Note 44: 会社の販促物を作ったらそこそこ大変だった

少し前の話だが、働いている会社として技術的なコンベンションをスポンサードすることになった。
それで、自社の製品と、コンベンションのテーマをくっつけて色々プレゼンを練ったりした。
そっちは得意分野で楽しかった。

いよいよ本番の前に、スポンサー起業様には販促物(ノベルティ)を用意される方が多いですがどうしますか、と言われた。
確かにああいうのに出ると、ボールペンとかメモ帳とか、最近はUSBメモリーとかスマホの充電器とかいっぱいもらう。
うれしい。
会社の名前や、URLや検索ワードを載せたら宣伝になるだろう。

でもぼくは、こういうのが苦手であって、どうしようかと思った。
会社の人に相談したけど、今はぼくが一番下っ端なので、どうしようもなく自分で手配しなければいけなくなった。
いろいろがんばって、やってみたら出来たから、自信になったし、いい経験になった。
だからと言ってちょくちょくやろうとは思わないけど。

今日はこれをやろうと思ったときに起きた、数々のトラブルについて書く。
これからやる方は参考にしてください。

商品、業者の選定

まずネットで「販促物 グッズ」などの検索ワードで調べると、キラ星のように数々の業者が当たった。
ここは便利な時代である。
予算、デザイン、志向などによってさまざまな製品が当たる。
適当に目星を付けて、社長にURLをメールで送る。
これも便利だ。
一発でどんなものか分かる。
あたりさわりのないところで「付箋紙」にしたけど、「オリジナルのベビースターラーメン」とかでも面白かったかもしれない。

これ、どこのサイトで作った、どこの会社に頼んだと書くと、実戦的な情報になるだろうけど、めっちゃ満足したというわけでもないし、日進月歩でいい業者が出てくるだろうから、あえて紹介はしないので、みなさん各自で探してください。

デザイン

会社のロゴをもらって、載せる情報(URLにした)を決め、大体のイメージを会社の人に了承してもらった。
ぼくはグラフィック・デザイナーではなく、どちらかというと普通の人よりも「美」について造詣がない方だ。
それで、めっちゃくちゃここで苦労した。
ここからクレーマーモードになりますよ。

グッズ会社にデータを送ろうとすると、「Adobe Illustratorのデータを送れ」と当然のように言われた。
その会社のページにはPDFのテンプレートがあったので、それを加工すればいいのかなーと思った。
それで、Adobe CCの体験版をサブスクリプションし、Illustratorを使ってPDFを加工して入稿した。
入稿はその会社のアップロード機能を使って行った。

すると、メールで「AIのデータがほしいのですが」と言われた。
「そちらのテンプレートがPDFだから、PDFを送ったんですけど」と返信すると、「送られたデータが壊れていて読めない」と言われた。
いや、だから、あんたの会社の機能で送ったんだっつーの!

さらに「illustratorで送れないのなら、色指定をしてください」という。
どうやればいいのかわからない、と聞くと、パントーンのサイトのURLを送ってきて、おたくの会社のロゴのこの部分とこの部分と、色を名前で教えてください、と言われる。

むちゃくちゃ苦労して指定すると「あっ、ご注文はフルカラーオプションでしたので色指定は必要ありません」だって。
なんのことか分かりますか???
なんだそりゃ。
まあ、必要なくてよかったな。

PDFをDropboxに入れてリンクを送ったら「Dropboxは会社のポリシーでつかえない。『きゃぴきゃぴファイル急便』(仮称)のアカウントを作ったからそっちで送れ」と言って、別便でパスワードを送ってきた。

なぜ編集とか出版とか、そういう会社って『なんとかファイル急便』みたいなサービスを使いたがるんだろうね。
めっちゃ技術系本を出してる会社でもそういう編集者がいる。
つい最近、最大手がセキュリティで大問題になったばっかりだと思うけど。
どっかの企業の変なGIF広告が付いたメールとか見せられるのはユウウツだ。

まあ、それを使ってアップロードすると今度は「文字がアウトライン化していなくて読めない」と言ってきた。
でも、このやりとりにめっちゃ時間がかかっている。
こっちはもうAIのサブスクリプション期間は過ぎているのだ。
「そちらでアウトライン化してくれませんか」というと「フォントは小塚ゴシックでいいですか」とか聞いてきた。
小塚ゴシックはアドビ製品を入れないとインストールされないのである。

この、デザイナーの人の、まったく一般企業の人の気持ちを斟酌しない仕事のやり方はどうなんだろ。
付箋紙を作りたい企業の人がみんなIllustrator持っててバンバン使いこなしてるもんなんですか。
一生懸命ググったら、ぬわんとWindows 10のPDF to Print機能でPDFを再度PDF化したら、無劣化でアウトライン化できるということが分かった。
「販促グッズを作る会社」よりWindowsの方がかしこいなんて!!

