耳をすませば

耳をすませば」といえば、日本を代表するアニメ制作会社、スタジオジブリの甘酸っぱい青春を描いたアニメーション映画である。
たまの金曜日に地上波で放送されているので、幅広い世代の人に馴染みがある作品ではなかろうか?
ジブリ好きな筆者などは、「雫〜!!聖司くん〜!!」となりながら金曜日の23時を迎えるのが結構好きである。

画像出典:https://www.ghibli.jp/works/mimi/#&gid=1&pid=24


いや、この記事は別にジブリの映画について語りたいのでも、映画論を展開したいでもないのです…。すみません。


【耳を澄ます】という慣用句があります。
もっとよく聞こえるように、心を落ち着けて、じっと聞こうとすること。
だ、そうです。

【澄ます】という単語には
・気持ちを落ち着かせて雑念のない状態にする。真面目な様子をする。
の他に、
・液体を濁りのない状態にする。
洗い清める
という意味があるようです。



前振りが長くなってしまいました(笑)
今回は、動物病院版「耳をすませば 〜お耳を綺麗にしたら〜 」をお送りします。

今回の主役はトイプードルさん、日本の人気犬種1位の座を14年連続で防衛している犬界の井○尚弥です(違う)。

トイプードルさんの原種のスタンダードプードルは猟犬です。
鴨猟の際に、撃ち落とした鳥を回収する任務をしてました。
水に濡れても毛がびしょびしょにならないよう、皮脂を多く分泌する、という特性があります。
トイプードルもその性質を受け継いでいるため、皮脂が多く、皮膚病や耳の病気にかかりやすい子がいます。

ワンちゃんの耳道は人間より長く、途中で曲がっています。
そのため、耳の病気が分かりにくく、かつ掃除がしにくいです。

今回の子も
気づいたらお耳が真っ黒!!!
とのことでご来院され、奥までしっかり綺麗にする(澄ます)ために全身麻酔下で耳用の内視鏡(ビデオオトスコープ)を使って洗浄しました。

以下、画像を使って紹介します。

初診時の耳の中の写真。
黒いのは耳垢、よく見ると毛に絡まっている。

実はこの時、お耳が痛いせいか触られるのをかなり嫌がってました。

反対側の耳。
汚れはなく、奥に綺麗な鼓膜が見える。

汚れた耳を澄ますべく、別日にビデオオトスコープ処置を行いました。

上左:垂直耳道の耳垢をチューブで掃除している
上中:耳垢と毛を鉗子で除去している
上右:上中の奥に見えた汚れた鼓膜
下左&中:鼓膜手前の汚れをチューブで落とす
下右:処置終了後の鼓膜、とても綺麗で透き通っている

この子は幸い耳の汚れだけで鼓膜の損傷や中耳炎、耳のしこりなどはありませんでした。

この処置後、点耳薬などを使って維持治療を行いました。

2週間後の耳の様子。少し腫れているが綺麗にキープできている。

耳をすました結果
…そこまで嫌がらずにお耳を触らせてくれるようになりました!
痛みや不快感が減ったのだと思います。

他の症例でも、耳の汚れや炎症をとった後に活動性や食欲などが改善する子がいます。

「耳をすまして(心を落ち着けてじっと聞こうとする、の意味)」動物に寄り添うと、「耳を澄ます(耳を綺麗にしてあげる、の意味)」重要性に気付かされますね。

以上、動物病院版「耳をすませば」でした。


ビデオオトスコープはこんなことに役立ちます。
・外耳(鼓膜手前まで)の評価、洗浄
・中耳(鼓膜の内側)の評価、洗浄
・外耳〜中耳のしこりの検査、切除、生検

ペットさんのお耳の治療で悩んでいる方はお気軽にご相談ください。

動画をinstagramに載せてます!
ご興味のある方はそちらもご覧いただけますと幸いです。

画像をクリックするとインスタに飛びます。

獣医師 澤


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