見出し画像

ドワーフ大戦奇~鉄風ルククの帰還~ 第一話

記号解説
【】=ページの指定です。
※=演出指示や情景描写です。
・=モノローグです。

登場種族紹介
ドワーフ
小柄で頑強な肉体の亜人類。製鉄に優れ山岳地帯に広く分布する。土侯とよばれる君主を頂く小国群が十数乱立しており統一国家をもたない。鉱山奴隷としての需要が高い。姓の概念を持たず氏族名を姓の代わりに名乗る。エルフとは国境間の小競り合いなどから長年の対立関係にある。

エルフ
長命で長身痩躯が特徴の亜人類で主に森林地帯に分布。古の魔導技術に優れることから奴隷となっても比較的知的労働に就く場合が多いことと
他の亜人類と比べて容姿が人類に近いことから他の亜人類より優遇して名誉人類として扱うことで分断統治に利用されてている。容姿の美しさから男女問わず性奴隷としての需要が高い。人類とは違い姓名が上で下に個人名が続く。

ホビット
小柄で毛深いことが特徴の亜人類。生活圏が比較的人類と被っていることから人類との交流が多く、身体能力がさほど高くないことから人類から脅威とはさほど見なされず、人類の経済活動に組み込まれていることから差別されながらもドワーフやエルフほどの決定的な搾取は受けていない。

人間
作品世界の主要種族。繁殖力が高く適応能力が高く全世界で繁栄している。大陸の人口比は人間が9割、亜人が1割である。宗教はロドゥルガ大陸発祥の一神教が主流で、アニミズム中心の亜人たちを差別する一つの要因にもなっている。

【1p】
※タンブルウィードが転がり、砂塵が舞う荒野の中、一台の青い外装で大型の駅馬車がやってきます。

【2p】
※州検問所の前に干からびたドワーフやエルフ、ホビットの死体が串刺しで見せしめにされています。
【逃亡した短足に死を!】
【ひ弱な耳長はすぐに捕まる!】
【すばしっこい小人は射撃の練習に最適!】
※干からびた死体には首からヘイトメッセージが書かれた板がぶら下げられていて、亜人差別の根深さを印象付けます。
※エルフの長い耳やドワーフやホビットなど種族の体格の違いを強調します。

【3p】
・ロドゥルガ帝国 マドロール州 州境検問所
※青い外装の大型の駅馬車が検問所に到着して警備員らが駅馬車の荷物を改めます。
警備長「運搬業者か?荷物を改める」
※警備蝶に話しかけられた御者の青年ハンスが返事をする。
ハンス「お願いします」
警備員A「おい!短足ババア!とっとと下りろ!仕事の邪魔だろうが!」
※荷台のルククをしっしっと野良犬に接するような態度にハンスが憤慨します。
ハンス「やめろ!彼女は自由民だ」
警備員A「知った事か!短足は短足だろ、目障りこの上ないぜ!」
※警備員Aは心底不快そうに地面に唾を吐きます。
ルクク「まったく、相変わらず人間のガキは礼儀ってもんを知らないね」
※ルククは相手にするのも馬鹿らしいという顔で、布に包まれた戦槌を担いで荷台から飛び降ります。

【p4】
※駅馬車の荷台に乗っていたハンスとルククが下りると警備員が3人がやってきて荷物を検品していきます。
警備員B「ん?これはなんだ」
※ワイン樽や衣類が入った木箱など調べていくうちに、警備員の一人が馬車の床に違和感を覚える。

【5p】
警備員B「警備長、こちらへ……これはひょっとして床が二重底ではないですか?」
警備長「ん?これは怪しいなぁ」
※警備長がどれどれと中を窺おうとするとハンスが飛んでやってくきます。
ハンス「すいません。州の定める積載量以上のモノを積んでおりまして……」
※ぺこぺこと頭を下げながら警備員長に耳打ちをします。

【6p】
警備長「ほぉ、違反と分かって見逃すわけにはいかないな」
ハンス「これ、わたし個人の気持ちです」
※卑屈な態度を装い警備長の袖口に丸めた紙幣を捩じり込む。
警備長「ふむふむ……この内容であれば、問題ないな。通ってよし!」
※紙幣の数が納得にいくものだと知った警備長はハンスたちを通します。いつもの悪い癖と部下の警備員は呆れた顔で見送る。
ルクク「かはは!話の分かるやつでよかったな」
ハンス「本当に世の中俗物だらけで助かってるよ」

