現実を拡張することで未来の課題解決に繋げていく

川田十夢さんの「拡張現実的」という本を読みました。この本は川田さんがテレビブロスで連載していたコラムを中心にまとめられたものです。
拡張現実というと、スマホでかざして見たり、特殊なメガネをかけて見ることで、情報が付与されることを想像しがちですが、川田さんが言っている拡張現実的というのはありとあらゆる世界での思考・行動が拡張していくことだと思います。
単に、通信速度が速くなっているとかAIやVRの技術があがっているということだけでなく、現実の世界にいろんな情報が重なり、新しいことが起こり始めている感じがします。
そういう変化についていくためには、今までの枠組で考えていてはいけないと感じました。それは何か問題に取り組んでいるときだけでなく、普段から思考の枠組を外すようなことが必要なのかもしれません。
川田さんのコラムの中で、道徳で算数を考えるという例が出ていましたが、学科という枠組自体が古臭くなりつつあるかもしれません。
企業においても、マーケティングとか、生産管理という枠を超えて考えないといけないことが増えてきている感じがします。管理職も目標管理や部下育成、組織作りという従来型のマネジメントでは限界が生じています。
そうはいっても、いきなり枠を外せとか、制約条件にとらわれるなと言っても、どこからどう考えてよいかわからないので、まずは、ちょっとよその世界の考え方を借りてくるところから始めるのが良いのかもしれません。道徳で算数を考えるではないですが、生物学から経営を考えてみたりするようなことから始めてみると少しずつ気づきが広がってくる感じがします。
ただし、枠から外れれば良いわけではないですね。それだとただのハズレになってしまいます。未来の課題解決に繋がる枠組の外し方が大切な気がします。
この本のコラムの中に、野球はバットでボールをぶっ叩く気持ち良さがあるから良いということが書かれていました。単に新しい知識を組み合わせるだけだと、プロダクトアウトになってしまうので、気持ち良さや面白さなどの本質は外さないことが大事だと思いました。
一方で、新しい課題、難しいお題に取り組んでいくことも必要だと思います。小手先の改善だけでは進歩・成長がありません。
コラムの中にグルメレポーターでおなじみの彦摩呂さんのAI化が難しいことが書かれていました。昔の作家の作品を読み込ませて、◯◯さん風の作品を作っていく試みは今までにもいくつかありました。最近だと、手塚治虫のAI化を試みているマンガがその1つですね。
ところが、彦摩呂さんの表現はなかなか難しいとのことで意外に感じました。
例えば、海鮮丼を食べたときなどに出てくる「海の宝石箱や〜」は、海とは一見関係ない宝石箱を持ってくるのだけど、宝石箱という散らかり具合と豪華さが絶妙で、それに代わる言葉は見つかりそうで見つかりません。そういう点で言葉のチョイスが綿密かつ厳密ということで、なかなか真似しにくいとのことでした。
彦摩呂さんの事例は面白いですね。手に届きそうで届かないところを追求していくことで、自分の現実世界が拡張していく感じがします。ネットで安易な答えを調べて満足するのではなく、その少し先を追求していくことが大切だと感じました。
こういうstay homeのご時世だからこそ、現実をドンドン拡張していく良い機会ではないかと思いました。

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