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夏美のホタル(936字)

小説を読み始めて10分ほどで既視感に気がつきました。
既視感というかデジャヴというか。
映画化されていることを知らなくて、原作を読んでいました。
しかもその映画も見ていました。
なんとおまぬけ!
以前は読書家というか、濫読屋と言いますか、戦国ものばかり読んでいまして、中程度の本屋さんの在庫では太刀打ちできないほど読み漁ってましたが、それでも原作と映画、両方を鑑賞するということはありませんでした。
自然な形のダブりに興奮!(〃ω〃)
「夏美のホタル」というタイトルが、いかにぼくのツボなのかわかっていただけると思います。
ただのすけべ?
いやあ、否定はしませんが。
その昔「夏子の酒」っていうか名作ドラマがありましたねえ。
しかし「酒」よりは「ホタル」の方が風情を感じます。
胸を暖かくしてくれる予感がするんです。
タイトルだけで、2度も心を掴まれた。
素晴らしいタイトルです。

どちらも期待を裏切らない良質で優しい作品です。
比べてしまいますと、大きな点でキャラクターの設定です。
お父さんの遺品であるオートバイを操る夏美と、写真家を目指す慎吾。
映画版では、お父さんの遺品であるオートバイを操り、写真家を目指す夏美。
その彼氏である慎吾。
つまり夏美がひとりで話を進めていきます。
逆にいうと、ヒロイン有村架純がマイティレディと、なんの取り柄もない優しいだけの彼氏っていう構図なのです。
もし映画の脚本が原作であったら、少しつまらない小説だったろうな。
慎吾くんと夏美が併立してるからさわやかな印象を受けます。
そのさわやかさっていうのは、文章全体の風景からくるものなので、「どこがだよ」と問われても答えようはないのですが。
流れとしてきちんとつながっています。
だからぼくは原作に軍配をあげたい。
ただし、映画もかなり頑張ってると思うので、点数自体は同点です。
可能ならば、原作の最初の50ページだけでも読んでほしい。
その原作の中から、2人の関係と舞台のたけ屋の風景を作ってほしいと思うのです。
原作のたけ屋と映画のたけ屋は違いました。
途中で映画化されていることを知った時、その差分に少し戸惑いましたが、読み続けることで映画の風景は雲散霧消していきました。
映画は映画、原作は原作。
原作は現実ではないから、それで良いのです。


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