間伐材を原料とする"木糸"開発ストーリー~株式会社和紙の布 阿部正登様~

私たちはキノデニムの企画を進める当初から、"木糸"の開発者である阿部さんに全面協力をいただきながら、試作品の開発を進めてまいりました。

今回は株式会社和紙の布の代表取締役の阿部正登さんのインタビューを通して、木糸の魅力だけでなく開発背景をご紹介します。

これまでどのような経緯を経て"木糸"の開発に至ったのでしょうか?

もともと弊社は綿の生地を扱う会社でした。
大阪の泉州という地域は弊社も含めて薄利多売で繊維業を営んできた地域なので、海外からの輸入品が大量に入ってきたタイミングで大きな脅威に晒されました。
この周辺には同業が720社あったのですが今や20社を切っている状態です。

そんな海外から攻め込まれている状況で、逆に海外に売り込めるものを作りたいと考え、何を作っていこうかと思案していたタイミングで、友人の繋がりで紙の糸を作る技術を持っている製紙会社と出会いました。
紙の糸を作る工程を知っていくうちに、これで勝負をしてみようと思ったのがきっかけでした。


「紙の糸」に勝機を見出したということですね。

純粋にユニークで面白いと思ったことに加え、これまで扱っていた綿の約20倍ほどのコストがかかるので、ここまでコストがかかるものはきっと誰もやらないだろうと思ったんですよね。
これまでのように価格競争に巻き込まれることを避け、少量でも価値のあるものを作っていくことで競争に巻き込まれずに生き残っていけるんじゃないかと考え、この道で進めて「和紙の布」の開発・商品化に至りました。

その後、紙の糸を作る製紙会社との繋がりのなかで行政の会議に呼ばれ、「間伐材の活用」というテーマでの議論の中で「間伐材から服を作ったら面白いんじゃないか」というアイデアを出したところ、最初は否定的だったものの徐々に興味を持っていただき、何度か議論を重ねるなかで行政の協力を得て、間伐材から生地を作るプロジェクトがスタートしていきました。12年ほど前ですね。
製品化に成功した後は、展示会などで少しずつ売れているもののなかなか広がらなかったのですが、数年前からSDGsの流れが生まれてから急に広がるようになってきたというのが現状です。

当初の狙いだった海外輸出も実現されていらっしゃるのですね。

はい、最近はヨーロッパへの輸出が多いですね。
まず原材料が間伐材という森林をより良くする過程のなかで発生するものである点と、糸や布にする過程も自然にかける負荷が少ない点がSDGsの観点から高い評価を受けているみたいです。


最近ですと大阪・関西万博のユニフォームに採用されたことでも話題になっていますが、どのような経緯で採用に至ったのでしょうか?

もともと2025年の大阪・関西万博の前段階として大阪湾を綺麗にするプロジェクトというものがあり、そこに参加させてもらっていました。
そのなかでユニフォームをこれから募集するという話を聞きつけエントリーに至ったのですが、スタッフユニフォームの中でも清掃員とかいろんなユニフォームがあるなかで一番必要枚数が少なかった医療用ユニフォームを狙ってエントリーし採択に至りました。
それでもすべて合わせて1650着を作ることになり、今まさに進めているタイミングなので大変です(笑)


最後に、私たちが企画を進めるキノデニムにどのような期待を持っていただいていますか?

これまで木糸と綿を混ぜた服はあったのですが、木糸100%が初めての試みなので非常に楽しみにしています。
毛羽が少ないので、肌の刺激に弱い方にも向いていると思うんですよね。
実物が出来上がり、皆さんの手に渡る日がくることを楽しみにしています。

ありがとうございました!


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