【7p】
※州境を超えた馬車は州境近くの街へと入り、商店に物資を納品すると町の外に場所を止めてハンスはほっと一息つきます。駅馬車の二重底になった荷台の下を覗き込みパンとワインを差しいれる。
ハンス「お疲れ!第一関門突破だ」

【8p】
※馬車の中にはエルフやドワーフ、ホビットなどの亜人奴隷たちが身を寄せ合っています。
エルフ青年「やっと食事の時間か……」
ドワーフの老人「港町までは長いが……今は今日の糧に感謝しよう」
ホビット(母)「早くこの子に自由な環境を与えてやりたい」
ホビット(女の子)「はぐはぐっ!」
ハンス「ゆっくり食べてくれ、オレとルククが交代で外で見張ってるから荷台で寝てくれ」

【9p】
※早朝から拳銃の早撃ちの練習をするハンスの前にルククが剃刀で髭を剃りながら声を掛けます。
ルクク「おはよう!精が出るねぇ」
ハンス「臆病なだけさ。追い剥ぎに賞金稼ぎ、魔物の群れ、荒野は危険がいっぱいだからね」
ルクク「そんときゃ、あたしの自慢の戦槌でモノを言わせてやるさね」
ハンス「本部が直々につけてくれた用心棒だからな。期待してるよ」

【10p】
ハンス「そろそろ、出発だ。賞金稼ぎ達は鼻が良い。特に悪名高い”ホーランド一味”はな」
ルクク「ホーランド一味……賞金稼ぎ……奴隷捕獲人共だね」
※考え事をしている時の癖でルククは口ひげを扱きます。

【11p】
ハンス「娘さん、無事に見つかると良いんだが……」
※心底同情するハンスの顔がおかしくてルククはかははと豪快に笑います。
ルクク「がははははっ!そんなしみったれた顔すんなよ。このルクク様の娘だぞ!生きてるに決まってらぁ!」
ジョージ「見つかるといいな。よし、朝飯の後に出発だ」

【12p】
※ここで場面転換をして、マドロール州境検問所へ。ハンスから賄賂を貰った警備長は鼻歌を歌いながら思わぬ臨時収入を休日に酒場でぱーっとやろうかと考えていると馬に乗った数十人の柄の悪い男たちが州境の検問所へとやってます。
警備長「な、なんだ!誰が来た!」
※警備長は無数の馬の蹄の音に血相を変えて、検問所の外に出ます。

【13p】【14p】
※検問所の前にはならず者たち数十人がずらりと並んでいます。
警備長「お、お前たちは……ホーランドの……!」
※警備長は検問所につるされた逃亡奴隷の死体を見上げると。激しく抵抗して殺害して見せしめにされた逃亡奴隷の首から下げた木札のヘイトメッセ―ジの下には”ホーランド一味の獲物”と書かれています。

警備員C「あの先頭の男”トマホークのジョー”じゃないですか?」
※十本以上の手斧をベストに下げた男を見てホーランド一味の兄貴分の一人であるジョーであると確信します。
ジョー「へへっ!俺も真面目な働きぶりが報われて名前が売れてきたな」

【15p】
ジョー「単刀直入に言うぜ。昨日、ここに青い駅馬車が来なかったか?」
警備員A「!あの短足のババアと眼鏡のガキが乗ってたやつか」
ジョー「おっ!やっぱりな、その駅馬車が逃亡奴隷を東部に密輸してるって話でよ。荷物検査で怪しい所はなかったかい?」
警備長「んむ、小柄なドワーフやホビットが隠れられるような木箱や樽はすべて改めたが……」
※バツの悪そうな顔をして誤魔化すが、事情を察した警備員は苦虫を噛み潰したような顔をします。

【16p】
ジョー「へへ、そういうことかい。まぁ、いい。連中の次の行先はヴィズベルの街だな」
警備員B「えぇ、そんな話をしていました」
警備員A「確か今日の早朝にこの町を出発したはずだ」
ジョー「なるほど、そこが連中の次の”駅”だな。よし!いくぞ、おめーら!」
※ならず者たちが雄たけびで応えます。

