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東邦レオ社長・吉川稔さんの雑談力と多彩な活動がすごすぎる ~雑談王+α~(後編)

リモートワークに必要な「雑談」や「ファシリテーション」のノウハウについて、各界のキーパーソンに聞くシリーズ。第四回のゲストにお越しいただいたのは、さまざまな活動を通じたコミュニティ醸成を行う東邦レオ社長の吉川稔さん。吉川さんが社長を務める東邦レオおよび関連会社のNI-WAは、都市緑化や建築・施工をメイン事業としつつも、東京九段にある築93年の歴史的建築物をリノベーションした「kudan house」や、大阪中津の築54年のオフィスビル「西田ビル」地下駐車場での「ハイパー縁側」というコミュニティ広場を企画運営するなど、コミュニティ開発に関わる数々のイベントやプロジェクトを立ち上げています。そんな吉川さんの多彩な活動について、文字通り“雑談形式”で語っていただきました。(取材・文/QUMZINE編集部、岩田庄平)

都市のセレクトショップ化

宮内:コロナ禍でオンラインアートイベント「つくらない都市計画」を始められて。作らないというのが都市計画の常識とはまず違うし、アート展示というよりかは、そこに集まるコミュニティや人であったり、そもそも、コンテンツ自体が他にないものだと感じたんですけれど、吉川さんはどのような形で街を作ろうと考えていますか?

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吉川:「つくらない都市計画」は、kudan houseのオンラインアートサロンのデモでやったんですけど、僕の中では、一つの隣接した都市という発想がもうないんです。「それぞれが分散しているんだけど、バーチャルで繋がる」という形が面白いと見ている。今の都市開発って一つのエリアを拡大しているじゃないですか。けど、僕はいろんな場所のそこにしかない面白い空間をセレクトして、クラウド上で「都市のセレクトショップ化」をしたい。1つの空間にブランドショップやオフィスなどを混在させていくのではなく、それぞれの場所の本当にいいところだけをセレクトして、掛け合わせてみたいんです。

角:なるほど。それキュレーション力いりますよね。

吉川:都市のセレクトショップ化って従来の不動産業ではなくて、まさにキュレーションセンスが必要なんですよね。テナントリーシングではなく、いろんな場所をキュレーションして、バーチャルでつないだ都市を多彩に作る。そうすることで都市をもう一回、再編集し直す。

角:吉川さんがやられている事って、クラフトビールづくりも、都市のセレクトショップ化もキュレーションすることが活かされているじゃないですか。何を集めて、何を合わせるか。オンラインの時代になって、さらに組み合わせの幅が広がり、複数の要素の組み合わせになっていく。そして、その中でちょっと外しがあったりして、またそこが魅力になる感じですよね。

雑談からアイデアのヒントが生まれる

角:これ自体雑談なんですけど、「雑談力」がテーマの企画なんで雑談に関する質問をさせてください(笑)。他の人の雑談からアイデアが生まれるみたいなことがあったりするんですか?

吉川:日常的に仕事も遊びでも、もっと言えば僕は、電車の中でも人の話をよく聞いているんですよ。特に、バーなんかでお酒を飲んでいる時に居合わせた人との会話、そんな語り合いが自然に生まれる空間が好きで、そういった所からの情報収集は多いですね。街づくりの観点ではお店の人との雑談がヒントになることが多いです。あと、気分転換にスナックを自分でやることもあります(笑)。

宮内:僕もバーチャルで参加しましたが、吉川さんはスナック似合いますよね(笑)。

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角:吉川さんのことを知らない人でも、話しかけられたら思わず素直に答えちゃうみたいなところがありますよね。誰でも入ってきやすいパーソナリティーというか、ある意味、経営者っぽくなくて、フラットというか。

吉川:それでいうと、従来の経営者の仕事をしてないからだと思いますよ(笑)。

角:どういうことですか?

吉川:経営者として強いリーダーシップを発揮しようという概念で仕事をやっていないからだと思うんですよね。僕って、多くの人がこうあったらいいなと思うことを自分の好きなスタイルでやっているだけなんですよ。だから、子どもと仕事しているのと同じなので、僕の周りで働いている人は振り回されて、大変だと思います(笑)。

角:ちょっと同席いただいている広報の高山さんにも聞いてみようかな(笑) 。どうですか、社長は?

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高山:みんな、吉川のことは「ミーさん」って呼んでいるんです。吉川はある意味で「人たらし」ですね。

角:吉川さんは、行かれる先々でファンを増やし、その場所の面白い人とのリレーションがどんどん増えていくタイプの人だと思うんです。そのうちに、気がついたら仕事が広がっていることとかあるんじゃないかなって思うんですけど、いかがですか?

高山:吉川の思いとか、パワフルなところに賛同して、すぐプロジェクトができたりしますね。「つくらない都市計画」もオフラインでやろうと半年くらい前から計画していましたが、コロナ禍でどうしようかとなったときに、「じゃあ、オンラインでやろう」と2週間くらいで一気に決まったんです。そのスピード感がすごいです。

宮内:そのスピード感や社風ってもともとの東邦レオが持っていたものと、吉川さんが社長になられてからの違いはあったりするんですか?

