ボカコレ2023春考察

はじめの長ーい話

 本稿では「曲の良し悪し」に関しては一切触れません。そもそも、良し悪しというのは個人的主観的なことであり、客観性は一切なく、他人に強制できる類のものではありません。

 「4分33秒」について、

A「今までの概念を打ち破ったエポックメイキング的な存在、畏敬を覚える」

B「なんじゃこりゃ。聴衆なめてんのか」

 AB個人にとっては自分の意見は正しく、相手の意見は間違っています。好悪とはそういうものなので、「なんであんな曲が……」という感情は覚えて当然のことで、それを抑えることに意味もないので(ワタシたちは悟りを開いて聖人になるために生きてるわけではないので)、大人の対応として誰にも聞かれないところ、もしくは好みを同じくする仲間内で楽しくつぶやくと良いと思います。

 ちょっと脱線しますが、今回のボカコレでレギュレーション違反によりルーキー一位の曲がいったん消えました。これは完全に推測でしかないのですが、「なんであんな曲が……」が爆発した結果ではないのかなと思っています。そう思った一部の人が「レギュレーション違反だ」と運営に通報したのではないかと。無色透名のときも同じようなことが起こってましたよね。あれも、そういう背景があったんじゃないかと思ってます。
 運営が悪い、という意見は事件が起こった後だったら誰でも言える話で、実際、問題となったレギュレーションは「新品の曲を出してもらいたいなぁ」という素直な要望から作られたと想像されます。これを盾にとって、「あの曲はこの部分が前の曲と一緒!」という引きずり下ろしの武器に使われるというのは想定外だったのではないでしょうか。

 承認欲求というのは二通りの形で発揮されます。
 一つは、何とかして目立ち、自分の生きる意味を確認する方法。
 もう一つは、成功している人を引きずり下ろすことによって、相対的に自分のヒエラルキを上げる方法。
 炎上商法は、これらを組み合わせて使っています。
 悪いことをして目立つ。
 有名人をけなす。暴露する。

 数千人分の本能を制御するのは無理なので、こういった賞レースでは必ず何かしら予想外の問題が起こることが予想されます。再掲になりますが、芸術系の分野は好みの問題なので、こういったことが起こりやすい。

 多分、ボルトと100m走をするぞとなった場合、「今ボルトはフライングした! レギュレーション違反だ!」みたいな声は、たとえ多少フライングしていたとしても起こらないと思います。きちんと差が数字で出るので。
 しかし、音楽の場合であれば、「小豆沢さんの音楽、●●●(メジャアーティスト)よりも好きだしいいと思う!」という声が上がってもおかしくないのです(今のところワタシの耳にまでは届いてませんけど)。

 閑話休題。

 ようやく、本題に移ります。

背景

 ボカコレで伸びる伸びない、という現象について、様々な意見が跳梁跋扈している印象がありましたので、前々から自分で検証してみたいなと思ってました。巷間に流布する「伸ばすテクニック」として耳にしたことがあったものは、早めの投稿事前のリストによる初動再生数増加グループを組んで初動の再生数、イイね、マイリストを互助的に稼ぐ、などがありました。
 なぜ初動に関わる要素が多いのか? 
 それは、「初動で伸びると瞬時ランキングに載り、それをリスナが参考にして聴いていくから、行列効果で伸び続ける」という仮説をみんなが信じており、初動で伸びるような行動をとろうというモチベーションが存在するためです。もちろん、仮説なので真実かどうかはわかりませんが、演繹的に真実に近いと考えられており、小豆沢もそう思います。「とりあえず人気な曲をおさえておこう」はシーンを理解する上で非常に効率のいい戦略です。
 面倒くさがりの小豆沢個人で検証可能なものは、「早めの投稿」ぐらいでした。事前リストは作るのも手を挙げるのも面倒くさい。グループを組むのはもっと面倒くさい。
 早めの投稿は「いわゆるヘビィリスナ、が上から聞いていくため、URLに若い番号が振られていると伸びやすい」という仮説に基づいた戦略です。無色透名祭の際は、これで勝負がついた(1ページ目にどの曲が載ったか)と、一部の間で言われています。

