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鳳仙花から爪紅、マニキュア、ネールアートへ ③現代に流れ込む江戸 化粧道

動けば汗が流れる猛暑の日々が続いています。
夏に思い浮かべる花といえば、まずヒマワリですね。太陽に向かって咲き誇る、夏の日差しに似た黄色の花びらが青空に映えます。
漢字で向日葵と書けば和の味わいもありますが、今日はより趣深く鳳仙花についてのお話です。

華やかというより、可憐で地味な野花という姿形の鳳仙花ですが、その名前は漢名で、インド、中国南部の植物で中国を経て渡来したようです。貝原益軒の『花譜』(1694年)に出ていることをみると、それ以前に渡来していたとされます。爪紅(つまくれない、つまべに)という純和名もあります。


爪紅の名の由来は、赤い花びらで子供たちが爪を染めて遊んだからとされ、
染まった爪の赤い色が初雪が降るまで残っていたら恋が実るという伝承もあります。『近世風俗史(2)』によると、江戸時代には大人の女性の装いとして鳳仙花で染める爪紅がでてきます。
文献によると、赤い鳳仙花の花弁を盃に入れ、ミョウバンを加えて花弁を潰しながら混ぜ、骨でできた針を使って爪に塗ったとのこと。染料ですから、乾いた爪紅は水で洗っても落ちず長く楽しめたのです。

特に遊女は年中足袋を履かず裸足で過ごしていたので、その白い素足の爪先を鳳仙花の臙脂色が彩っていたと思い描くとなんとも艶やかで哀愁を帯びた美を感じます。幼い頃の遊びを思いだし、足の爪に花の色を載せながらひと時の安らぎを感じていたのでしょうか。なかなか会えない想い人への恋心を、その色に託して爪を彩ったのかもしれません。
爪紅という鳳仙花の和名、由来と用途を知るにつけてイメージが幾重にも拡がり無限に物語が生まれてきそうです。

そんな爪紅は、現代ではマニキュア、今主流のジェルネイルなどのネイルアートへと受け継がれています。詳しいことは美容家に任せるとして…
夏は裸足でサンダルを履くのでペディキュアは欠かせないという女性が、身近にも多いです。私も足のペディキュア、手のマニキュアで爪先に煌めきを忍ばせてます。それも作品のモチーフとして爪紅を調べていて、これまで敬遠していたマニキュアに俄然興味と意欲が湧いて今では愉しみ、癒しの一つとなりました。


鳳仙花で指先を彩る江戸の女たち、そしてマニキュアやジェルネイルを爪に施す現代人(男性の爪のケア、ネイルアートも広まってます)
時空を超えて同じ愉しみ、癒しを求めていると思うと、痛快でわくわくしてきます。そうやってより深く江戸を知りたくなる私です。

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