見出し画像

『急に具合が悪くなる』

 宮野真生子氏(哲学者)と磯野真穂氏(人類学者)の往復書簡生物群さんのTwitterに流れていたのが妙に引っかかり、図書館にリクエストしてみた。

 病に関する専門家の意見が情報としていくらでも手に入るこの時代。玉石混交の中から正しいと思える情報を個々が判断して取り入れて知識とし、それは私たちの言動に反映される。鬱の人に「がんばれ」と言ってはいけないとか、死にたいと言っている人に「死ぬな」と言ってはいけないとか。
 しかし、一般的には正しくとも、受け取り方には個人差がある。心理学的な有意差のある無しはあくまでも統計的なものなのだ。

 言葉をかける人とかけられる人の性格や関係性、その時の感情の流れや話し方、環境などで受け取り方は少しづつ違うのだ。だから、一般的なマニュアルどおりにしたとしても、相手を傷つける可能性はおおいにある。ノンバーバルコミュニケーションで受け取る情報は、実際の会話以上に多い。

 奇しくも、宮野氏の人生の終わりが近づいた時に出会った二人。というよりは、宮野氏が見つけたのかもしれない。今この時、最も必要な相棒を。だからこそ、この本はこうして形になり、これからも読み続けられるし、宮野氏はどこかの誰かの心に生き続ける。この本に出会い、誰かの心に宮野氏の生命の火がぽっと灯ることもあるのだろう。

 婦人公論で桐野夏生氏は「支え合い、時に傷つけあってこその友人関係」と書かれていた。もうすぐ死んでしまうかもしれない友人を傷つけることはできるならしたくないことだけれど、私はその人に寄り添う覚悟で語りかけたい。

 今回は図書館で借りましたが、この本はこれからも読み返したくなると思うので、購入しようと思います。哲学ってこんな気持ちにさせるのですね。

 

 

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?