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Web3でクリエイターやコンテンツの未来がどう変わるのか? 後編

株式会社Mintoの水野です。Web3で、クリエイターやコンテンツの未来がどう変わるのか? について自社での経験も交えて前編/後編に分けて解説していきたいと思います。今回は後編です。DAOを深堀りして、解説していきます。

※ NFT領域での体験談、DAOの基礎知識については前編をぜひお読み下さい。

Mintoはアニメ・漫画などのエンタメビジネスをアップデートするスタートアップです。絶賛採用中ですので、下記の記事もぜひお読み下さい。


米国をはじめとしたDAO事例

Web3の世界で、最初にブロックチェーン技術を具現化したサービスが、暗号資産、その後に、NFT、DeFi、DAOなどが続いています。前回は、Minto社のNFTでの体験と、DAOの基礎知識を書きましたので、ぜひ前編もご確認下さい。今回はDAOをもう深掘りしつつ、メタバースへも話を移行していきます。

※DAOとは(全編より):Decentralized Autonomous Organizarion=分散的自律組織) 様々なスキルを持った人が1つのテーマを元に集まり、プログラムで、プログラムのルールを決定し、トークン保有数などで投票を行なうなどして意思決定する組織。参加したい人が手を挙げて、それぞれのスキルに合わせてプロジェクトの中でコミットするのが特徴。単なるファンコミュニティではなく、ボランティアでもなく、意思決定にも関わり、プロジェクトが上手く行った場合には、インセンティブとして受け取ったトークンを売買して経済的なメリットも享受できるかも、という面白さを持つ。

さて、2021年は、USを中心に様々なDAO事例が出始めた年でした。Uniswapに代表されるようなプロコトル系DAOから、Friends With Benefitsのようなカルチャー系コミュニティのDAO、貴重なデジタルアートを収集するPleasrDAO 、VCのように投資を行なうThe LAOのようなDAOまで、様々な目的のDAOが存在します。

一方、DAOのセキュリティ・法律面での課題は、まだまだ多いと思います。それぞれの国・社会の中でDAOをどういった位置付けで捉えるかは、2022年中に様々な形で議論されていくでしょう。そして、DAOの経済圏の中心に位置付けられているトークンについても、米国ではなんらかの規制(証券扱い等)が入ると思いますし、日本では現時点でトークンの販売は厳しく規制されています。

上述の通りまさに発展途中のDAOですが、日本での数少ない事例として、我々が2018年に開始したブロックチェーンゲーム「CryptoCrystal」の事例をお伝えしながら、日本発DAOの今後の可能性について触れていきたいと思います。

CryptoCrystalのDAOで感じた事

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前編で、Minto社が2018年5月にブロックチェーンゲーム「CryptoCrystal」をローンチし、2021年8月に再ブレイクして月間3億円の流通量が発生した話を書きました。実は、ブレイクしたタイミングではCryptoCrystalのDiscord上のコミュニティは、数名でした。けれども、CryptoCrystalのNFTを購入した世界中の人達が、さらにそのNFTの価値を高めたいと思い、Discord上に集まってきました。

集まってきたのは、NFTのインフルエンサーにコネがあるマーケターや、Twitterなどでの発信が得意な広報、3Dデザイナーや、エンジニアなどなど、なかなかの強者達でした。CryptoCrystalのコミュニティは、これらのメンバーをコアチームとして、Discordコミュニティの運営権限を渡した時点から一気に進化しました。もちろん、CryptoCrystalのファウンダーとしてこのコミュニティをリードしたminicooheiの存在も大きいです(プロジェクトの中心人物の熱量は、DAO成功の重要な要素だと思います)。

集まってきたメンバー方々は、本当に、NFTの活性化、コミュニティ作りに造詣が深く、Discordだけではなく、TwitterやInstagramもDAOのメンバーが自発的に運営をしています。また、漫画などのコンテンツ企画や他のプラットフォームへの企画も大半がメンバー主導のものです。

彼らはコミュニティの価値を高め、NFTの価値が上がることを期待しながら、楽しみながらプロジェクトに関わってくれています。

また、DAO化の流れを受けて、Mintoとしてもひとつの大きな意思決定をしました。それがコミュニティからの要望で行ったキャラクターIPのPublic Domain化(CC0)/知的財産の消滅化です。

