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2021年7月から東京都現代美術館で始まった3つの展覧会「GENKYO 横尾忠則 原郷から幻境へ、そして現況は?」「MOTアニュアル2021 海、リビングルーム、頭蓋骨」「MOTコレクション Journals 日々、記す/特別展示:マーク・マンダース 保管と展示」レポート

東京都現代美術館では2021年7月17日より「GENKYO 横尾忠則 原郷から幻境へ、そして現況は?」「MOTアニュアル2021 海、リビングルーム、頭蓋骨」「MOTコレクション Journals 日々、記す/特別展示:マーク・マンダース 保管と展示」の3つの展覧会が開催中だ。

「GENKYO 横尾忠則 原郷から幻境へ、そして現況は?」

企画展示室では過去最大規模の横尾忠則の個展「GENKYO 横尾忠則 原郷から幻境へ、そして現況は?」が開催されている。

1960年代からグラフィックデザイナーやイラストレーターとして活躍し、1980年夏にニューヨーク近代美術館でピカソの回顧展を見たことを契機として画家に転身。以降もアート界から常に注目を浴び続けている横尾忠則の大規模な展覧会だ。5歳の時に描かれた《武蔵と小次郎(模写)》から2021年に描かれた新作まで600点以上の作品を展示。

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「GENKYO 横尾忠則 原郷から幻境へ、そして現況は?」展示風景

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「GENKYO 横尾忠則 原郷から幻境へ、そして現況は?」展示風景

会期中には「オンラインイベント『GENKYO 横尾忠則』展に迫る」と題して2013年に横尾とコラボレーションした書籍『えほん・どうぶつ図鑑』を出版した歌人の穂村弘、2002年に東京都現代美術館で行われた横尾の展覧会を企画し『別冊太陽 横尾忠則』(2013年)では図版構成と解説執筆を行なった本展監修者の南雄介、横尾に憧れて絵の道を目指したというみうらじゅんによるトークイベントをそれぞれオンラインで開催。
公式Twitter(@GENKYO_Yokooten)では瀬戸内寂聴や吉本ばなななど数々の著名人が横尾の魅力を語る「SNSリレー」がツイートされている。

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「GENKYO 横尾忠則 原郷から幻境へ、そして現況は?」展示風景

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「GENKYO 横尾忠則 原郷から幻境へ、そして現況は?」展示風景

都内では他にも7月17日(土)から8月22日(日)まで渋谷PARCO8階「ほぼ日曜日」で書籍『YOKOO LIFE』出版記念とした「YOKOO LIFE 横尾忠則の生活」展、21_21 DESIGN SIGHTギャラリー3で2021年7月21日(水)から10月17日(日)まで、カルティエ現代美術財団の依頼で横尾忠則が描いた肖像画のシリーズを展示する「横尾忠則:The Artists」展を開催。さらに丸の内ビルディングと新丸の内ビルディングのガラスの壁面では9月5日(日)まで、デザイナー・アーティストの横尾美美と初の親子大規模競作を展示。

基本情報
https://genkyo-tadanoriyokoo.exhibit.jp/
会期 2021年7月17日(土)-10月17日(日)
休館日 月曜日(7/26、8/2、8/9、8/30、9/20は開館)、8/10、9/21
※臨時開館については https://www.mot-art-museum.jp/news/2021/07/20210701103734/
開館時間 10:00-18:00(展示室入場は閉館の30分前まで)
観覧料 一般 2,000 円 / 大学生・専門学校生・65 歳以上 1,300円 / 中高生 800円 /小学生以下無料
会場 東京都現代美術館 企画展示室1F/3F


「MOTアニュアル2021 海、リビングルーム、頭蓋骨」

若手アーティストの活動を通じて、現代美術のひとつの動向を紹介するMOTアニュアルは1999年の開催から今年で17回目。今回はそれぞれの社会的背景や歴史的文脈を掘り下げながら、映像表現そのものを追求するアーティスト3名を紹介する。

幼少期に上海から青森に移住したことが表現のきっかけになったという潘逸舟は、自身のパフォーマンスを記録する形で映像や写真作品を発表してきた。今回の展覧会では2010年から続けているパフォーマンス作品を新作を含め7点展示。2010年の作品《帰る場所》は、海をどのように捉えて表現していくのかを考えて作られた。「形なき場所、日常の中で起きている問題を投影する場所」[1]としての海に向かって匍匐前進をする潘が印象的だ。

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「MOTアニュアル2021 海、リビングルーム、頭蓋骨」潘逸舟 展示風景

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「MOTアニュアル2021 海、リビングルーム、頭蓋骨」潘逸舟 展示風景

保険会社に勤めた後、ノルウェーに移住し美術学校に進学した経歴を持つ小杉大介は、オスロ国立芸術大学在学中に油彩画やサウンドアート、ダンスを学んだ。直近の5年間は映像作品に専念している。出品作品の一つ《異なる力点》は小杉の父である雅敬と舞踏家の岩下徹とのコラボレーション作品だ。この作品は当初、雅敬が岩下を演技指導監督するというドキュメンテーションの形で作られたが、撮影された映像を見て方針を変更したという。父が自分の症状を病院で説明する際、それまでネガティブな言葉でしか説明できなかったのが、芸術的な制作を続けることで変化が出て来たことに関心を持った小杉は、ドキュメンタリー的な側面で制作するのをやめて、雅敬と岩下の共同制作として編集を進めた。内覧会当日のレクチャーでは「撮影された映像をみて、何が映っているのかというところから考えて作品を作っていきたい。」と語った。

