水平線の広がる画面

灰色のクマ胸元に寄せてみるどこでもドアはおはなしの中
ベローチェに音楽のない日曜日クラウド上の別れのことば
さようなら古いノートよさようなら少し傾いたようなやさしさ
壁を向き枕に頭のせたとき枯葉を踏んだような音する
何してもうまくいかない夜がきて何度も読んだ本を手に取る
夜よりも深い手紙を書きたくてインクの黒がかすれていく音
今夜また「夜が明けたら」流れくる泣いているかも知れぬ兄さん
冷蔵庫に調味料しかなくていいあすの自分は分からないから
ポスティングすぐやめた夏おもいだす郵便受けの音する夜更け
米を研ぐことさえおっくうだった日よ西日さしこむ何もない部屋
それぞれがシェルターの中にいるようだ最終便でフォーレを止める
雨戸閉め友情さえもうたがった すきまから陽が射し込んでいる
ひきこもり続けた日々が終わりゆく水平線の広がる画面

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