DAO化して様々なIP展開をしていく中で、IPの利用コントロール/制限は大きな課題です。MInto社にとっては、IPをPublicDomain化することは、未来の収益機会を失うので、普通に考えるとやるべきではないのですが、DAO化することで、CryptoCrystalのIPがどこまで発展できるかという事を追求した方が、将来的な会社への収益に繋がるのでは?と判断して、社会実験的に、この決断をしました。

ただ、PublicDomainにするとしても、IP利用において、よりIPの事を理解してもらいながら、利用を拡げてもらいたいという想いも強く、IPプロデュースに関わるプロとして、スタイルガイド(参考資料)は作成させてもらいました。(このスタイルガイドを作る資料はコミュニティからのクラウドファンディングで成立しています。)

個人的な感覚として、グローバルDAOに関わってみて強く感じるのは、

・組織だが縛りがない(雇用/被雇用ではなく参加/不参加)
・本気の24時間営業(様々なTimeZoneの人が関わるため24時間動いている)

の2点です。市場が盛り上がってくれば、24時間、時差を利用した入れ替わりで誰かが思考・制作・発信を続け、1日8時間の一般的な会社の3倍早く進みます。一方で、市場が落ち着いている時は、義務的に発信をするのではなく、小休止して、次の波が来るまで仕込むというような濃淡のあるコミュニケーションです。仕事のように毎日決まった時間に決まったことをするのではなく、締切も厳密には設定しない。あくまで市場の盛り上がりに合わせてコミュニティが動いている感じ。この辺りの感覚は今までに参加したことがない不思議な組織の感覚だなと思っています。

日本発DAOの可能性

さて、それでは今後、日本のクリエイターやプロデューサーがDAOコミュニティを運用する場合の課題は何でしょうか?

1つ目の課題はインセンティブ(動機/報酬)設計です。海外のDAOではトークンを発行し、ファウンダーやコアチームに無償配布しつつ、一部を販売して資金を得て、プロジェクトが進んでいきます。プロジェクトがうまくいけば、トークンの価値が上がってくるので初期に無償で獲得したり、安く買えた参加者にとっては、自分が頑張ったらリターンが増えるトークンはインセンティブとして機能します。

一方で日本ではトークンの販売は、暗号資産交換業の免許がないと難しいので、一般的なクリエイター・プロデューサーがトークンをインセンティブにしてDAOを運営するのは難しいです。そのため、クリエイティブを中心にしたDAOでは、トークンの代わりにNFTがインセンティブになります。具体的には、初期に無償でNFTを配布したり、安い金額で販売したりして、初期から、関わってくれた人には将来価値が上がった時に金銭的メリットが生じるように設計します。このあたりはもう少し設計パターンが増えるといいなと思ってはいます。

2つ目の課題は言語の壁です。日本ではNFTを購入するユーザーの絶対数がまだまだ少ないのが現状です。したがって、人気のDAOを作っていくには、英語で海外ユーザーも巻き込んで行く必要があります。どんなに良いクリエイティブを作ってもその過程を発信出来ないことで評価されない、、のはあまりにももったいない。ファウンダー(クリエイター)が英語でのコミュニケーションができない場合は、コアチームに日本語と英語を理解してくれるメンバーを入れるのが良いと思います。世界で評価されているプロジェクトでローカル言語のみで成立しているプロジェクトは見たことがありません。


3つ目の課題は、従来のコミュニティ運営からの頭の切り替えです。”クリエイターがコンテンツを発信して、コンテンツに共感したファンが集ってコミュニティが出来上がっていく”のが従来のコミュニティの出来上がり方だとすると、DAOは、”クリエイターとその周りにいるメンバーが共通の目的をもってコミュニティをつくりあげていく”形です。クリエイターとファンという関係よりは、もっとフラットで、役割を分担しているイメージ。実際は、DAOの外側にファンがいるというほうが正確かもしれませんね。


ということで、今日はDAOについての深堀りをしつつ、メタバースまで書こうと思ったら案の定、文字数がたりなくなったので、メタバースについてはまた別の機会に書きたいと思います!(そう遠くない未来で)


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