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移民の格付けは正しいか?

TR;DL モラル的に人を格付けするのが正しいかどうかはわからないけど、政策として移民を分類して優先順位をつけるのは正しい。ちなみに海外旅行に行く日本人は全て移民ですよ!理由は本文で詳しく解説していますよ!

 日本では移民の是非が問題になっていますが、どうも色々と混同されている議論が多いように思います。それをうまく整理してくれたのがChikirinさんの「外国人労働者と移民と難民の違い」ですね。今日はこれをもうちょっと掘り下げてみたいと思います。

まず、国籍について理解しましょう

 移民について正しく理解をするには国籍について理解する必要があります。国籍を持つ人が国民で、それ以外は全て移民だからです。

 海外に住んでいると外国人としてその国で働くこと、働き続けることの意味を意識するようになります。国籍の決め方は親の国籍を重視する「血統主義」と生まれた土地を重視する「出生地主義」の二つがあります。日本は血統主義でアメリカは出生地主義ですね。アメリカで生まれた日本人が両親の子供は二つの国籍があるということになります。日本の法律上、一定の年齢に達したらどちらか選ばないといけないですが。

 日本人として生まれたら一生ずっと日本人というわけでもありません。例えば別の国籍の人と結婚したら国籍は選べますよね。あとシンガポールのように外国人でもシンガポールの国籍を得られる国もあります。オランダでも同様でした。

 このように国籍は変えられますし、国籍があればその国に好きなだけ住めるだけでなく、その国の法律に従って義務や権利が発生します。まあ、簡単にできることではないですね!ただ、日本人でも海外に旅行したりしますよね?その国に行くために国籍を変えなければいけないということになったら大変なので、そうならない仕組みがあります。それがビザです。出入国の時にパスポートに捺されるスタンプもビザなんですよ!

海外旅行は移民?

 日本の国籍を持つ日本人がハワイに旅行するとします。これって、広い意味では「ハワイへの移民」となります。「国民」と対する言葉が「移民」なので、アメリカの国籍を持っている人以外にハワイにいる人は旅行者を含めて全て移民です。出入国の時に出入国管理のところでパスポートチェックを受けますよね?イミグレと略されることもありますが、あれ、英語でImmigrationです。Immigrationは移民という意味です。

「え?旅行したら移民なの?大げさな!」と思いますか?ヨーロッパだとこれが普通の生活レベルでの定義ですよ。

 ヨーロッパで移民というとシリアからの難民やトルコの経済移民を思い出すでしょうが、オランダ人たちは日本人のボクもしっかり「移民」として認識していました!日本人は「問題を起こさない移民」なだけで、移民であることは変わりません。海外旅行が好きなのに「移民はけしからん!」と言っている人は注意しましょうね!みなさんも外国に行けば旅行者という名の移民ですから!

 このように移民というのはすごく幅の広い言葉なので、データを見るときはすごく注意が必要です。日本のデータは日本の定義の「移民」なので外国のデータと比べる時に同じ定義なのかを確認する必要があります。

移民の格付けと選別

 移民が表す範囲はすごく広いので、「移民の受け入れ」議論はまず移民の定義が大事なんです。だって海外旅行者まで含めれば日本はメッチャ移民を受け入れているってことになりますから!インバウンドを推進して絶賛移民受け入れ中ですよね。

 そういうわけで、まともな議論をするためには移民の定義が必要です。定義を明確にするのに役立つのは分類やランクづけですね。そして実際にほとんどの国は明確な分類やランクづけをしています。「中国が始める外国人「ランクづけ」 早稲田や慶応を卒業しても0点」という記事が話題になっていますが、ランクづけは当たり前に行われていることです。

 おそらく日本人以外がこの記事を読んでも「だから?」と思うでしょうし、大騒ぎする日本人が理解できないと思います。ビザの発行に関して学歴も考慮されますが、それほど比重は高くないです。それは中国でも同様で、この記事は騒ぎすぎです。日本で学歴が大事なのは(正しいかどうかは別として)理解できますが、外国にそれを求められても困ります。早稲田、慶応卒というのはビザ的にはそれほど意味はないです。

 例えばアメリカでグリーンカードを取得しようとしたら様々な条件がありますよね。早稲田や慶応を卒業したらグリーンカード取得が有利になるなんて聞いたことありません。

移民の格付け具体例(アメリカとシンガポール)

 アメリカではLとEという大きく二つの種類のビザがあります。EはLより敷居が低いですが、Eの資格を取るための制限があります。ボクの場合は日本人なんですが、会社がシンガポール法人なのでEの資格がありません。アメリカとしても格付けが高い人たちに多く来て欲しいので、このような国籍、実績、収入などに基づく分類を行なって、実際に制限をしています。

 シンガポールでもホワイトカラーのためのEmployment Passと専門職のS Pass、ブルーカラーのためのWork Permitと様々な種類があります。シンガポールは建設業やメイドなどの安い労働力は海外からの出稼ぎに依存していますので、そのためのビザが必要になるわけです。

 さらにその国にずっといて欲しい人材には永住権を提供します。アメリカではグリーンカードがこれにあたります。シンガポールではPRと呼ばれています。そしてこの永住権を取得するにはその国が求める人材である必要があります。やはり出稼ぎ労働者のビザから永住権までは相当長い道のりですよね。

移民から国民へ

 このように多くの国は移民を分類して、それぞれに適切なビザや居住許可を発行します。そして、その先には国籍の付与まであります。例えばアメリカから日本に留学して(留学ビザ)、就職して(就労ビザ)、長年住み続けて永住権(外国籍だが日本に住み続ける権利)、さらには帰化して日本国民になるなんてことはありますよね。この場合、アメリカ国籍を持つ人が移民として日本に滞在し、最終的に日本国籍になるというストーリーです。逆もあり得ますね。

 オランダでは市民権と呼ばれ、5年以上オランダに住み、税金を払い、オランダ語やオランダの文化についての試験にパスする必要があります。日本の国籍を失ってしまうことになりますが、日本人がオランダ人(オランダ国籍を持つ日本人)になるのは実はそれほど大変ではないんですよ!

 各国のビザの条件や永住権、国籍取得の条件はpassports.ioというサイトにまとめられているので、興味があったらチェックしてみましょう!

日本の場合はどうでしょうか?

 ボクは正直に言えば日本のことはよくわかりません。もう10年以上日本に住んでいないので。ただ、ボクが住んで来た国では「適切な分類に適切なビザを提供しましょうね」という極めて当たり前のことが政策として実行されていました。

 分類は大きく分けて以下の5種類でしょうか。

1. 旅行者

2. 学生(学生の期間のみ。その国が好きになったらその国で就職を探すこともある。4と5の予備軍)

3. 単純労働者(短期間滞在の場合が多い。出稼ぎなので、稼いだら帰る)

4. 専門職

5. 知的労働者(長期間滞在する場合が多い。会社の都合でいろんな国に赴任するけど、その国が好きになったら転職してでもい続ける)

 多くの国では5番の知的労働者が永住権に一番近いポジションじゃないでしょうか。ただ3番の単純労働者だからといってケアが不必要なわけではないですし、杜撰に扱っていいということもありません。それぞれに分類に適したケアは必要になるので、その社会的制度はきちんとしていますし、法律で守られています。

 日本の移民に関する議論はこのような分類をきちんとしていない点が残念です。日本だってきっと単純労働者はもっと必要だし、専門性の高い優秀な人材も欲しいですよね。それをメリハリをつけてどう誘致して育てるのかという議論が大事なんじゃないかと思いますよ!



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