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クリエイターインタビュー第7回-世界中でヒットしたスタンプキャラを生み出した話-

編集部:こんにちは、クオン(※)note編集部です。
第7回 クリエイターインタビュー、今回はクオンのイラストレーターでLINEスタンプ発の人気キャラクター「うさぎゅーん!」の作者 Sさんに、うさぎゅーんの誕生秘話やこだわり、世界中で愛されるワケについてお話を伺います。

(※)株式会社クオンは2022年1月に経営統合し、株式会社Mintoとなりました。Mintoはアニメ・漫画などのエンタメビジネスをアップデートするスタートアップです。世界4カ国に拠点を持ち、コンテンツ×広告、越境IPプロデュース、Webtoon、Web3・メタバースの事業を展開しています。

S:よろしくお願いします!

[Sさんの経歴]
イラストレーター。印刷会社勤務を経て2017年にクオン制作部に入社。
同年スタンプキャラクター「うさぎゅーん!」を誕生させた。
[好きなもの]
温泉、ゲーム

▼Sさん

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[うさぎゅーん!について]
ぎゅーんっと激しい動きと、ちょっとシュールな可愛さが魅力!
LINE、カカオトーク、Facebook、Wechat、zaloなど、世界中のSNSでスタンプが使用されています!ダウンロード総数は6.2億超え!

▼うさぎゅーん!

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「うさぎゅーん!」が誕生するまで。 〜設定は後付けだった?!〜

編集部:クオンではイラストレーターとして、うさぎゅーんの制作や監修を行っているSさん。さっそくなのですが、うさぎゅーんが生まれたきっかけを教えてください!

S:はい。うさぎゅーんは LINEの「ハイテンションスタンプ特集」という企画がきっかけで誕生しました。私が入社してすぐにこのお話が来て、「やります!」と手を挙げて担当させて頂くことになりました。

編集部:そうだったんですね(笑)いたってシンプルなきっかけ!

S:はい。

編集部:スタンプ企画の話が来て、キャラクター作りはどういったことから始めたのでしょう?何かモデルになったものってあるのでしょうか。

S:当時「白くて丸い動物キャラクター」っていうのが流行っていたんです。その流行りを取り入れて、ハイテンション要素として[動きが早くて面白い]っていうのを足していった結果、シュールで可愛い「うさぎゅーん!」になりました。

編集部:なるほど。では、動物をうさぎにした理由は?

S:見た目がわかりやすいからです。スタンプってあんまり考えて買うものじゃないと思っているので、パッと見の印象でわかりやすくて可愛いのはうさぎだな!と思って。

編集部:確かに。複雑なキャラクターよりも、わかりやすいシンプルなものの方がよく送られてくる印象です。

S:共通認識がある方が送る人を選ばないというか、使いやすさはありますよね。

▼LINEの会話を盛り上げてくれるうさぎゅーん!

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編集部:ですね!わかりやすくてみんなが知っているものをモチーフにするって、キャラクター作りにおいてすごく重要なポイントなのかも。
では…続いてキャラ設定はどうですか?うさぎゅーんは「うさぎとおもちのハーフ」というユニークな設定がありますよね。

S:はい。実は、うさぎゅーんは スタンプのキャラクターとして誕生したので、生まれた当初は今みたいにキャラ設定もなくて…。名前もなんとなく仮でつけてたものが、そのまま正式名称になりました。

編集部:えええ!そうだったのですね。

S:うさぎゅーんがデビューして1年後にキャラのSNSをやろう!という話になって。そこから設定をどんどん足していったんです。ストーリーを考えたり、新しい仲間を登場させたり。

編集部:なるほど、面白いですね。設定が後付けって、スタンプ発キャラクターならではの作り方というか、育ち方というか。

S:そうですね。作者は私なんですけど、会社にはうさぎゅーんを一緒に運用してくれる「うさぎゅーん!チーム」がいるので、みんなでアイデアを出し合ってうさぎゅーんを作っている、育てているという感じです。

編集部:チームのみんなで作り上げる…素晴らしいですね!

しゃべらない、表情が変わらない。だけど、感情豊かなキャラクターをつくる。〜限られた表現方法でわかりやすく伝えるために〜

編集部:私、うさぎゅーんのあの絶妙な顔が好きなのですが、うさぎゅーんを描くにあたって気をつけていることや、こだわりを教えていただけますか?

