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夏という悪魔(626字)

「おい!起きろ!」
気持ちよく寝ていたのに起こされた!
だれだ!?

「おれだ、お前が暗黒大将軍と呼ぶ夏の神だ!」
何を言ってるのかわからない。
夏の神って何だ?

「お前がおれをたいそう嫌っていることを風の便りに聞いた。
アフロディーテは『そんなことでいちいち怒らないでよ、大人気ない』と言うが、神を恐れぬお前に忠告しにきてやったのだ」
何が夏の神だよ、女にあまあまなだけじゃねえかよ。
「言葉に気をつけろ!口に出さなくても、人間如きが考えていることなどわかるのだ」

何言ってんだ、こいつ。
戸締り忘れたかな。鍵確認して寝よ。

「お、おいっ!わしの話を聞けよ!」
「どうでもいいわ。そのアフロディーテさんと仲良くやっとけよ」

48時間勤務というブラック企業ならではの仕事を終えたのだから、寝させてくれよ。
何が夏の神だ、アホか......

「そう言う態度ならそれでいい。思い知らせてやるから覚悟しておけ」
ぴちゃぴちゃと言う音を立てて、その男は姿を消した。
鍵を確認して、エアコンを入れ寝た。

朝、暑くて目が覚めた。
何だ、エアコンが止まってるじゃんか!
うーーん、動かない!
このクソ暑い夏に壊れたんかよ!
窓を開けようとベッドから降りると、床が濡れている。
なぜ?
深夜のことを思い出した。
あれは、夢だろ?夢じゃなかったのか。
夏の神なんているわけねえ!
あれは現実だったのか?
あれは夏の悪魔、暗黒大将軍だったのか?!
夏の神のくせに汗だくなのか?

夢と現実が区別できなくなって混乱する56才のよしおだった。

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