琳@quantumspin

「『都市伝説パズル』と後期クイーン的問題」(2017年) 日本推理作家協会HP 「ガウ…

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「『都市伝説パズル』と後期クイーン的問題」(2017年) 日本推理作家協会HP 「ガウス平面の殺人――虚構本格ミステリと後期クイーン的問題――」(2019年)『メフィスト』2019 vol.3 「本格ミステリの原罪――井上真偽論」(2020年) 『メフィスト』2020 vol.1

最近の記事

キャラクターとは何か――『現代ミステリとは何か』補論

琳 (@quantumspin) | Twitter はじめに  本稿は筆者が限界研に入会するための応募原稿として書き上げたもの(の一部)です。入会してさっそく驚かされた事に、そのときちょうど限界研でテン年代ミステリ論集の企画が動きだそうとしていました。すぐに筆者も飛び入り参加させていただく話になり、だったら本稿も使ってもらえないかと、厚かましい期待を抱きもしたのですが、そもそも本のコンセプトは作家論集で、筆者の原稿はテーマ論。しかも規定の倍の文量に達していた為、そのまま

    • 二重写しの日常――五十嵐律人『法廷遊戯』

       これまでメフィスト賞は、世界の手触りを鋭敏に感じ取る、むき出しの感受性にこそ栄誉を与えるものと思ってきた。絶賛にせよ激怒にせよ、ひとたび本を開くとこれまで培った現実感がはく奪され、本を閉じると異界にしか見えない日常に置きさられていた事に気付く。そうした世界と対峙する覚悟を強いる物語に賞を冠するものと思ってきたのだ。一作家一ジャンルとは、単に奇をてらえば付されるほど易しい称号ではあるまい。たとえ粗削りにせよ、そうしたみずみずしい作品が面白くない筈ないとも。  そうした姿勢で『

      • 『暗い越流』の批評な日常

         第六十六回推理作家協会賞短編部門を受賞した若竹七海『暗い越流』(二〇一三年)を彼女らしい作品と感じた読者はどれほどいるだろうか。無論若竹の作風が既にして多彩なものとは承知しているが、それでも尚そうした疑問が湧く程に本作は異彩を放っている。それは松本清張風のタイトルや、それに呼応した筆致を言いたい訳ではない。例えば冒頭、死刑囚を応援する手紙が弁護人に届けられるが、差出人の動機はすぐに虚偽と見抜ける破綻したものだし、犯人は虚偽の証言を残し真相を告げないまま物語は閉じられる。本作

        • 『『本陣殺人事件』を評す』と『本陣殺人事件』を評す

          『本陣殺人事件』『神楽大夫』『虚無への供物』『アクロイド殺し』に言及しています  『『本陣殺人事件』を評す』で江戸川乱歩は横溝正史『本陣殺人事件』(一九四七年)に対し、『英米推理小説の実例を見ても、機械的トリックを使用した作品は決して第一流のものではない。横溝君は無論それを知っている。知りながら尚且つこれを用いたのは、こういうものも一度は書いて見ようという作者の道楽気であって、既にして最上のものを目ざしていなかったこととなる』などと厳しい評価を下している。もはや今日の文脈で

        キャラクターとは何か――『現代ミステリとは何か』補論

          『魍魎の匣』と後期クイーン的問題

          (※本文の中で『魍魎の匣』の〝真犯人〟に言及しています)  京極夏彦は百鬼夜行シリーズ第2弾『魍魎の匣』(一九九五年)で第四十九回日本推理作家協会賞長編部門を受賞する。その独自性から『京極小説』と呼ばれ、脱格系作家を輩出するメフィスト賞を準備した本シリーズに、今更これは探偵小説なのかと疑問を呈する必要などないのかもしれない。しかし京極論盛んな九〇年代後半は、メフィスト系作品が『構築なき脱構築』と批判される一方で、本シリーズは探偵小説に引き付け論じられていたのだ。例えば第三回

          『魍魎の匣』と後期クイーン的問題