うたの日 11月分

(一部、改作あり。下から発表順になります)

 あたたかい水玉がいま君の目の涙腺という火からこぼれた

 全わたし「あっ」と言わせた大賞はあなたの「今はフリー」宣言

 お互いの傷は確かに癒される夕焼けっぽい手のあたたかさ

 竜宮で君はあんなに濡れるのに地上の雨のなにがこわいの

 美しい瞳のままでキッチンのフロアマットにいる目玉焼き

 ドーナツの穴だけ食べる僕だけどあなたに抜けていればうれしい

 二つ名は『赤いダイオウグソクムシ』カッチカチだが三倍早い

 マーメイドマヨネーズっておにぎりがあるんだ岬の青いコンビニ

 ウェディングドレス姿のわたくしに母が差し出す「肩たたき券」

 もうここで夢もみないし飛ぼうともしないよ海に続く階段

 春風は来年ですかいろいろと相談したいこともあるのに

 空と海。織り込み済みの三つ編みに想いの丈の赤いリボンも

 象さんのお鼻でポムポムされたとき地球に撫でられた気がしたの

 知らんがな そう思いつつ5メートル残した専務のパーに「OK!」

 なんとなく五郎丸が蹴る直前の楕円の球に似てて白菜

 静かだがこの空き部屋は窓枠の『テナント募集』がかなりうるさい

 先生はスイッチがありくちびるで押すと一晩中おもしろい

 まん丸でなくなっている左手のリングにあなたとの十五年

 飛べないし空も見上げるだけだけどそれでも僕は風と親しい

 クイーンはクイーンなのだが会社ではさらに頭に『お局』が付く

 偶然にファーストフードに仕入れられポテトを名乗るジャガイモ野郎

 棘のあるままで転がり込んだのにあなたは血まみれでも笑うんだ

 タイトルにわたしと書いた背表紙の本をやさしくひもとくあなた

 ギロチンは機能的には菜切りだと『月間包丁』コラムが曰く

 トランプねぇ彼は丸ごとジョーカーで相手も扱いにくい婆(ババ)だぜ

 『君が代』を謎の呪文に変えてゆく妻の音色が計り知れない

 「ありがとう(殺せるけれど)許します」いじめたヤツを壁に並べて

 北だって海も緑もあるのにね雪虫とんだ屋根までとんだ

 とりあえず今日もわたしは回想と止め絵ばかりで間に合うだろう

 あの人もたぶん悲しい ネクタイを結んだだけの鳩だけれども

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