春は曙 第68幕
春は 曙
やうやう白くなりゆく 山際すこしあかりて
紫立ちたる雲の細くたなびきたる
夏は夜
月の頃はさらなり 闇もなほ 蛍の多く飛びちがひたる
また ただ一つ二つなど ほのかにうち光りて行くもをかし
雨など降るもをかし
秋は夕暮れ
夕日のさして 山の端いと近うなりたるに
烏のねどこへ行くとて 三つ四つ 二つ三つなど飛び急ぐさへあはれなり
まいて雁などのつらねたるが いと小さく見ゆるは いとをかし
日入りはてて 風の音 蟲の音など はたいふべきにあらず
冬はつとめて
雪の降りたるは いふべきにもあらず
霜のいと白きも また さらでもいと寒きに
火など急ぎおこして 炭持てわたるも いとつきづきし
昼になりて ぬるくゆるびもていけば
火桶の火も白き灰がちになりてわろし
ご存じ、清少納言が書いた枕草子の第一章『春は曙』の部分ですね。
私は、なぜか、春が近づくと、枕草子のこの冒頭の詩を思い出します。
古文の授業で、暗記させられましたから。笑。
現代語訳すると、以下の様な意味になります。
春は曙が良い
徐々に白くなっていく 山に接している空が少し明るくなって
紫がかった雲が細くたなびいているその景色が良いのだ
夏は夜が良い
満月の頃は言うまでもなく 新月の頃であっても
蛍が飛びちがっているその景色が良いのだ
また ただ一匹二匹などと ほのかに光って飛んで行くのも趣がある
雨などが降るのも良い
秋は夕暮れが良い
夕日がさして山の端に大変近くなっているところに 烏がねぐらへ行こうとして
三羽四羽 二羽三羽などと飛び急ぐ そんな様子さえもしみじみとした情緒がある
まして 雁などの連なって飛んでいるのが 非常に小さく見えるのは 大変趣が深い
日が暮れてから聞こえてくる 風の音や虫の音なども また言うまでもないことである
冬は早朝が良い
雪が降っている朝は言うまでもなく 霜が大変白い朝も またそうでなくても
非常に寒い朝に火などを急いでおこして 炭を持って運びまわるのも 大変似つかわしい
しかし 昼になって 寒さが緩んでくると 火桶の火も白い灰がちになって良くない
1.枕草子
枕草子は、平安の中期、1001年頃、清少納言が書いた約300の章からなる随筆です。
「枕草子」は、兼好法師の「徒然草」、鴨長明の「方丈記」と並ぶ日本三代随筆の一つに数えられているのです。
2.清少納言
清少納言が生まれたのは、966年頃とされます。
身分はあまり高くなかった受領階級の娘として生まれます。
歌人として活躍した家系で、父は、後撰和歌集の撰者でもある清原元輔です。
清少納言は、父の才能を受け継いだのでしょう。
16歳の頃、橘則光と結婚し、則長を産みます。
そして、993年、30歳頃に、一条天皇の妃である中宮定子に仕えるため、宮中に出仕しました。
定子から貴重な紙を貰ったのが、枕草子を書くきっかけとなります。
密かに書かれていた「枕草子」は、左中将 源経房が訪れた際にこの本を借り周囲の人に読ませたことで、世間に広まって行きました。
「枕草子」は、清少納言が宮仕をした7年間に書かれた随筆なのです。
3.枕草子はどこか俯瞰した位置から眺めて書かれた随筆である
「枕草子」は、四季を、日常を、淡々と、まるで俯瞰した位置から冷静に眺めた情景を描いているように感じるのは、私だけでしょうか?
美しい情景が浮かんできます。
清少納言は、決して幸せな一生を送ったわけではありません。
それを微塵も感じさせない点は、感嘆しますね。
辛さを感じさせず、むしろ明るく書いています。
4.何故、枕草子に惹かれるのか
私は、何故か、春になると『枕草子』の第一章『春は曙』の詩が頭の中に浮かんできます。すごく詩に惹かれている自分がいるのです。
しかも、何故今、ここでnoteの題材として選んだのでしょうか?
私が、noteで、詩を書き始めて、『ハタ』と気づいたことがあります。
おこがましい話ですが、私の詩の雰囲気がどことなく、『枕草子』に似ている気がしてきました。似せて書こうとはしていなかったのですが?
私が、noteの投稿を始めたのが、昨年の12月9日です。何故か、急に、noteに投稿してみたくなって始めてしまいました。
実は、11月25日から27日に、高千穂・阿蘇に息子と旅行に行き、阿蘇内牧温泉の『蘇山郷』さんに宿泊していました。『蘇山郷』さんには、歌人の与謝野鉄幹様・晶子様ご夫婦も泊まられたことがあるため、これは、私に、noteの指導霊としてお二方が付いて頂いたのかと思っていました。
今回、『枕草子』を題材として選んだのは、新たに指導霊として『清少納言』様が付いて頂いたのかと思っています。
ありがたいことです。笑。
清少納言様の様に、人生を嘆かず、むしろ明るく捉える姿勢、大事です。
そして、俯瞰して眺めることで、ブレない自分を保つことができるのです。
さあ、ブレない自分を保ち、明るく生きて行きましょう。
明日は、きっと幸せが、奇跡が起こることでしょう。
いつも、ご覧いただきまして、ありがとうございます。
スキやフォロー、コメント等をいただきまして、ありがとうございます。
では、また次のnoteで、お会いしましょう。