S:ありがとうございます!見ての通りシンプルな造形なんですよ。なので、全体のシルエットやバランスにはこだわっています。特に顔まわり、耳とか特徴的な口とか目鼻の配置はちょっとずれただけで「なんか違う」感が出てしまうので。

編集部:うんうん。

S:あとは「口を閉じない、目を閉じない」という制約を設けて描いてます。キャラクターとしての特徴ですね。制約の中どう魅せるかっていうのが難しくもあり、面白くもあります。

編集部:そんな制約があったのですね!確かに、うさぎゅーんはずっと口開いてるし、目も閉じているところみたことない。でも、表情が変わらないキャラなのに、喜怒哀楽を上手く表現してらっしゃいますよね。何かコツがあるのですか?

S:うさぎゅーんの場合はエフェクトを使って感情を表現しています。汗をかかせたり、眉間にしわを寄せてみたり。あとはポーズや動きなども…。日々試行錯誤しています。

編集部:なるほど、言われてみればエフェクト多めですよね。

S:でも逆に、あえてそれを無くしてみるっていうのもあって。何にでも見える表情をしているので、見ている人がいろんな解釈ができるんです。「何を考えてるんだろうこの子は」みたいに。そうやって想像してもらえる余白があるところが、うさぎゅーんの魅力の一つなのかもしれません。

編集部:へえ〜!それもシンプルな表情ゆえですね。面白い。海外ヒットの理由もそこにある気がします。

S:確かに。もう一つ、漫画にしろSNSのイラストにしろ、なるべくセリフを入れないようにしています。言葉を入れたら翻訳が無いと意味がわからないじゃないですか。それで意図が上手く伝わらないってことがあるので、なるべくキャラの表情とか動きとか、イラストで表現していたというのが功を奏したのかも…。

編集部:なるほど、言葉を使わないことで世界中の人に受け入れてもらえた。

S:そうですね。うさぎゅーんの場合はアニメーションスタンプのヒットがきっかけで名前を知ってもらえたので、「動き」や それによる「わかりやすさ」っていうのも重要なポイントだったと思います。

編集部:ほう。うさぎゅーん、動作がやたら早いというか、すごく特徴的な動きをしていますが、その動きについてのこだわりは何かあるのでしょうか?

S:作っているときに意識しているのは「面白いかどうか」です。これは結構大事にしてることです。

編集部:おお〜、面白いかどうか!

S:うさぎゅーんを可愛いだけのキャラクターにしたくなくて。というのも、スタンプキャラなので送った人も送られた人も明るい気持ちになって笑顔になるようなものを作りたかったんです。素早く動くっていう特徴を活かして、「可愛い+面白い」とか「可愛い+楽しい」うさぎゅーんを生み出すようにしています。

編集部:素敵です。実際にうさぎゅーんが送られてきて、クスッと笑っちゃったり、ハッピーになった人、絶対いると思いますよ。

S:そうだと嬉しいです!動きのラフを作っているときにつまらなかったら即ボツにしたり、スタンプじゃ分かりづらい細かい動きは外したりして、一つ一つ試行錯誤して作っているので。

編集部:そうですよね。これは個人的な話ですけれど、Sさんと出来上がったうさぎゅーんのギャップにいつも驚いているんです。こんなに落ち着いていて丁寧な方が、わんぱくなうさぎゅーんを作ってるんだ…!って(笑)

S:うさぎゅーんが元気いっぱいなぶん、私のエネルギーを吸い取られてる気がします(笑)

▼POPUPストアの様子(タイ・バンコク)

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▼POPUPストア&テーマカフェの様子(台湾)

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キャラクター愛と、作り手に対するリスペクトを忘れない。〜会社所属のクリエイターだからこそ気をつけたいこと〜

編集部:そんな元気いっぱいな姿で 日本だけでなく 世界中にハッピーを届けている「うさぎゅーん!」を生み出したSさんですが、キャラを生み出し、ヒットした後で変わったことって何かありましたか?意識的なこととか、環境の変化とか。

S:そうですね。変わったことというか気をつけるようになったことなんですが…。キャラクターを運用している立場として、自分の生み出したものや他の人が生み出したものに対しての扱い方を より気をつけるようになりました。イラストの無断利用・改変・グッズ化だったり…。誰でも気軽に作品を発表できるようになった今、作り手として改めて気を引き締めていかねば、と思っています。

編集部:自分の生み出したものが勝手に変えられたり、意図しないところで使われていたり。ネットやSNSが普及した今、そういう事例を見ることが以前より多くなりましたよね…。

