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棚卸資産について

〇棚卸資産は費用性資産の一つである。 棚卸資産には、「商品・製品」「半製品・仕掛品」「原材料・工場用消耗品」「事務用消耗品・荷造り用品」等に分類される。

「商品・製品」とは、通常の営業過程において販売するために保有する財貨または用役のことをいう。 「半製品・仕掛品」とは、販売を目的とした現に製造中のものをいう。半製品は、作りかけの状態でも販売できるものをいい、仕掛品は本当に作りかけで、それ自体では販売できないものをいう。

棚卸資産の原価決定はどのように行うのか。 購入棚卸資産については、購入代価に副費(附随費用)の一部又は全部を加算した額をもって取得原価とする。 →購入代価とは、送状価格(初めに決めた仕入価格(=定価)から、値引・割戻額等を引いた額である。

生産品(自分で作ったもの)の原価決定においては、正常な実際製造原価をもって取得原価とする。

棚卸資産の計算方法は、払出単価に払出数量をかけることによって求める。 払出数量の計算方法については、継続記録法(高級棚卸法)と棚卸計算法(定期棚卸法)がある。

継続記録法は、仕入れた数量をその都度記録していく方法である。棚卸資産の受け入れおよび払い出しをその都度商品有高帳などの帳簿に記憶を行って、払出数量を直接的に把握する方法である。

継続記録法の長所としては、払出数量を把握でき、売上原価を正確に把握できる。
また、実地棚卸を行うことによって、棚卸減耗を 把握することができる。
短所としては、(棚卸計算法と比較して相対的に)事務の手数がかかる。実地棚卸を行わないと棚卸減耗を把握できないなどがある。

【棚卸計算法】

棚卸計算法は、期中に受け入れの記録は行うが、払出の記録は行わない。その代わりに期末に在庫を実地棚卸することによって、差額として期中の払出数量を求める方法である。

棚卸計算法の長所としては
①事務が簡便で手数がかからない。
②実地棚卸を行わないと実際の期末数量が把握できない。 などがある。

では、払出数量ではなく、払出金額の計算方法には、どのようなものがあるのか。 財務諸表論では、先入先出法、後入先出法が代表的である。

先入先出法においては、最も古く仕入れたものから払い出しが行われ、期末棚卸資産は最も新しく取得されたものからなるとみなして、期末棚卸資産の価格を算定する方法である。

しかし、実際に顧客が古く仕入れたものから手に取って購入してくれるとは限らない。 仮に新しいものが売れたとしても、帳簿上は「古いものから売れた」とみなすのが先入先出法である。 こうすることによって、物的流れに即した払出額の計算ができ、また、在庫の価格には、直近の払出価格が反映される。

 一方で、短所としては費用収益の同一価格水準的対応が図られないといったことがある。 「費用収益の同一水準的対応」とは、時間の経過によって、例えば物価が上がった場合、売り上げたときの収益は、その物を仕入れたときにもし売れていれば得られた収益よりも、時間的経過(物価上昇)により大きくなっているはずである。ところが、原価は帳簿上における「仕入れたときの価格」で売れたと判断するため、「収益は売れた時点で」「原価は仕入れた時点で」といった、価格の判断の仕方に時差が生じることになる。
 平成に100円で仕入れたボールペンが、当時では300円が相場だったとする。ところが、なかなかそのボールペンが売れず、令和に入ってから500円になったとしよう。その分、仕入れ原価も物価高騰により300円になっていた。 もし仮に、このボールペンが令和に売れたとする。この時、収益は令和の売価500円で計上し、費用は令和の原価300円ではなく、仕入れた平成での費用100円となる。これが先入先出法の考え方なのだが、同時代の水準(令和)では本来500円-300円=200円が利益であったところ、たまたま時代の物価高騰の流れによって、今500円-100円=400円の利益が出ている。
 この本来平成で仕入れて平成で売れていたら200円の利益が、令和に売れたことによって400円の利益になった差額を、保有利益という。この保有利益は時代の潮流によって成されたものであり、企業努力の賜物ではない。

 先入先出法ではこのようにその物の価格変動時に保有損益が計上されること(同時代水準で収益ー費用の計算ができない)が、短所の一つとなる。

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