ガハハ!スイカあるだろ!スイカ!知ってるか?スイカ!あの黒いシマシマ!あれジ〜ッと見てると俺に見えてくるぞ!見てみろ!ほら!な?見えねぇだろ?見える訳ねぇんだ!
角を曲がるとパンを咥えて走ってきていた平成とぶつかってしまった。平成は倒れた拍子に鞄の中に入っていた30年を道路にぶち撒けてしまった。私は「大丈夫ですか?」と尋ねたが、平成は道路に散らばる30年を掻き集めて鞄に詰め込み、私に目もくれず走り去った。私は平成が落としていった食べかけのパンを拾って食べた。
空に逆さになった桜が浮かんでいた。何処から生えているとかではなく、ただ花を満開に咲かせた桜が何本も屋根の高さくらいの位置に逆さになって浮かんでいる。ただ立ち尽くしていた私の横で通りすがりのお婆さんが「珍しい。逆さ桜だよ。あんたは運が良いね」と私に言い、鈴を二度鳴らして歩き去った。