検証方法

 実に単純ですが、できるだけ早く投稿しました。一か月前から予約投稿できるので一か月前の2/19日に行いました。ところが、ここで大誤算がありました。「一か月前」ではなく、どうやら「30日前」だったようでして、2月は28日しかないので、実際は2/17に予約投稿可能だったんですね。なんともはや。2日もビハインドしてしまったので本検証結果はあまり意味がないかもしれませんが、最後までお付き合いくださる方は続きもどうぞ。

3/19 0:00~3/20 8:30の期間(期間前半)

 他の影響を排除するため、「広告は打たない」「事前リスト作り、事前リストに入れてもらうことはしない」「ボカコレ開始前、開始時に頻繁に行われる「告知」は行わない」という前提条件ではじめました。返報性による再生があってはいけないので、この期間には同業者の曲にイイネ等をつけることも行いませんでした。
 
 上記工夫により、同業者からの再生を極力排除し、一般リスナにのみ届くようにしたつもりです(ニコニコ動画内のフォロワには投稿時にわかってしまうのですが、効果は薄いと割り切って影響を無視しました。実際は、非常にありがたいことに、フォロワさんで投稿初期に聞いてくださった方が10名弱いらっしゃいました。さんきゅう!)。

3/20 8:30~3/21 17:00の期間(期間後半)

 投稿時期が2日遅れたとはいえ、比較的早めの投稿だったはずなので、上から聴いていくというヘビィリスナの視聴はすでに終了していると考え、ここから先は通常通りに行動しました。3/20 8:30にTwitter上で「告知」を行い、同業者に対し出場しているということを表明しました。また、他の曲も積極的に聴きにいきました。

結果

 期間前半(32時間30分)での視聴数は80程度。そのうち10名程度は「方法」の部分で触れたフォロワさんのものなので、実質70程度。

2023年3月19日10時00分
2023年3月20日8時16分

 
 期間後半(32時間30分)では告知後24時間で+300。最終的に510再生。
この間、自薦はせず、皆さんの曲を聴いてました。もうなんと申しますか、皆様の力に感謝感激雨嵐では二宮君が好き、です。

2023年3月21日8時49分
2023年3月21日16時00分
2023年3月21日17時00分

 総括すると、告知を行っていない状況で得たのは80再生。告知+祭り参加により得たのが430再生。

考察

 今回の結果からは、ヘビィリスナがリストの上から聞いていくため、投稿が早いほどいいという仮説は正しくない可能性が高いと言えそうです。
 小豆沢はヘビィリスナという存在が圧倒的に少ないのではないかと考えています。では反対に、圧倒的に多い通常のリスナは、どう行動するか? 背景のところでも触れたように、ランキングを見てどの曲を聴こうかと考えるでしょう。小豆沢ならそうします。わざわざランキング外を調べにいく労力をとることはしません。WBCも見てないけど、結果は知りたいし、いいシーンだけは見たい。
 となると、やはり、ボカコレランキングレースを制するためには、初期ランキングで上に行き、一般リスナに届けることがかなり重要となりそうです。

 今回の検証では、初期ランキングに影響を及ぼす要因の中で、「投稿の早さ」はあまり重要ではない、という結論になりそうです。
※無色透名祭の場合は、最初に何を聴くかという部分で他に動機がないため「1ページ目」というのが重要になったと考えています。

 となると、最初のゆらぎを制するにはどうすればいいのか。
 
 無色との違いは匿名ではないこと。

 期間後半の結果も考慮すると、「同業者」の存在はかなり大きな力となります。(小豆沢の曲をご視聴等いただいた皆様本当にありがとうございました!)

