒ ジュ/ʤ ヂ/ɟ ヂュ/j ィ]
DOTS-13 KK》】ケー[k ク]
DOTS-123 LL》】エル[l ル]
DOTS-134 MM》】エム[m ム]
DOTS-1345 NN》】エヌ[n ヌ・ン]
DOTS-135 OO》】オー[o オ/ɔ オ/ɒ ア]
DOTS-1234 PP》】ピー[p プ]
DOTS-12345 QQ》】キュー[q ク/kʷ クヮ/ɢ グ/k ク/kʃ クシュ]
DOTS-1235 RR》】アール[r ル/ɾ ル/ʀ ル/ɹ ル]
DOTS-234 SS》】エス[s ス]
DOTS-2345 TT》】ティー[t ト]
DOTS-136 UU》】ユー[u ウ/ʊ ウ/ʌ ア]
DOTS-1236 VU》】ブイ[v ヴ/ʋ ヴ]
DOTS-1346 XX》】エックス[ks クス/x ハ/χ ハ/ʃʲʧʲ シチ/o オ]
DOTS-13456 YY》】ワイ[j ィ/y ユ]
DOTS-1356 ZZ》】ゼット[z ズ]

DOTS-12346 2ND S【⠯《Ç》】セカンドエス[ʂ シュ/ᵴ ス/s ス]
DOTS-123456 2ND DH【⠿《É》】セカンドディーエイチ, サードユー[ɖʰ ド/ᵶ ズ/ðˤ ズ/ʎ リュ/ɥ ユイ] - 別名は〈3RD U〉で、国際音声記号《ɥ》に対応する字母として予定されていた。
DOTS-12356 AYIN【⠷《À》】アイン[ʕ ァ/ʔ ッ/ɻ ル/ʐ リ/a ア] - 字母名はアラビア文字やヘブライ文字などセム系文字の字母名に由来。
DOTS-2346 DH【⠮《È》】ディーエイチ[ð ズ/dʰ ド/ɮ ル] - 字母名はアルバニア語で〈DHË〉[], ソマリ語で〈DHA〉[], パーリ語で〈DHA〉[ダハ]。
DOTS-23456 2ND TÙ》】セカンドティー[ʈ ト/ᵵ ト]

DOTS-16 CHÂ》】シーエイチ[ʧ チ/cʰ チュ] - 字母名はウイグル語で〈CHË〉[チェ], ウェールズ語で〈ÈCH〉[エッヘ], ウズベク語で〈CHE〉[チェ], コーンウォール語で〈CHA〉[チャー], スペイン語で〈CHE〉[チェー], パソルブ語で〈CHA〉[ハー], チェコ語とスロバキア語で〈CHÁ〉[ハー], チャモロ語で〈CHE〉[ツェ], パーリ語で〈CHA〉[チャハ]。
DOTS-126 GHÊ》】ジーエイチ, ガイン[ɣ グ/ʁ ル/ɡʰ グ] - 別名はアラビア語由来の〈GHEIN〉。字母名はウイグル語で〈GHË〉[], パーリ語で〈GHA〉[ガハ]。
DOTS-146 SHÎ》】エスエイチ[ʃ シュ/ɕ シ] - 字母名はアルバニア語で〈SHË〉[シャ], ウイグル語で〈SHË〉[シェ], ウズベク語で〈SHE〉[シェ], オロモ語で〈SHA〉[シャ], ソマリ語で〈SHIIN〉[シーン]。
DOTS-1456 THÔ》】ティーエイチ[θ ス/tʰ ト] - 字母名はアルバニア語で〈THË〉[], ウェールズ語で〈ÈTH〉[エッス], チェチェン語で〈THA〉[ター], パーリ語で〈THA〉[タハ]。
DOTS-156 2ND HÛ》】セカンドエイチ[ħ ハ/ʍ ホワ/ʃ シュ/ʂ シュ/ɟɲ ジュニャ]
DOTS-1246 2ND DË》】セカンドディー[ɖ ド/ᵭ ド]
DOTS-12456 2ND RÏ》】セカンドアール[ɽ ル/ṟ ル/ɝ ア/ɜ ア/ɚ ア/ə ア/ɛ エ]
DOTS-1256 2ND UÜ》】セカンドユー[ʏ ユ/y ユ/ʊ ウ/uː ウー]
DOTS-246 2ND OŒ・Ö》】セカンドオー[œ ウ/ø エ/ɵ ウ/ɔ オ/aʊ アウ]
DOTS-2456 WW》】ダブリュー[w ゥ/v ヴ/ʋ ヴ/ʈʰ ト]

