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平間貴大インタビュー ─KOURYOU「家船」における「万物以外の神」制作を中心に─

瀬戸内国際芸術祭2019(以下瀬戸芸)の会場である女木島に展示されているKOURYOUの出品作品「家船」の制作へ参加した平間貴大に、彼が関わった作品についてインタビューをした。「家船」の解説はKOURYOUインタビューに詳しいのでそちらを参考にして欲しい。(https://note.com/qqwertyupoiu/n/ne74b2493197f


──「家船」外側の入口付近には玉垣が並んでいて「家船」の設定では、製作者たちの名前はその玉垣に記されています。

平間:僕の名前が記されている玉垣は黒いアクリル製です。遠くから見るとほとんど真っ黒に見えるのですが、近づいてみると「平間貴大」と縦にゴシック体で書いてあるのがわかります。

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玉垣(平間貴大)正面から 撮影:平間貴大

平間:斜め上からの画像です。右側の面が重なっている所は名前が隠れていると思います。名前が書かれている面が正面の外側ではなく、奥の面の内側に書かれています。

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玉垣(平間貴大)裏側から(右側は明度調整済) 撮影:平間貴大

平間:内側に記名されているので玉垣の裏側から見るとほとんど文字が見えませんが、近づいてよく見てみるとうっすら見えます。文字が反転しているのですが、「平間貴大」の漢字が全て左右対称なので普通に読めてしまいます。

──次に「家船」には多くの神が祀られた漁師の神棚があり、そこで祀られている神のうちの一柱として作ることになった「万物以外の神」についてお聞きしたいと思います。どんな神様なのでしょうか。

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「家船」内部、神棚 撮影:齋藤葵

平間:この神は「万物以外の神とは○○である」と単純に説明するのが非常に難しく、今回の解説で余計ややこしい存在になってしまう可能性があるということを先にお伝えしておきます。まず神棚内部の形式ですが、それぞれの神と神の間には仕切りがあり、さらに中は上段と下段にわかれていて上段にはトレーディングカードのような神のイメージ図、下段には扉のようなものが描かれています。屋根が特徴的なこの神棚自体は荒木佑介さんのリサーチの成果です。

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「家船」内部、神棚「万物以外の神」 撮影:シゲル・マツモト

平間:僕が作った「万物以外の神」は、横一列にひしめき合うように並べられた神々の一番右側に位置しているものです。上段の神のイメージですが、「万物以外の神」はそのものを描くことや表現することは難しいと考え、その状況をグラフとして表現しました。「万物以外の神」は存在していません。存在すると万物の内に入ってしまうので万物以外の神ではありえなくなってしまうからです。なので減っていく様を表す図を神のイメージとしました。下段にはピンク色の扉が開いていて、奥を覗くと暗闇の中にもう一つ同じ扉が見えるようになっています。奥の扉は閉じていて、中は見えません。

万物以外の神奥が見える撮影徳江 蔵

ドアの奥にもドアがあり、閉じている 撮影:徳江 蔵

──まず上段のカードについて教えて下さい。白い背景に黒で一本の音波のように振幅が減衰していく曲線があります。右端には矢印マークがあります。手書きのようで、曲線の中にうねりがあります。

平間:これは万物以外の神の状態を表す曲線です。手書きで減衰曲線を書いて、右端に矢印マークをいれて左から右への流れをつくりました。質量保存の法則を情報に適応させて「万物と万物以外の総量は変わらない」と設定することで、万物は増えていくが万物以外は減っているという状況をグラフで表したものです。減衰の仕方ですが、例えばテクノロジーの発達による情報爆発のようなことが起こることもあるので、手書きにして偶然性から起こる揺らぎを取り入れてみました。

──万物と万物以外の総量にリミットを加えることで、減り続ける「万物以外」を作り出して、それをグラフにしたという事でしょうか。「万物以外も含めて万物だ」とも言えるので、多少おかしなことを言っているように思えます。もしくは、万物以外であれば神も居ることができないと思います。

平間:「万物以外がある」「それも含めて万物だ」「そしてその万物があればそれ以外もある」という応酬は永遠に続けることができますが、このジレンマを解決するための最終地点を「その万物以外がある」に設定した結果です。「万物以外」とその一つ前の「万物」を足すと常に一定になるように設定しました。

──下段の扉は二重構造になっているようですが、奥の扉は閉まっていて、向こう側が見えなくなっています。ここに先程の最終地点の設定が入っているのでしょうか。また、何故「万物以外の神」を擬人化しないのでしょうか。

平間:先程のジレンマを、一つは開いているドア、もう一つは閉まっているドアで表しました。擬人化しないのは、この神は始めからコンセプチュアルな存在なので、宿りどころがあってはならないからです。何も創り出していないし、いる場所も無い神なので、そのもの自体ではなく、その状況やその神を認識しようとする状態を図やドアの形で表しました。もちろん「万物以外の神」には時間の概念やドア、移動するという考え方も当てはめられないので、この神にとってはなんの意味もありません。全てはこの神棚の形式に合わせるためのものです。

──何故「万物以外の神」を作ろうと思ったのですか。

平間:今回作った神が、始めから多くの神々と一緒の神棚に横並びになっている事が一番大きな理由でした。その中で一番神らしくない神をつくることを目標にしました。減衰して消滅に向かっている神をどのようにつくりだそうかという結果です。

──「家船」に参加した箇所は「万物以外の神」と玉垣以外は何かありますか?

平間:白い四角錐をたくさん作りました。屋根の上や家船の外側の船体部分に乗っている玉の周りにへばりついているものです。

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撮影:平間貴大

「レビューとレポート」 第7号 2019年12月
(パワードbyみそにこみおでん)

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