ということで注文が終わった。

あえて言おう。
これは「Adobeハラスメント」だ。
年に一度、するかしないかの「販促グッズのデサイン」のために、わざわざアドビ製品を導入する人もいないだろう。
ぼくは「美」にうとく、AIとPDFの違いも、アウトラインも、小柄ゴシックもわからない。
パントーンも分からない。
『なんとかファイル急便』も知らない。
分からない話で半日も振り回されっぱなしだ。

他にも世間では
「Wordハラスメント」
「Excelハラスメント」
「PowerPointハラスメント」
「紙の書類ハラスメント」
などが横行している。
もっとも、俺もどこかで「Eメールハラスメント」「ITハラスメント」とか言われてるかもしれない。
仕事の流派が違うといろいろ大変だ。
思いやりを持って生きたいものだ。

納品トラブル1

納品でもトラブルになった。
ここは完全にぼくのミスだ。
スミマセンでした。

コンベンションを運営してるのはボランティアの素人の人だから、前に送っても迷惑だろうと思って、当日の朝に送ることにして手配していた。
すると前日に「販促物が届きませんが大丈夫ですか」と言われた。
普通は前日に送って、入場者の人に配るトートバッグに詰めてもらうそうだ。
そりゃそうか!
っていうかこんなの普通は前々から確認するよね。
仕事の基本が出来ていない。
俺は駄目なやつだなあ。

主催者の方に連絡して(本当にご迷惑かけました)受付に終日置いてもらって、そこで配ってもらうようにした。

納品トラブル2

それはいいんだけど、もっと深刻なトラブルがあった。
これも完全にぼくが悪いんだけど、コンベンション会場に送る手筈をつけたはずが(きちんと住所を聞いて、グッズを送るならどこどこ室にしてくださいと言われていたから指定した気になっていたのだが)会社に届くようにしていたのだ。
ぼくの出番はお昼だ。
ムリ!

会社の人に大変な苦労を掛けて、重いダンボールを持ってきてもらっても、昼頃到着しても、もうもらってもらえないだろう。
朝イチには会場に到着して欲しい。
入場する人に受付で手に取って欲しいからだ。

状況が判明したのは前日だったから、ダメモトでグッズの会社に連絡してみた。
ちなみに日本の中腹の地方のとある県発送だった。
ヒエー!
当然のようにもう佐川急便で送ったということだった。
佐川急便に連絡した。

- これから同じ東京都内で会社からコンベンション会場に変えられないか
  =>ダメ
- 最寄りの駅に送れないか
  =>ダメ
- 最寄りの佐川急便のセンターで留め置き出来るか
  =>いいけど、いつ届くか分からない
- 時間指定したはずだが
  =>時間指定はされていない

まとめるとこういうことだが、そうとう電話は紛糾した。
結局、佐川急便のセンターに留め置きしてもらう、そこに届いているかどうか電話してもかまわない、というところまで譲歩してくれた。

翌朝5時に起きて、佐川急便のセンターに電話すると、果たして着いていると言う。
場所は、羽田空港だ!
京急空港線に載って、天空橋駅で降り、産業施設と原野しかない地平をトボトボ歩く。
駅から遠いよ!
結局7時ぐらいについて、荷物を受け取った。

情報がすでに行っていたので、荷物は届いていたが、20kgぐらいある。
さすがにこれを持っていくのはムリがある。
通勤ラッシュの電車に乗るのも迷惑だ。

Googleマップでタクシーの経路と料金を調べ、社長にメールで「タクシーを使ってもいいですか、値段はいくらいくらです」と言うと、うちの社長はすごい人で数秒後に「オッケーだ、気をつけて」と言ってくれた。
人の情けが身にしみるとはこのことだ。

iPhoneを振ると、位置情報を目指して空車のタクシーがやってくるという「タクフル」というアプリがあったので、ダウンロードしてiPhoneを振っていたら、良くしたもので30秒ぐらいでタクシーが来た。
運転手さんに聞いてみると、そんなアプリしらない、ぐうぜん通りかかっただけだ、と言う。
なんじゃこりゃ!
でもまあ、ぼくみたいな急用の人が多い地域なんだろうな。

東京の道はぜんぜん分からないが、運良く9時前に会場に滑り込んだ。

配った

いざ配ってみると、そこそこみんなもらってくれた。
帰る人に配ったりしてみたけど、けっこう欲しがる人がいて良かった。
まあ、たまにこういうことをやると、いい思い出だ。
とはいえ、もうしばらくやりたくはない。

(この項終わり)


会社員兼業ライターの深沢千尋です。いろいろ綴っていきますのでよろしくです。FaceBook、Twitterもやってますのでからんでください。 https://www.amazon.co.jp/l/B005CI82FA