男の言い訳は長い
そこそこ名の売れたカントリーソングの作詞家ウェイン・カーソンは、歌詞が2行しか浮かばず、どんよりしていた。
そこへ、新しい仕事の依頼。出張は、あと10日必要になった。
恋人に電話。思った通り彼女は不機嫌になった。「でも、ずっとキミのことを思い続けているよ」と言って、彼女の怒りをおさめた。
電話を切って思った。これは歌詞に使える。しかし、ウェインは、これ以上、ひらめかない。
恋人とのこの種のトラブルは、他人事ではない。作詞家仲間の二人が加わってくれた。
「これって、男の長い長い言い訳だよね」と苦笑いしながらの打合せになった。
4度のすり合わせで、なんとか歌詞が出来上がった。
「always on my mind」は、1983年の多くの歌曲賞を獲得した。3名の作詞家が名を連ねた受賞作は珍しかった。
コンサートツアーで旅が多いカントリー歌手の大御所ウイリー・ネルソンも、大いに共感してくれた。その上、グラミー賞まで獲得して話題になった。
”いつもキミのことを思っている”という言葉に思い当たるふしがあり、この曲を
カバーしている歌手はとても多い。
ペットショップボーイズ、エルビス・プレスリー、スーザン・ボイル、シャキーラ、ボン・ジョビ、マイケル・ブブレ、アン・マレー、ケニー・ロジャースなど、長い間、巡業で家を空けるアーティストが、各々の解釈で感情移入しながら歌っている。これらを聴きくらべるだけでも興味が湧く。
「仕事と私と、どちらが大事なの」という不滅の問いに耐えていたウェインは、
大勢の歌手たちが「キミをひとりにしないよ」と言ってくれているようで、うれしかった。
ここまで、お読みいただきありがとうございます。
長い間、家を空けていた者として、つい:
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