あやこの時間帯 #01

わすれられないんです。小学生になりたてのころ、近所の男の子と撮ったスナップ写真、三人ならんで、右の子ははにかんで、左の子は甘えるように、そんなふたりにはさまれて、あやこは、おとうさんがかまえるカメラのレンズを、かたくなに見つめていたんです。石段は日に灼けて、膝小僧はヂリヂリ汗をかいていたんです。やがて右の子の息づかいが不規則になっていく。左の子は半ズボンのすそをたくしあげていく。綿菓子のような熱気は耳もとにゆれて、貫かれた瞬間、浮かんだあの写真、あやこ、わすれられないんです。

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