赤ちゃんはオイタはしません

 生後数ヶ月の赤ちゃんのいる女性が「いたずらが激しくて」と笑ってる。
 
 目にとまったものを、あれこれ、つかむんでみる、口に入れてみることを、オトナは、いたずらだの、オイタだのと呼んでいる。

 だが、赤ん坊は、さしあたり、五感で世界を認識することを始めているのだ。目、鼻、耳は、離れたものを感じるが、手と口は、じかに、そのものに接触できる。母親のおっぱいが、赤ん坊の前に出て来たごく初期の世界。
 それを、いたずらとはなんだ、と、私は腹が立つ。この母親も愛情豊かな母親なんだろうに、こんなコトバの慣習をノーチェックで無批判に、刷り込まれるまま使ってしまっているということに、

 娘が赤ん坊だったころ、私は娘のすることは、けんきゅう、と呼ぶと、夫婦で決めた。
 かみさんは「それけんきゅうしちゃだめよ、パパだいじだいじ」とか言ってくれた。面白いことが好きなひとなので。ぼくの経験では、女性は面白いことが好きなものだ。

 ひとを大勢死なせる毒や兵器や放射能大量発生装置をつくるひとの仕事がケンキュウなのに、赤ん坊の大事な活動がイタズラなんて、ひどいと思いませんか。

 動物とおなじく、言葉をまだもたない赤ん坊は、それだけに、言葉を口にするオトナの心に反応すると思う。大事なケンキュウなのはわかるけど、やめてよ、と思うのと、どうせ知能未発達の者がするつまらない、邪魔なこと、と思いながら言うのとでは、言霊がちがうんだ。

 たぶん、オトナがいたずらなどと呼んで、イケナイことという雰囲気を感じさせるから、子どもは、そんじゃあ、そんなふうにやってやろうか、と、オトナの反応を愉しむようになる。悪への誘いです。

 かわいい、と思いながら、いたずら、おいた、などと言うひとが多いでしょうが、子どもはそれを聞いて、かわいい存在でいようとするようになるんじゃないか・・やっぱり、けんきゅうという言葉で、尊重する気持はこめたいと思う。あんまり、子どもには子ども子どもした色の言葉の服を着せないほうがいいだろうと。

 あ、それと、赤ん坊というのは、自分のしたいことしかしませんよね。すごいことですね。ぼくなんか、それに敬意?を持っちゃうもんで、かわいいどころではない。女性をやたらに、かわいい、なんて言う趣味?もないのと似てるかもしれない。

 もうひとつ、けんきゅうという言葉を使ったぼくのもくろみは、娘がちょっと大きくなれば、いろんなエラいおとながけんきゅうっていうことをしてる話を聞いて、わたしもやってる、と親しみを感じて、権威に対する物怖じなどしないといいな、という気持もあった。

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