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「MOTアニュアル2021 海、リビングルーム、頭蓋骨」小杉大介 展示風景


マヤ・ワタナベはペルー出身、オランダを拠点とする映像作家。近年はペルーで続いた政治的混乱に光を当て、社会と人々の内に未だ深く浸透している抑圧と暴力を映し出そうと試みている。
1980年から2000年まで続いたペルーの内戦での犠牲者はおよそ7万人とも言われている。その後「真実和解委員会」が設置されたが、20年が過ぎる現在もこの内戦の真相は明らかにされていない。1時間に及ぶ映像インスタレーション《境界状態》ではある集団墓地に接近する。一見すると何を撮っているのか判別がつかないと思いきや、突然土や石、骨や歯が鮮明に映り込む。会期の二週間前に完成したという《銃弾》では、1986年に軍の発砲によって殺害された身元不明の犠牲者の頭蓋骨が巨大スクリーンに投影され、ペルーにおける正義と司法の問題に迫る。この他2014年に制作された3面のビデオ・インスタレーション作品の一部を《風景Ⅱ》として展示。

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「MOTアニュアル2021 海、リビングルーム、頭蓋骨」マヤ・ワタナベ 展示風景

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「MOTアニュアル2021 海、リビングルーム、頭蓋骨」マヤ・ワタナベ 展示風景

新型コロナウイルスによるパンデミックで多くの国が苦境に立たされている昨今、映像を媒体として改めて身体をどのように捉えていくのかを考察する展覧会となっている。

[1]内覧会当日のレクチャーでの発言


基本情報
https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/mot-annual-2021/
会期 2021年7月17日(土)- 10月17日(日)
休館日 月曜日(7/26、8/2、8/9、8/30、9/20は開館)、8/10、9/21 
※臨時開館については https://www.mot-art-museum.jp/news/2021/07/20210701103734/
開館時間 10:00-18:00(展示室入場は閉館の 30 分前まで)
観覧料 一般 1,300円 / 大学生・専門学校生・65歳以上900円 / 中高生 500円 / 小学生以下無料
会場 東京都現代美術館 企画展示室 地下2F


「MOTコレクション Journals 日々、記す/特別展示:マーク・マンダース 保管と展示」

戦後美術を中心に、近代から現代に至る約5,500点を収蔵する東京都現代美術館の今回のコレクション展は「MOTコレクション Journals 日々、記す/特別展示:マーク・マンダース 保管と展示」と題し、災害やコロナ禍、オリンピック、なにげない日常などを背景に制作された作品を多様な作家たちによるアンソロジーのように構成している。

新収蔵やMOTコレクション初出品を中心に、現在の私たちを取り巻く社会や日常を映し出す多様な作家による約70点を展示。

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「MOTコレクション Journals 日々、記す/特別展示:マーク・マンダース 保管と展示」大岩オスカール 展示風景

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「MOTコレクション Journals 日々、記す/特別展示:マーク・マンダース 保管と展示」三宅砂織 展示風景

そして3階では特別展示としてマーク・マンダースのインスタレーションを特別に公開する。今回の特別展示は、3月から開催された「マーク・マンダース —マーク・マンダースの不在」(レポート記事はこちら→https://note.com/qqwertyupoiu/n/n032e2b3fa947#yOCfR)が、緊急事態宣言により1ヶ月の会期短縮となったことを受け特別に企画されたもので、「保管と展示」のコンセプトのもと26点が展示される。(屋外に展示している《2つの動かない頭部》を含む)

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「MOTコレクション Journals 日々、記す/特別展示:マーク・マンダース 保管と展示」マーク・マンダース 展示風景

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「MOTコレクション Journals 日々、記す/特別展示:マーク・マンダース 保管と展示」マーク・マンダース 展示風景

出品作家は大岩オスカール、河原温、島袋道浩、竹内公太、Chim↑Pom、照屋勇賢、蜷川実花、平田実、三宅砂織、指差し作業員、マーク・マンダースほか。


基本情報
https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/mot-collection-210717/
会期 2021年7月17日(土)- 2021年10月17日(日)
休館日 月曜日(7/26、8/2、8/9、8/30、9/20は開館)、8/10、9/21 
※臨時開館については https://www.mot-art-museum.jp/news/2021/07/20210701103734/
開館時間 10:00-18:00(展示室入場は閉館の30分前まで)
観覧料 一般500円/ 大学生・専門学校生400円/高校生・65歳以上250円/ 中学生以下無料
※ 企画展「GENKYO 横尾忠則  原郷から幻境へ、そして現況は?」「MOTアニュアル2021  海、リビングルーム、頭蓋骨」のチケットでMOTコレクションも観覧可
東京都現代美術館 コレクション展示室 1F / 3F

TOP画像:「GENKYO 横尾忠則 原郷から幻境へ、そして現況は?」展示風景
撮影:平間貴大

平間貴大
1983年生まれ。グループ新・方法(2010-2019)。野方ハイツメンバー(2015-)。人工知能美学芸術研究会の発起人(2016)。EBUNEメンバー(2019-)。

レビューとレポート第27号(2021年8月)

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