記憶頼りの旧作自選集

切れぬ糸ゆえにあなたはひだまりの象牙細工のようにやさしい

ガラパゴス島いちばんの椰子の木の上ではじまる夏雲の旅

怖いことそれは僕らの夕焼けが夜になってもまだここにある

草原の蒼き光を集めつつ君の舞う空 僕はここだよ

階段の段差が少し違うのは気のせいですよ支配人様

空調の吹き出し口にいつまでも引っ掛かってる埃だ僕は

知っているくせにあなたは求めない胡族の姫は飼い殺されて

そういえばおまえの夢はとんがった岬の先で海へ飛ぶこと

妹の半裸体には兄として羊歯植物の森を添えたい

早梅雨の緑の雨に濡れながら飛ぶんだ僕のチキンナゲット

海岸に続く足跡 なんにしろ違う歩幅で生きてる僕ら

手を振って循環バスを止めてゆく町にひとつの映画館まで

唐突に海に檸檬を投げつけて「太平洋はレモンティーです。」

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