DOTS-23 2ND B2》】セカンドビー[ɓ ブ/ɡb グブ]
DOTS-26 2ND E5》】セカンドイー[ɛ エ/æ ア]
DOTS-235 PH6》】ピーエイチ, セカンドエフ[pʰ プ/ɸ フ/f フ] - 別名は〈2ND F〉。字母名はウェールズ語で〈FFI〉[フィー]または〈YFF〉[アッフ], チェチェン語で〈PHA〉[パー], パーリ語で〈PHA〉[パハ]。
DOTS-35 2ND I9》】セカンドアイ[ɪ イ/iː イー/ɲ ニュ]
DOTS-356 ZH0》】ゼットエイチ[ʒ ジュ/ɟʰ ヂュ] - 字母名はアルバニア語で〈ZHË〉[ジャ], ウイグル語で〈ZHË〉[ジェ]。

DOTS-3 APOSTROPHE'》】アポストロフィー, ハムザ[ʔ ッ/ʼ 放出音] - 別名はアラビア語由来の〈HAMZEH〉。字母名はソマリ語で〈ALEF〉[アリフ]。
DOTS-34 LONG IÌ》】ロングアイ[aɪ アイ/ɛː エー]
DOTS-345 2ND AÆ・Ä》】セカンドエー[æ ア/ɛ エ/ɑː アー]
DOTS-345 NGÒ》】エヌジー[ŋ ング] - 字母名はウイグル語で〈NGË〉[ンゲ], ウェールズ語で〈ÈNG〉[エング], タガログ語とマオリ語で〈NGA〉[ンガ], チャモロ語で〈NGE〉[ンゲ], ツバル語とトンガ語で〈NGĀ〉[ンガー]。

DOTS-456 2ND L》】セカンドエル[ɭ ル]
DOTS-46 2ND K》】セカンドケー[kʼ ク/kʰ ク]

🔻字母名が不明の字母の推測名称です。

DOTS-25 COLON3》】コロン[ɲ ニュ/ː ー]
DOTS-3456 2ND N《〓》】セカンドエヌ[ɳ ヌ] - 数符と同型。
DOTS-45 BH《〓》】ビーエイチ[β ヴ]
DOTS-56 ANUSWARA《〓》】アヌスヴァーラ[˜ ン/ɱ ンヴ] - デーヴァナーガリー文字の鼻母音記号《अं》の名称。

かな点字子音の字母名

かな点字はインド系文字やエチオピア文字などといったアブギダ形式による音節文字で、DOTS-356の範囲内にある子音字とDOTS-124の範囲内にある母音字を合成し、字母を形成するシステムとなっっています。

かな点字の字母名は、各子音字のア段に日本語数詞をもじった語呂合わせによる名付けとなっています。
北海点字図書館ほくてん式による字母名を取り上げます。

DOTS-6 KAROKUかろく[k ㇰ]
DOTS-356 SAGOROKUさごろく[s ㇲ/ɕ シ]
DOTS-35 TASANGOたさんご[t ㇳ/ʨ チ/ʦ ッ] - かな点字》と同型。
DOTS-3 NASANなさん[n ㇴ/ɲ ニ] - かな点字》と同型。
DOTS-36 HASAMUはさむ[h ㇹ/ç ㇶ/ɸ ㇷ] - つなぎ符と同型。
DOTS-356 MASAGOROHまさごろう[m ㇺ/ɴ ン] - 単独ではとして使用されるのは、明治時代の辞書で《》が“”の項目に配置されたことにちなむと推測される。エとの組み合わせでかな点字の基盤となる》となり、漢字の“”との関連性が高いものとなっている。
DOTS-5 RAGOらご[ɺ ㇽ/ɾ ㇽ]

ア行・ヤ行・ワ行の字母名は、】[a], 】[i], 】[ɯ], 】[e], 】[o], 】[ja], 】[jɯ], 】[jo], 】[wa], 】[wo ウォ]とそれぞれの音節で示されるようです。