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場の量子論の「場」とは

場の量子論を初めて学んだとき、「場」という概念が分からなかった。波動関数に似ているが関数でなく演算子だという場φが出てきて、波動関数で成立していた絶対値の二乗が観測確率だというわかりやすい関係はもはや成り立たない。

何冊も場の量子論の本を読んで自分の中で整理してきた。ようやく、「場」がなんなのかわかった感じがしたのでこのノートにまとめる。

場の量子論とは端的に言えば、場を量子力学で論じた理論だ。場とは時空の各点で定まった値を持つ関数である。例えば水面に立つ波を想像すると、波の波高φは時刻と位置の関数として記述できる。従ってφは場である。φは運動方程式に従って時間発展する。水面の場合は減衰のある波動関数で記述できるだろう。周りを見渡せば至る所に場やそれを媒介して存在する波動(or 拡散)現象がある。ロープの振動、音、温度分布etc. 

それらの場を量子力学で扱うと、様々な振動モードの量子力学的な「重ね合わせ」が生じたり、1粒子量子力学でみられた零点振動が場にも生じるのではないかと予想できる。実際そういうことが起こる。場の量子論とはつまり、1粒子量子力学を拡張して、場も量子力学的に論じようとする理論である。場の量子論の応用として重要なのが物性論と素粒子論である。物性理論には様々な場が登場する。金属の中の原子核を伝搬していく波(フォノン)が一例である。一方で素粒子論では素粒子の正体は場の励起であるとする。例えば、私たちが電子を観測するとき、電子は真空の中にポツンと存在しているのではなく、時空を埋めつくしている「電子の場」がぴょこんと励起したものを見ているという。真空は何も無い空間ではなく、「電子の場」や「ニュートリノの場」、「クオークの場」などのたくさんの場を含んでいるという。

話を戻すと、場はどのように量子化すれば良いだろうか?実スカラー場(値域が実数である場)を考える。空間を離散化すると、実スカラー場の時間発展は、格子点各点に存在する1次元量子状態の時間発展と考えることができる。1次元量子状態の「位置」を実スカラー場の値に対応させるわけである。

場の演算子φとは空間各点の1次元量子状態の位置演算子をテンソル積で掛け合わせたものである。φに共役な場の運動量演算子πは空間各点の1次元量子状態の運動量演算子をテンソル積で掛け合わせたものである。このように定義したφとπは第2量子化の交換関係を満たしている。

これが場の演算子の正体である。ほとんどの場の量子論の教科書では古典的な場のφとπに交換関係を課して第2量子化しているが、個人的にはこのように場を離散化してφとπを定義した方がわかりやすいと思っている。

ただし、連続的な場の理論にするためには格子点の数を無限にまで増やさないといけないが、格子点を1つ増やす度にφとπが住んでいるヒルベルト空間が変わってしまうので、極限がwell-definedでないという問題がある。最初から連続的な場をそのまま量子化するという教科書に載っている方法が数学的には妥当だが、その結果φやπの意味が分かりにくくなってしまい、僕みたいななかなか場の量子論が理解できない人がでてくる。

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