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【まとめ】 2022/12/13 23:25 奄美大島近海を震源とする地震について(第3報 ver.3)

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1.地震の概要

2022年12月13日23:25(日本時間)頃、奄美大島近海(北緯27°36.0'、東経129°24.8')を震源とする最大震度4のやや強い地震が発生しました。この地震による津波はありませんでした
震央は奄美大島近海で、震源の深さは約37km、地震の規模はMj6.0と推定されています(気象庁暫定値)。最大震度4を観測したのは鹿児島県瀬戸内町でした。

2.地震動について

気象庁によると、この地震では鹿児島県瀬戸内町請島(地方公共団体設置)で震度4を観測しました。
防災科学技術研究所のK-net強震観測網によると、鹿児島県伊仙町の伊仙観測点で震度3(計測震度2.5)、三成分合成最大加速度17.80galを観測しています。また、鹿児島県奄美市の笠利観測点で震度3(計測震度2.7)、三成分合成最大加速度14.51galを観測しています。

画像2.1 伊仙観測点 強震波形(防災科研)
画像2.2 伊仙観測点 速度・加速度応答スペクトル(防災科研)

防災科研のJ-RISQ地震速報によると、この地震で鹿児島県瀬戸内町の一部の地域では震度4相当のやや強い揺れがあったものと見られています。※注1,2
(注1)これらの推計震度は必ずしも実際の震度と一致しないことに注意してください。
(注2)推定に用いられている震源要素等はすべて速報値段階のもの(気象庁速報値)です。

画像2.3 J-RISQ地震速報 震度の分布(防災科研)(〇は防災科研K-NET, KiK-net, 気象庁, 地方公共団体震度計において観測された震度、塗りつぶしは250mメッシュで補間した推定震度。)

気象庁によると、この地震で長周期地震動階級1以上は観測されていません。

3.地震のメカニズ厶

気象庁のCMT解では、東西方向に圧力軸、北西-南東方向に張力軸を持ち東南東-西北西走向で低角の左横ずれ断層の型、あるいは北北東-南南西走向で南東側上昇の高角左横ずれ正断層の型となっています。
Mw5.6で、セントロイドの位置(緯度,経度,深さ)は(27°36.0'N,129°27.0'E,18km)です。

画像3.1 気象庁CMT解

この地震は、沈み込んだフィリピン海プレートの内部(スラブ内)、またはその周辺で発生した地震とみられます。

4.緊急地震速報

気象庁は23時25分30.1秒に地震波を検知し、地震波検知から4.7秒後の23時25分34.8秒に緊急地震速報(予報)を発表しています。緊急地震速報第一報提供の段階でS波が到達していた地点はありませんでした。一般向け緊急地震速報(地震動警報/特別警報)は発表されていません。

画像4.1 緊急地震速報第1報提供から主要動到達までの時間及び推計震度分布図(気象庁)

5.過去の地震活動

画像5.1 F-net広帯域地震観測網による、1997年以降の震源周辺の地震活動の状況(防災科研)
画像5.2 気象庁 今回の地震の震源周辺におけるCMT解

○過去の地震活動(Mj≧6.0)
1986年3月24日11時01分頃、今回の地震の震央から北西に少し離れた所を震源とするMj6.1の地震が発生しています。震源の深さは18kmです。今回の地震との関連性は不明です。

1995年10月18日19時37分頃、今回の地震の震央から北西に少し離れた所を震源とするMj6.9/Mw7.3の地震が発生しています。震源の深さは39kmです。この領域では本震から24時間以内にM≧6.0の地震が3回発生し、最大の規模はMj6.7/Mw6.9でした。
気象庁のCMT解では、画像5.3に示す通り、南東-北西方向に圧力軸、西北西-東南東方向に張力軸を持つ、南北走向で西側上昇の低角右横ずれ正断層、あるいは南西-北東走向で南東側上昇の高角正断層の型となっています。今回の地震ともいくつか共通点が見られるメカニズム解で、今回の地震と似たメカニズムで発生していた地震である可能性があると考えられます。なお、この地震においては中之島の検潮所で84cmの津波が観測され、鹿児島県喜界島浦原において水位上昇高3mに達したとのことです。各地で観測された津波は、周期6分程度の短周期なものが卓越しており、各地の津波初動は引き波でした。これは、観測点に囲まれた領域において海底が沈降したことを表します。通常、正断層型の地震では南東側が隆起するため、震源から東方向の検潮所では押し波が観測されると考えられますが、この地震においては引き波でした。隆起量が小さかったために押し波が観測されなかった可能性があります。
なお、翌日の最大余震においても中之島で50㎝に達する津波を観測しています。
↓参考

https://www.jstage.jst.go.jp/article/zisin1948/50/1/50_1_49/_pdf


画像5.3 気象庁地震月報(1995)より 1995/10/18 19:37JSTの地震のCMT解


画像5.4 気象庁地震月報(1995)より 1995/10/19 11:41JSTの地震のCMT解

1997年1月18日0時53分頃、今回の地震の震央から北北西に200kmほど離れた所を震源とするMj6.2/Mw6.0の地震が発生しています。震源の深さは37kmです。画像5.5に示す通り、気象庁CMT解は今回の地震とはやや異なるメカニズムを示しています。南東-北西方向に圧力軸を持ち、北北西-南南東走向で南東側上昇の高角逆断層の型、あるいは東西に走り南側上昇の逆断層成分を含む右横ずれ断層の型となっています。今回の地震と関連があるかは不明です。

画像5.5 気象庁地震月報(1997)より 1997/1/18 0:53JSTの地震のCMT解

2001年12月9日5時29分頃、今回の地震の震央から北に100km弱離れた所を震源とするMj6.0/Mw6.3の地震が発生しています。震源の深さは36kmです。画像5.6に示す通り、気象庁CMT解は今回の地震とはやや異なるメカニズムを示しています。東西方向に圧力軸を持ち、南北走向で東側上昇の高角逆断層の型、あるいは南東-北西に走り南西側上昇の低角逆断層の型となっています。NP1の傾斜角が水平面に対しほぼ垂直、NP2がほぼ水平と特徴的なメカニズム解になっています。今回の地震との関連性は不明です。

画像5.6 気象庁地震月報(2001)より 2001/12/9 5:29JSTの地震のCMT解

2006年11月18日3時03分頃、今回の地震の震央から北西に100km強離れた所を震源とするMj6.0/Mw6.1の地震が発生しています。震源の深さは30kmです。画像5.7に示す通り、気象庁CMT解は今回の地震とはやや異なるメカニズムを示しています。南東-北西方向に圧力軸を持ち、北東-南西走向で南東側上昇の高角逆断層の型、あるいは北北東-南南西に走り北西側上昇の低角逆断層の型となっています。今回の地震との関連性は不明です。

画像5.7 気象庁地震月報(2006)より 2006/11/18 3:03JSTの地震のCMT解



2022.12.14 0:25 第1報
2022.12.14 18:17 第2報 気象庁暫定値に更新
2022.12.17 0:09 第3報 ver.1
・「地震のメカニズム」の項目に気象庁発震機構解およびそれについての記述を追加 
・「過去の地震活動」の項目の内容を追加
2022.12.17 8:23 第3報 ver.2 1995年10月18日の津波に関する記述を追加


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