韓国の人名・地名表記はカタカナ主体にすべきである
現在、新聞・テレビ報道において韓国の人名・地名は漢字が使われている。そしてその読み方として最初に出てきたものにだけカタカナのルビが振られている。昔は、韓国の人名・地名もその漢字を日本語読みにしていたものだが、やはりその国の発音に合わせるべきだという考え方のもとに変わってきたのだと思う。例えば金日成、金大中が「キン・ニッセイ」「キン・ダイチュウ」から「キム・イルソン」「キム・デジュン」に変わったようにである。それはそれで正しいと思うが、当然、漢字を見ただけでは日本人には読めない。それで上記のルビということになるのだが、新聞など小さすぎてとても読みにくいし、しかも最初の一語にだけついているので、なんども出てきても読めはしない。しかも小さいカタカナルビなので、ひらがなルビよりもっと読みにくい。テレビでは音声があるので覚えることも比較的やさしいが、新聞は最初の一語のルビで覚えろと言っているのであり、あまりにも不親切である。
ただテレビではNHKのみがちょっと以前(2年くらい前?)から、「ムン・ジェイン(文在寅)」というようにカタカナ主体の表示になっている。ようやく改める気になったと思い、近々に他局や新聞各紙も追随するのだろうなと、喜んでいたところ、いつまでたっても従来のままである。その国の発音に合わせる、と韓国に敬意を表しているように見せて、読者の利便を無視しつつ日本人に親近の漢字に習慣的にこだわっている姿は、馬鹿馬鹿しい限りである。
ところで改めて、韓国の漢字事情はどうなっているのか多少調べてみた。戦後、法的にもハングルを主体とすることが決定され、1948年の「ハングル専用法」以来、多少の紆余曲折を経ながら次々と漢字に関する制限が強まり、2000年に漢字教育の義務化も廃止されて、現在では全く漢字の読めない「ハングル世代」という人も多数いるようである。2005年には「国語基本法」が制定され、それまでは認められていた公文書における漢字のカッコ内使用も、ほんの一部のものに限られるようになった。徐々に漢字使用頻度が減少していき、現在、日常生活においてはほとんどハングルだけと言っていい状態になっていることが分かる。韓国に行ったことがある人には周知だろうが、映画の画面を見ても街の風景にも各種書類にも漢字はほとんど出てこないことが分かる。
但し、漢字がなくなっていくわけではなく、韓国内では漢字復活論も根強くあって、漢字に関する多様な意見が交わされているらしい。漢字復活論者の言う漢字のメリットとは、「韓国語の語彙の60~70%は漢字語であり、表意文字としての漢字を使えば理解が深まる。」「現実問題として、ハングルでの同音異義語の判別が容易になる。」「日本、中国、台湾、シンガポールなどの漢字使用国との国際交流に役立つ」というものである。したがって現状では学校教育でも漢字は、選択科目、第二外国語的な扱いで行われている。今後、漢字の扱い方がどの程度強まるが弱まるかは定かではないが、圧倒的にハングルが中心という形に変わりはないであろう。
これらを踏まえて先述の繰り返しになるが、日本の新聞、テレビなどが現状の表記方法にこだわる理由が全く分からない。まさか韓国の漢字復活論者の言う「国際交流」を見据えて、というわけでもなかろう。特にひどいのが新聞であるが、ルビをつけるなら最初の一語だけでなく後で出てくる文字全てにつけるべきであろう。読みにくい日本語に対するルビなら最初の一語で覚えることも容易だが、韓国語はそうはいかない。本来、韓国の実情を考えれば、漢字を無くしてカタカナだけても良いはずであり、現にどういうわけか、プロゴルファーや映画俳優の名前はそういう扱いになっている。どうしても漢字を使用したいのであれば、ルビでなくカッコ使用の併記にするべきであり、カタカナを先にするNHK方式が望ましいのは明らかである。
余談ながら、新聞社の編集委員が書いた書籍も新聞と同じ表記になっていて、それを読む時、大勢出てくる名前をとても覚えられないから、個人的には「ぶん・ざいとら」「きん・しょうおん」などと日本語読みで通して読んだものである。
なお、北朝鮮では韓国以上に漢字が制限されているようである。
また、ついでに言えば、中国人・台湾人の人名も現在は日本語読みにされていて、それでO.K.となっているようだが(難しい漢字には日本語読みのルビまで降ってある)、やがては例えば習近平が「シュウ・キンペイ」から「シー・チンピン」というように現地の発音に合わせるように変わっていくのであろうか。
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