S:本当に悲しい話です。うさぎゅーんでも海外で海賊版のグッズを売り出されてしまうことがありました。「作品は自分の子どもみたいなもの」って良く聞くと思うんですけど、私も少なからずその考えを持っていて。海賊版のグッズが出された時は、「うちの子が誘拐された!」みたいな気持ちに…。すごく悲しかったです。

編集部:いやあそれは辛い。そう思うくらい、愛を込めて作っているキャラクターですもんね。

S:はい。長い付き合いなので…。こういうことがあった時は 会社の「うさぎゅーん!チーム」が一緒に対応してくれるので対処自体はできるのですが、ショックは大きいです…。他のクリエイターさんに同じ思いをして欲しくないので、私も迷惑をかけてしまわないように気をつけています。

編集部:大事なことですね。では、逆に変わらないことは?

S:世の中のキャラクターに対する愛情は変わらないです。私、漫画にしろアニメにしろキャラクターからハマっていくタイプなんですよ。なのでキャラクターに対する愛情はもちろん、作り手への多大なる感謝というか、リスペクトは昔から変わってないです。というより、むしろ高まってますね!

編集部:素晴らしい!これも作り手だからこそ芽生える感情ですね。

S:生みの苦しみを知っているので「大変なんだよな…」と、おこがましくも勝手に共感しています。

編集部:そういう他人の作品から刺激を受けて、うさぎゅーんに反映させることってあるのですか?

S:あります!でも、直接すぐに反映させることはないです。芸術作品に限らず日々の生活の中で感じたこととか、色んなことを 集めてろ過して抽出したものがうさぎゅーんに活されるって感じです。

編集部:そうなんですね。私が作り手だったら、最近ピンクにハマってて世間的にも流行ってるからピンク色の服着せちゃお〜とか考えてすぐに反映させてしまいそう…。

S:うさぎゅーんってあくまでも私だけのものじゃなくて会社のキャラクターなので、私物化は良くないと思っているんです。個人クリエイターでしたら、自分の好きなもの・影響受けたものを100%キャラクターに取り入れる、ということもあると思うんですけど…。うさぎゅーんのキャラクター性や、多くの人に広めていくっていう会社での目標を踏まえて考えると、個人の趣味を露骨に反映することは良くないなあと。まあでもそこの塩梅が難しいところではあるんですけどね…。

編集部:なるほど、そういった意味での ろ過と抽出。

S:その中で私のやりたいこと・やらせたいことが、うさぎゅーんのキャラの方向性として問題なければ採用する、って感じです。なので、さっき言ってたピンクの洋服着せるってうのも、例えばSNSで一枚絵として出して、それでファンの反応を見るっていう点ではアリかもですね。そういう風に見せ方を工夫して、やりたいことを上手いこと取り入れたり、切り捨てています。

編集部:ほう。ではある種、うさぎゅーんはビジネスパートナーみたいな存在なんですかね?

S:そうですね。さっきうさぎゅーんは「自分の子どもみたいな存在」って言ったんですけど、私の中にそういう親目線と、プロデューサー目線の2つを持ってて、日々その2つのぶつかり合いですね。

編集部:面白い。どちらも欠けてはいけない大切な視点ですね。

全国どこでも「うさぎゅーん!」に会えるように。〜大人から子どもまで多くの人に愛されるキャラへ〜

編集部:では最後にうさぎゅーんと叶えたい、Sさんの夢をお聞かせください!

S:はい。個人的には、お菓子のパッケージに採用されたいです!全国のスーパーやコンビニ、どこでも買えるところにうさぎゅーんがいたらいいなあって思ってます。

編集部:おお〜!いいですね。

S:キャラクターのついたお菓子って最近多く見かけるので、そこにいたら感動しますね〜。あとは、ご時世的に今は難しいと思うのですが、対面での企画をやってみたいです。うさぎゅーんとのふれあいイベント…「うさぎゅーんと〇〇しよう!」みたいな。
事態が落ち着いたらそういうのも挑戦してみたいです。

編集部:いわゆる「接触イベ」ってやつですね!ショッピングモールの催事場でうさぎゅーんがちびっこたちに囲まれているのを想像しちゃいました(笑)いつか実現できるように、これからも応援していきます!

S:よろしくお願いします!

▼SHIBUYA TSUTAYAのPOPUPではしゃぐうさぎゅーん!

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編集部:次回は、Sさんにクオンでキャラクターを作り続ける理由をお聞きします。お楽しみに!

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