あまりにセコ過ぎるシネコンの座席レイアウト
今やすっかり映画館市場を席巻してしまったシネコンだが、その座席レイアウトについてである。昔からの映画館を知っている人にはその差が一目瞭然で分かることだが、座席のレイアウトが大きく異なっている。そこそこの規模のスクリーンでの基本的なパターンとして、まず出入り口が前方の左右どちらか1か所のみであり、前後を結ぶ縦通路は左右両端のみである。そして最後尾(最上段)の席は後ろ側の壁に接している状態であり、最後尾の左右を結ぶ横通路はないのである。昔からの映画館では、最後尾の席の後ろに左右を結ぶ横通路があり、その後ろに出入り口があるのが普通であった。
このシネコンの席で起こる一番の問題は、上映中の途中退入場の時、出入り口と左右反対側に座っている場合に非常な不都合が発生することである。つまり、出入り口が前方左側にあり、座席が右側の場合、まず右端の通路に出てスクリーンに向かって前に進み、最前列の席の前を右端から左端まで歩かないと退場できないのである。誰も注目してはいないだろうが、全員の視線を浴びながら移動する感覚になってしまう。再入場の時はこの逆コースで同じ思いをしなければならない。観客全員にとっても、スクリーンの邪魔にはならないもののわずらわしい状態である。以前の、左右どちらかの通路を後ろに進むだけで出られたのとは大きな違いである。途中退場の予定がある場合、最後列の左右両端に座っていれば誰にも迷惑をかけないで出られたものである。際後列でなくても後ろのほうの端席ならほとんど迷惑にはならない。
もちろん、途中退場はエチケット違反であり、全くしないことが望ましい。自分では気を付けてトイレも済ませているので最近は1回も無いのだが、やはり、たまに途中退場する人はいる。高齢者になると、気を付けていても我慢できなくなることはあり、特に3時間くらいの長い映画の場合は問題である。また、トイレ以外にも緊急退場の必要が起こることも有るだろう。
シネコンが今のレイアウトにした理由は、当然よくわかる。最前列とスクリーンの間はどうしても一定間隔をとらなければならず、これを通路として利用して、他のスペースは極力席に充てて、席数を最大限にするということであろう。上記の問題に加えて、4年前のことだが左右のひとつながりの席数が20という映画館があった。したがって中央部分に座っていると、席同士の前後間隔も広くないので、左右どちらかに最低9人の膝頭とこすり合わせながらでないと出られないのである。上映開始前に遅く入場した場合も同様である。以前なら中央にもうひとつ縦通路を設けたところである。この映画館(有楽町のTOHOシネマズシャンテの1スクリーン)には2度と行っていない。経済効率一辺倒のレイアウトによって、昔からのゆったり映画を楽しむという感覚が大分奪われてしまった。
余談ながら、3年前に広島県に引っ越して来て素晴らしい映画緩を見つけたので報告したい。それは広島市八丁堀にある「サロンシネマ」である。124席と75席の2スクリーンだが、特に75席の「スクリーン2」の席が良い。椅子の手摺が単なる仕切りではなく、それぞれの椅子左右についており、幅が10cmくらいある。ソファ感覚で座り心地も良く、椅子同士の前後間隔もゆったりしている。上映作品もマイナーなものも含んでいて良いので、近隣の人には是非お勧めしたい。また、サロンシネマの通りの向かい側にある同経営の「八丁座・壱(166席)」も同様に良い。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?