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パキスタンへ流れていった髪の毛

1991年、ソビエト崩壊の歳の年にラダックのレーで得度を受けました。おさげ髪でした。あまりよく切れないはさみでガシガシ切られ、スポーツ刈りくらいになったら、これもまた良く切れないカミソリでジコジコ剃られました。お坊さん5人くらいかかってきていきなり逆剃り。血も出ますわ。髪の毛は布にくるんで大切にしておきました。でも、ずっと持っているものでもないんだろうと思って尼さんに尋ねました。「わたしは川へ流しましたよ」なるほど、趣があるなと思いました。
ある日お坊さんがピクニックへ連れて行ってくれた。帰りに川にさしかかった。いつでも流せるように持って来ていた髪の毛を流す機会がきたのだ。お坊さんに待っていてくださいと頼んだら、「早くしてください」と言われたのでとにかく早く済まそうと、セレモニーらしきものも何もせずに、髪の入った布を、川に投げ込んだ。何の趣もなかった。「あれはインダス川ですよ。髪はパキスタンに流れていくでしょう」お坊さんはそう言って笑った。


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