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おたるたび日記(1)(1111字)

運河を歩く

2022年11月21日月曜日。
大失敗の翌日小樽入り。
小樽駅で待ち合わせの美女から、お願いしてあった文化財を受け取る。
「宿はどこですか、送りますよー」
優しいお言葉に甘えて、宿まで送っていただく。
車がきれいなので、窓が空いているのかと思った。

初日の宿は北運河のかもめやさん。
「ぽーがきこえる」という本を出版された方が女将で、その筆者に興味があり数年前に初めて泊まった。
「永遠の文学少女」と言って、笑われた。
彼女には名古屋の老舗菓子店の和三盆を用意した。
これは手抜きのお土産ではなく、この人のことを思って買ったみやげだ。
いや、違うな。
空港で見かけた瞬間、彼女がフラッシュバックしたからだ。
「中はね、両口屋是清のお菓子でね…」
「あ、一人静ですか」
「ありゃ、なんでわかりました?」
「名古屋の友人が『これをあなたに』って」
みんなおんなじような感じ方するんだなー。

ひと心地ついて、近所のスーパーへ出る。
これは自転車の師匠が、「文化を知りたいと思ったらまず地元のスーパーに行け」と言ったことによる。特定の地域だけで食べられているものも少なくないから、と彼は言うのだ。そうだ、その通り。
ラルズマート手宮店まで歩いた。
惣菜の内容は本州とそんなに変わらないが安い。
魚系は1〜2割安いと思う。
刺身、カルパッチョ、寿司、それに飯寿司。
以前ハタハタの飯寿司は食べたことがあるが、ニシンは初。
しかも半額!
なれずしなので食べられない人も多いが、自分は割と平気である。
焼き弁の種類がたくさんあった。
スープカレー関係の商品があった。
チューブ入り山わさびがあった。
しかし小樽ビールがなかった。
仕方ないので、クラシックを買った。
飲み切らなければならないので、少し少なめにしておく。
保険がサッポロクラシックとはぜいたくなことよ。

食事後、散策に出る。
雨は天気予報の言うことを聞かないが、空にはオリオン座が見えている。
天気予報が正しいのか、天気がわがままなのかはわからない。
おたる・よいちゆき物語の一環で、ライトアップされている運河を見に行ってみる。
北運河の北海製罐第三倉庫もライトアップされている。
色目は電球色だが、建物よりも運河に映った電球が美しい。
中央橋付近から東は青いLEDが見えている。
22時だと言うのに、カップルが写真を撮っていたり、若者グループがふらふらと歩いているが、それほど多くはない。
帰りは色内大通りをいく。
旧越中屋ホテルと旧三井銀行小樽支店の対比が大好きなのだ。
以前現地の文芸誌、「月刊おたる」にエッセイを載せてもらったこともある。
人をもてなそうとするホテルと、金を扱う力が向い建つ。

雨が止まないので宿に帰る。
オリオン座は雨より強いぞ。

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