 つまり、背景で言及したグループを組んで初動の再生数、イイね、マイリストを互助的に稼ぐという戦略がぴたりとはまると考えられます。

 この戦略を実際にとっている人がいるかどうかは存じませんが、かなりいい方法だと思います。
 文脈を誤って皮肉的に捉えられてはいけないので、明言しておきますが、小豆沢は本当にいい方法だと思ってます。
 ムーブメントは一人では作れません。マスメディアのタイアップで売れた曲は数知れず。忘れてはいけないのは、「こいつを売っていこう」と他人に思わせることができた実力です。
 つまり、実際にこの戦略をとろうとする場合、そこそこの規模のグループを組めている時点で、リーダになってる人には何か光るものがあったんだ、ということです。

 一つ難点があるとすれば、ボカロ文化はオルタナの文脈で成長してきたもの(だと小豆沢は思ってます)なのに、メインストリームが使うような手法を使ってのし上がることに自己矛盾が生じないかどうか、という部分でしょう。
 カートコバーンはそれに苦しんで自殺したともいわれています(当然諸説あり)。消費文化に対する反逆者であったはずなのに、いつのまにか消費文化の真ん中にいた自分。

 ついでと言ってはなんですが、今回の結果はワタシの事前予測を裏切るものでした。というのは、今後移行していこうと思っていたyoutube shortsとTwitterの再生数の間には相関がないようにみえており、ニコニコも同じようなものかなと考えていたからです。実際、過去、ワタシが曲を出した場合、Twitterではなく、ニコニコ内検索から来たという割合が大きかったのです。
 ところが、今回、ボカコレにおいてはニコニコではなくTwitterが主戦場になっているという結果になりました。
 手持ちのデータでは何の考察もできませんので、今後の検証を待ちたい(誰かやってください)。

結論

 小豆沢Qは、一般リスナからすると全く無名なボカロPです。そんな無名状態からボカコレを制するのであれば、以下のルーティンを組んでいきたいです。

1.まずは同業者の友達をたくさん作って仲良くしておく
2.仲間とともに初動のゆらぎを制し、ランキングに載せる
3.それ以降は神の領域なのでどうしようもない
4.次のボカコレまでに1を強化する(だんだん初動が大きくなる)。

 結局、日々の積み重ねが大事かなと思います。最近はブームというか消費のサイクルが早いので、忘れられてしまうのも早い。

 小豆沢自身、一年間やってきましたが、最初の頃によく話していた方と、今頻繁に付き合ってる方とは違います。もちろん、ずっと仲良くしてる方もいるんですが、少数です。
 人は細かい出会いや別れを繰り返して生きています。ネットであれば、生きている以上繋がっていけるのですが、その分、つながっておこうと思うかどうかを決定するのは、物理的地理的要因でもその人の曲でもなく、人柄です(小豆沢の場合)。

 なんだかんだ言いましたが、小豆沢の結論としては(単純で申し訳ないなんですが)、人間性を磨くことに尽きるかなと思います。
 ああ、この人とは繋がっていたいな、と思ってくれる仲間を増やしていければいいなと思います。つまりはファン的な友人ですね。
 ボカロ文化はボトムアップの文化だと思います。
 ボカロPが推戴するボカロPがだんだんとシーンを代表するボカロPになって、一般リスナにも届くようになる
 そういう社会なのではないでしょうか。

※1曲の良し悪しは言及しません(再掲)
※2少々申し上げるならば、シーンの最大多数に響く曲調であれば有利だと思います。流行りを取り入れろというのは、多数決の世界では絶対権力です。ボカロシーンにおけるメジャ層が推戴するのがメジャボカロPになっていくという仮説なので、ボカロシーンの曲調というのはシーンにおけるマジョリティな曲調を持つボカロPたちが作り上げているはずです。

 勘違いが無いように、念押ししておきますが、本稿はボカコレで伸びる伸びないという話です。そもそもそれを目的としていないボカロPさんが多数いることを忘れてはいけません。


PS
 事前リストに関しては、人の善意に頼る方法である以上、不確実性が大きすぎるため、オプションの戦略として持つ程度にしておいて、あまり力をいれないほうがいいように思います。

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