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種まきのパラメータ

人間が種をまくとき、深さ、隣接する植物及び種の個数と種類、地温、気温、種の向き、等々のパラメータが存在する。農地の性質はその場所固有のものであり、人間は設備や時期の選択や作業によって数々のパラメータを調整し、種をまくのである。

種をまけば芽が出る、そう思わせるのは何であろうか。おそらくそれは、野草や樹木が誰も種をまかないのに野山に芽吹くことを人が知っているからではなかろうか。
野草及び樹木の戦略は端的に言えば2つである。『たくさん種をまけばなんとかなるやろ』および『種がうまく芽吹かなくても自分が長生きすればええやろ』の2つだ。前者の典型はたんぽぽや多くのイネ科の野草、後者は樹木がその典型である。
気づいたかもしれないが、両者の戦略は、実は種はそう簡単には芽吹かない、ということを前提としている。そう、ただ種をまいてもそう簡単には芽吹かない。

種が芽吹くにはまずなんと言っても水が重要である。多くの種は水分を周囲から吸収することで芽吹き始める。人間は埋める深さ、種まき後の水やり(灌水という)などでこれを調整する。

光量

種に当たる光量も重要である。種にはそれぞれ光を好むものから光を忌むものまでが存在しており、人間は埋める深さによってこのパラメータも変化させる。

種の個数

隣接する種の個数が芽吹きを左右することもある。アブラナ科の種の多くはある程度暗い環境、つまりある程度の深さを必要とするのだが、種一つだけではその深さから土を持ち上げて芽吹くことができない場合がある。そういうときは、複数の種で協力して土を持ち上げられるように何個も同じところに埋めるのである。また、ある種の植物は根や果肉から植物の種の発芽を阻害する物質を出す(他感作用orアレロパシーという)ものがある。芽吹きのためには、これらの植物を環境から取り除くことも必要となる。

温度

発芽には適切な温度も必要である。また、発芽後の生育にも同じように適切な温度が必要となるので、必要に応じてビニールハウスやビニールトンネルなどを利用して地温気温を調節することもある。暖かくなる春を待ったり涼しくなる秋を待ったりしてまくことも、パラメータ調節の代表的な手段である。

向き

種の中には、根の元となるもの、芽の元となるもの、葉の元となるもの、栄養源になるもの、などが詰まっている。発芽の際、はじめに根が出てその後芽が出ることが多いが、種が埋まっている向きによって根が地下に伸びやすかったり伸びにくかったりすることがある。そういう種については、種まきの際にあらかじめ根を生やし易いように向きを整えることなどもある。

種まきはこれら多くのパラメータの調整作業である。作業を人手でやるにせよ機械で自動化するにせよ、基本的にはやることは同じである。
まとめ方がわからなくなったが、まあこのあたりで終わろう。あとは実際に種をまくだけだ。それでは。

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