見出し画像

スバルと共時性

5年ほど前、まだアメリカの中都市に住んでいた頃、
中古の黒いスバルのフォレスターを売った。
(写真は借りてきたもの)

アメリカでは中古車の売買は盛んで、
個人同士でも気軽にインターネット上の地域の掲示板などで売りたい人が広告を出し、
興味がある人が連絡をして交渉することも多い。
 
この時も夫が掲示板に出したら、スバルの車はこの辺りではとても人気ということもあり、
すぐにある女性が連絡をくれた。
 
車を見にやってきたその女性は若くて明るい感じの人で、
一目で車を気に入りその場で支払いをして車を引き取ることになった。
 
この車には色々思い出が詰まっているので、
私が思わず「寂しくなるわ」と言ったら、
「私がよくケアをするから心配しないで。時々、この道を通ってもいいわよ。」
と言ってくれて優しい人だなと思った。
 
そのことを数日前にふと思い出して、いい人だったと温かい気持ちになっていた。
その夜、その日たまたまその中都市に用事があった夫が帰ってきて、
開口一番、次のようなことを言った。
 
「びっくりしたよ。高速を走っていたら目の前に僕たちのスバルが走っていたよ。
車のナンバーを確認したから確実だよ。
多分、あの時買った女性が運転していたと思うよ。」
 
私はさらにびっくりした。
夫がその車を目撃する確率自体、大変低いが、
私がその車のことを思い出した翌日に目撃する確率とはどれほどのものだろう。
 
これを心理学者のユングは共時性と呼び、そういう偶然には意味があると言った。
特にそれが心に深い印象を残した時は。
 
それで私もその意味を考えてみた。
 
答えはすぐ出てきた。
それは前の投稿、「もう一つの人生」とつながるのだけれども、
古い乗り物であるセラピストという役割を次の世代に手渡していって、
私は新しい道を歩いて良いということだ。
 
今、少なくともアメリカでは優秀な後輩セラピストたちが育っている。
特に私の専門とするトラウマは、ここ最近のトラウマに関するアウェアネスの高まりや、
トレーニングの機会の急増で、
それほど経験がなくても効果的に対応できるセラピストが増えてきたと思う。
だから安心して後輩たちに任せられるのだ。
 
私はセラピーの仕事はとてもやりがいを感じているが、
もう少しクリエイティブなことをしてみたいという思いが最近、強くなっている。
スバルを手放したようにセラピストという仕事を完全に手放すことは、
少なくとも今はしないけれど、
少しずつ次世代に託していくのも悪くないかもしれない。

あー、それより先に新しい車を探すことだ!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?