【STORY9】都合のいいひと
とにかく体力の回復を目指すのみ。
血流をあげる、鉄を補うためにサプリや漢方を服用し、
あとは外に出なければという思いもありました。
でも、彼氏には抱えきれないと言われたものでそんなものはいらない。
病人扱いされたり、自分の状況を説明しないといけないので友だちとも会いたくない。
それでも誰かと話さないと、というところから、
私は「都合のいいひと」を探すことになります。
なんとこのご時世、マッチングアプリという非常に便利なものがありました。
恋人や結婚相手を本気で探している人に会うと罪悪感があったため、
お相手からも「都合のいいひと」として活動することになります。
いわゆる、パパ活。
誰にでも体を売るというものではありません。
都合のいいときに外に出れておいしいごはんが食べれて喋れて血流あがってお小遣いがもらえる
私にとって、メリットしかないものでした。
このお小遣いは治療費になるわけで、
まったくの罪悪感もないわけです。
仕事ができなくなった体、一円も稼ぐことができなくなった生産性のないこの体に何の価値もないと感じていた私にとって、
唯一まだ価値があると感じられたのだと思います。
私が一番楽しかったのは、お相手がなぜここに登録したのかというおはなし。
・家庭をかえりみず仕事だけに没頭してきたが、妻が不倫をしていた
・こどもの障がいを自分の家系のせいにされた
・サードスペースがほしかった
・家庭に居場所がない
・女性から詐欺にあった
など。
医者、経営者、公務員、金融、システム系、宇宙系(←ぇ)・・・
いろいろな人に会いました。
今考えてみると、
あれは食事付きカウンセリングだったと感じます。
(きれいにまとめすぎか・・・)
知らない人に騙されないようにと力を入れて上京していた私でしたが、
一応みんなおなじ人間でした。
力は抜けていっていました。
そして調子に乗っていると、
ちゃんとこの活動が出来なくなるのですね。
減薬してみるとまた動けなくなり、
そのうえ、
コロナがやってくるのです。
つづく。
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