【17p】
荒野を行く駅馬車の中でハンスはスナブノーズ(短銃身)のリボルバー拳銃をホルスター越しにしきりに撫で上げています。
ルクク「緊張感があるは結構だけど、終始気を張ってるとこの先、持たないよ」
※荷台で寝っ転がるルククの度胸に感心します。
ハンス「ここは追い剥ぎが出るらしいから、いつ囲まれるかと考えると落ち着かなくて」

【18p】
ルクク「心配性だね。でも、悪い予感って言うのは案外、当たったりするもんさ……んっ?」
※真顔になったルククが隣に立てかけておいた戦槌に手を掛けます。

【19p】
※無数の馬の蹄の音が聞こえ荒野の向こう側から賞金稼ぎたちが駅馬車を猛追します。
ハンス「追い剥ぎ?いや、賞金稼ぎか!十……二十、三十人近くいる!!」
ジョージ「ダメだ!こうなったら追いつかれる!」
ハンス「くそっ!」
※慌ててスナブノーズの拳銃を構えますが、ルククに制されます。
ルクク「その銃じゃ連中まで届かないよ」

【p20】
ドワーフの老人「お若いの、儂を下ろしなされ」
※布を巻いた杖を片手にドワーフが床下からごそごそと這い出てきます。
ルクク「じーさん一人下ろしたくらいじゃ、あいつらはとてもまけないよ」
ドワーフの老人「見くびるんでないわ。わしもかつてドワーフの武者じゃった。人間の若造どもごときに負けわせん!」

【21p】
馬車から飛び出し、悠然と歩いてくるドワーフの老人を賞金稼ぎ達は嘲笑います。
賞金首A「ぎゃはは!あの短足ジジイ、よっぽど死にたいらしいな!」
ジョー「待て待てっ!あのジジイの鍛冶の腕は惜しいから生け捕りにしろって話だから適当に痛めつけてふん縛れ!」
※投げ縄の準備をして自分を取り囲もうとする賞金首をよそに老人は杖に巻き付けた布を取り払います。

【22p】
※杖はたちまち可変して長大なピッケルに変化します。
賞金首A「なっ!……わぁぁぁっ!」
※ピッケルで服を引っかけて賞金首Aを引き下ろし、ピッケルを賞金首Aに振り下ろして頭をかち割ります。

【23p】
賞金首B「このジジイ!」
賞金首C「ぶっ殺す!」
※拳銃を連射しますがピッケルで持ち上げた賞金首Aの死体を盾にして防ぎます。
※ぼろ雑巾同然になった賞金首Aの死体を投げつけます。

【24p】
賞金首B&C「うわあぁぁぁぁっ!」
ジョー「足だ!足を狙え!」
※ジョーの指示で賞金稼ぎたちは一斉にドワーフの老人の足に狙いを定める、小柄で歳不相応に身軽なドワーフの老人に一発も当てることができず、ジョーの手下たちは無為に弾丸を消費していきます。
ドワーフの老人「ふん、鎖につながれている間も鍛錬だけは欠かさなかった」
ピッケルの鉤でジョーの手下たちに引っ掛かけて落馬させて頭をかち割りあっという間に5人を始末したところで、ドワーフの老人の死角から虚をついて投げ斧の連発がくる。

【25p】
ドワーフの老人「ぐっ……!」
斧の一本が深々とドワーフの老人の大腿に食い込み膝をつく。
ジョー「ビンゴ!息切れの瞬間を狙った!あともう少し若かったらどうなってたか分からねぇな」
※顎で手下たちに捕縛を指示して老人を拘束する。
ジョー「あの馬車には眼鏡の青二才と、あとはもやしのエルフの魔導学者と変態地主の慰み者になってたホビットの親子だけだ。六人もやれば片が付く。これで今回の仕事は一丁上がりだっ!」
ルクク「おいおい、あたしのことは除け者かい?」

【26p】
ジョー「あー?なんだよ短足おばさん、あんたはターゲットじゃないからお呼びじゃないんだよ」
賞金首D「捕まえて奴隷として売っちまえばどーすか?中年の女ドワーフなんて大した値はつきそうもないっすけど」
賞金首E「仲間が5人もやられてるんだ。少しでも金にしないと割に合わないよな」
ルクク「あー人間はやだねぇ。人を見るなり値踏みして、本当に下品だよ」
ジョー「随分と余裕だな。腕に覚えでもあんのかぁ?」
※ドワーフの老人の大立ち回りに危機感を覚えて手斧に手を掛けます。