高山:吉川が社長になってさらに加速しました。もともと事業を本気で取り組みたい社員に場を与えてくれる会社だったんですけど、そこに吉川のビジネスとして成り立つための視点が加わったという感じです。

常識を疑うことに価値がある

宮内:日本の上場企業は迅速な意思決定ができないことや、コロナによってデジタル化が迫られているなど、色々な課題があると思うんです。フィラメントはそういった所で新規事業を作り、人と人を繋いで組織変革のお手伝いをしていますが、そういう人たちに向けて、ヒントになるようなことがあればお聞きしたいです。

吉川:事業を考えるとき、「お金を頂戴するお客さんにとって良いことをしよう」という考え方があると思うんですけど。僕はむしろ顧客や企業の関係性を超えて、もっと広い視点から見るようにしています。例えば、地域周辺の直接的には収益に関与しない人の立場にたって、徹底的に考えるとか。厳しいし、難しいんだけど、視野は一気に広がりますね。

宮内:マルチステークホルダー経営ですね。

吉川:僕は教科書通りの「すべてのステークホルダーの利益最大化」を目指すことは難しいと思っていて、株主、従業員、顧客、取引先、地域社会と5つマルチステークホルダーがあるとすれば、一番優先しないのは「株主」にしようと優先順位を決めたんです。世の中の上場会社は、「株主」の優先順位は1位でないかもしれないけど、少なくとも最後ではないと思うんですよ。だから、「株主」の優先順位を最後に持ってきた瞬間に、独自性が生まれ、差別化ができる。

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次に議論になったのは、「顧客」と「従業員」どちらが大切かってことなんですけど。収益で考えた場合は、「顧客」だけど、オーナーが「一番は従業員」という考えだったのでそれに決まりました。残る「顧客」と「取引先」と「地域社会」はその時々で優先順位は変わるとした。つまり、何よりも優先すべきは「従業員」で、一番劣後するのは「株主」にしようと決めたんですよ。

「従業員」を最優先しますっていうのは、やりがいはあるけど、責任も重いですよね。でも、僕はそういう会社が成功する事例を作りたいんですよ。
働く人は楽しいし、夢がある。株主としても、「従業員が責任を持って働くことで結果が出て、儲かるならばすべてのステークホルダーの中で優先順位は劣後してもいいよ」という、パトロン型株主のいる会社を。

宮内:逆張りですよね。常識を疑うことに価値がすごくあるんだなと感じます。

角:逆張りだからこそ、競争以外の戦い方ができるし、新しいビジネスを作りやすいかもしれませんね。ブルーオーシャンに行ける可能性もある。

吉川:だけど、財務基盤がないと逆張りできないし、結果が伴わなかったらダメなんで、繰り返しになりますが、いろんな面白いことをやりながら、会社の経営計画の数字は毎年伸ばしていくことは徹底してやっていますよね。

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角:事業を伸ばしていくことと、社会価値のあることをすることの両輪が大事ということですね。

吉川:片方だけだとうまくいかない。逆に収益最大化だけを目指したところで、今の時代、顧客の感動は生まれにくいんじゃないですかね。あなたの会社でないといけない理由がない、みたいな。

角:東邦レオの場合、もともと顧客に感動を与えうる技術力があったわけですけど、さらに利他的な地域貢献や社会課題を長いスパンで解決することなど違った価値もプラスされているわけですよね。

吉川:今は技術よりも、「考え方」を売ろうとしています。文化、考え方に共感してもらえる顧客、地域社会を作ることで、それに伴う技術開発やイノベーションも当然起きてくる。そういう回転を回すことで、結果として必要とされるような会社になる、という捉え方していますね。すごく遠回りなことをあえてやっています。今は社員の多くが理解していますけど、僕が社長になった当初は誰も理解できなかった。とんでもないバカな人がきちゃった、と思ったかも(笑)。

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宮内:昨年、アメリカのビジネス・ラウンドテーブルが「株主第一主義」を見直し、従業員や地域社会などの利益を尊重した事業運営に取り組むと宣言したことが話題にもなりました。東邦レオに、ようやく時代が追い付いてきた感じですね。

吉川:アート型経営を取り入れ、新しい時代への適合を先にできたのも、最初の話に戻ると、0→1で発想していたのではなくて、雑談などから色々な情報を集約していたからだと思うんですよね。そこから、次の時代の会社像や経営者像のイメージが出来ていたので、早く手を打つことができた。また、東邦レオにとって「従業員」が最優先で、「株主」は社長に寄り添って委ねるという基盤ができているから、ものすごいスピードでできているんだと思います。

角:面白い! あと一時間くらい話したいです。本当に豊富な学びでした。

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【プロフィール】

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吉川 稔(よしかわ・みのる)
株式会社 NI-WA/東邦レオ株式会社 代表取締役社長

1965年10月 大阪生まれ。89年 神戸大学農学部卒業、住友信託銀行に入社。2001年 株式会社リステアホールディングス 取締役副社長。 バレンシアガジャパン取締役。 株式会社リステアインベストメント(ゴールドマンサックスとJV) 代表取締役。10年 クール・ジャパン官民有識者会議委員。14年カフェ・カンパニー株式会社 取締役副社長。16年7月 株式会社NI-WA創立 代表取締役社長に就任、現職。 16年11月 東邦レオ株式会社 代表取締役社長に就任、現職。

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