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第一エッセイ集『憧憬の道、造形の街』

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完結済み、全15編。 大学の登下校中に考えたことや、妄想。旅先で我が身に降りかかった災厄や、まことしやかに囁かれる噂。創作をもって、現実社会に静かな怒りを表明する。フィクションあ…
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#創作大賞2023

ブルーは欺く

📘愛欺くブルー鬱陶しい快晴が広がっている空を見上げながら、毒づいた。どうせこんな綺麗な紺碧の空も、ありふれた漆黒の色に染め上げられるのだと。加減を知らない今年の猛暑は、底抜けに明るいだけのJ-POPがよく似合いそうだと思った。 今日はデートの予定だったにもかかわらず、昨夜から恋人と連絡がつかない。昨日は彼女と僕のバイトの時間帯が丁度ズレていて、彼女の終業時刻に入れ替わるように僕は始業することになった。多分この時点で、僕は彼女に欺かれていた。嫌な予感は既にあった。ただ、彼女を

「18歳」

はじめにとある時期、刑務作業のようなものをして金を稼いでいたことがあった。死を待つだけの受刑者のように、長時間にわたって単純作業をやっていた。目の前にある窓を大きなカラスが鳴きながら横切っていくと、それだけで僕はドキリとした。ただ、本当に頭を使わないでできる仕事で、日給を受け取れるのは有難かった。常に気を張りながら仕事をすることは、非常に疲れる。だから、この仕事は楽ではあったが、絶対にオンリーワンにもナンバーワンにもなれないと思った。確実に機械で代用できる仕事。だが、とある職

#ウシミツトカゲ__

大学で久々に顔を合わせた友人が、帰り道に妙なことを言い出した。 『俺さ、シモキタの駅で、見ちゃいけないもの見ちゃった気がするんだよね』 私は怯えを必死に隠しながら、「どうせ見間違いだろ? お前昔から変なこと言ってるから心配だよ」と言った。しかし友人は、食い気味に『お前は見てないからそんなことが言えんだ!』と叫んだ。 「いきなり大きな声出すなよ。そんで、何を見たんだ?」 私は一旦、彼を落ち着かせるために質問を投げかけた。 彼は鳥肌の立った両腕を擦りながら、声を落として喋り出した