【27p】
ルクク「じーさんがある程度人数減らしてくれたから、ちゃちゃっと掃除するかね」
※ばさりと布を取り払い、戦槌を見せつけます。

【28p】
※複雑な機構を搭載した異形の仕掛け戦槌”風車”の異様に賞金首たちが戦慄します。
賞金首一同「な、なんだありゃ!」
※石突の取っ手を引っ張ると戦槌からエンジン音が聞えます。
ルクク「さぁて、死ぬ前にこのルククの得意技を見せてしんぜようかね。地獄への良い手見上げになるさ」
※ルククがコマのように回り出すとジョーの顔が青ざめます。
ジョー「ボサッとするな!こいつから離れろ!早く……」
※ロケットブースターの噴射が始まり凄まじい回転と共に、賞金稼ぎの群れに突っ込みます。

【29p】【30p】
※ルククの秘技"鉄風"が炸裂する様を賞金稼ぎが粉砕され血や臓物をぶちまける阿鼻叫喚の地獄絵図を見開きで派手に描きます。

【31p】
※ルククの鉄風から辛うじて逃れたジョーが手斧を投げます。
ジョー「お、おらぁ!」
※しかし、斧は”鉄風”の回転に弾き飛ばされ、逆に二の腕を斧がかすって血が飛沫を上げます。
ジョー「くそっ!近づけねぇ!」
※袖を破って傷口に巻いて止血をしつつ、鉄風が終わるまでルククから一定の距離を取り、攻撃の機会を伺います。

【32p】
ジョー「よし!今だ!」
※ロケットの噴射が終わったタイミングで斧を四本連続で投げますが、四つの内三つは風車で弾き飛ばし一つは手で掴み取
り投げ返します。
ルクク「ちっっっさい斧だねぇ!あたし好みじゃないから返すよ!」
※投げ返した手斧はジョーの方肩を深々と抉り、落馬します。
ジョー「ぎゃっ!ぐぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

【33p】
ジョー「このクソババアー!!」
※懐から出した拳銃を乱射します!
ルクク「投げ斧の腕は見上げたもんだけど、銃はまだまだ練習が必要みたいだね」
ルクク「あんたがもう少し年取ってたら、危なかったかもね!」
ジョー「や、やめっ!ぐぎゃ!」
※風車を振り下ろしてジョーの頭を叩き潰して絶命させます。

【p34】
賞金稼ぎF「そんな、ジョーの兄貴……ぎゃっ!」
※ハンスに両肩を撃ち抜かれて、賞金稼ぎFが落馬します。
賞金稼ぎG「こいつなんて早撃ちだよ!こっちは六人いたのにもう俺一人……あの短足女といい付き合ってられねぇよ!」
※戦意を完全に喪失した賞金稼ぎGは一目散に離脱します。
ハンス「くそ、弾が……」
賞金稼ぎG「覚えてろよ!ビルの大兄貴がくれば、お前ら何て一網打尽だ!」
※駅馬車に隠れてリロードして顔を出すも、すでに賞金稼ぎGはスナブノーズの銃の射程圏外で銃を下ろします。

【p35】
ハンス「これでホーランド一味に顔を知られた……厄介なことになるな」
青年エルフ「あのドワーフの女傑がいれば大丈夫じゃないか?」
※追手の迎撃に出たハンスの代わりに荷台の下から這い出てきて御者を代行したエルフ青年がルククの力を目の当たりにして呆気に取られています。

【p36】
※賞金稼ぎの死屍累々の中でドワーフの老人はピッケルを杖に立ち上がります。
ドワーフの老人「この絶技……ひょっとしてお前さん、あの”鉄風ルクク”か?帝国の正規軍に孤軍奮闘したという……ルククは
ドワーフではありふれた名前だから気付かんかった……」
※信じられないという表情でルククを見ます。
ルクク「鉄風ルククねぇ。んふふ。昔のことだから忘れちまったね」

【p37】
ルクク「今は、生き別れた娘を探すだけのただ母親さ」
※快晴の青空の下、風車を方で担いで微笑みを浮かべます。

つづく

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?