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0317「偽肉レビュー」

家を引っ越して、わりと基本的な生活のクオリティが上がってしまったので、相反して言いたいことや書きたいことが減退している感じがする。私がここに書いていることなんて大体自分の周辺への文句であるとか、社会への不平不満であるとか、ニュースピックスおじさんの出来損ないみたいなことばかりであるから、幸せな生活を送り始めると難しいことになる。別に今までも幸せだったのだが、住環境というのはここまで人間に大きな影響を与えるものなのか。加えて、ここ数日私の人間性がまろやかになってしまっている原因がもう一つあるが、これはもう少し時間が経ってから書く。日記を続けることができていれば。

最近、かなり偽肉を食っている。偽肉というのは、文字通り偽の肉で、大豆とかその他の植物性蛋白質でつくられたものだ。ある種の豆腐だ。日本にも豆腐ハンバーグみたいなものがあるが、アメリカの偽肉文化というのは相当やばいところまで来ている。5年住んでいてあんまり気づいていなかったが、こんなことになっているとは。

10日くらい前、いつものように近所のトレジョ(Trader Joe’s=スーパーマーケット。オリジナル製品中心で中間業者のマージンを排除しているのでなんでも安い。)で買い物をしていた。私はベジタリアンというわけではないので、普通にトレジョでステーキ肉も買っているし、チーズ入りソーセージも買って焼いて食っている。が、高校生の一時期ベジタリアンをやっていたし、食わなくてすむのならわざわざ食わない方が良いのではないかくらいには思っている。

これには理由があって、恥ずかしいながら、私は動物の屠殺シーンや解体シーンを直視できない。辛くなる。痛みを想像してしまう。だから、商品化された肉を美味しく頂くことはできても、原則的には肉を食う資格が無いと思っている。資格が無くても食っているのでご都合主義なのだが(罪悪感はあるが)。しかし、それを直視できない人間は基本的に肉を食う資格は無いんじゃないかという考えは、ずっとある。

で、トレジョの豆腐コーナーでいつものようにTERIYAKIフレーバーの厚揚げ豆腐を買おうとしていたとき、ふとその近くに置いてあった偽肉ソーセージと目が合った。ずっと前から、というかここしばらくじりじりと偽肉コーナーが拡大している感じをうっすら認識していたので「一度やってみるか」と思い、偽イタリアンソーセージを買ってみた。焼いてみた。

これはほぼ肉だ、肉ではないと言われればそうかもしれないが、肉であると言われればそうであるというレベルで肉だ。ニューヨークのベジタリアンレストランとかは行ったことがあったので、そこで供される偽肉の肉っぽさに驚いたことは記憶にあったが、普通にスーパーに売っている偽肉がここまでとは思わなかった。驚いた。値段も、マジ肉のソーセージとあんまり変わらない。

上述の通り、私は、肉を食わないで済むのなら食わないでやっていきたい人間で、しかし、日本に帰ったらきっと焼肉を食うし、中国に行ったら麻辣燙を食うだろう。偽肉焼肉は無いからだ。

しかし、普段の蛋白質摂取においては、この偽肉は全然これで良いのではないかと思えるくらいに美味しい。イタリアンソーセージだけでなく、ホットドッグ用のソーセージ(これは、やや平坦な風味だが、ケチャップをつければ行ける)、ミートローフ的なもの、ハンバーグ、ひき肉、ベーコンまで、偽肉シリーズはかなりのところまでカバーしている。

今日は、ホットドッグ用のソーセージと大豆ヌードルを焼いて食った(大豆ヌードルは、要するに湯葉でできたきしめんのようなもので、これも非常においしい)

FINDERSに載っていた、下記の「『いきなり!ステーキ』がNYで苦戦する理由を考える」での考察は素晴らしくって、確かに「いきなり! ステーキ」がNYに進出した去年というのは、ステーキ的には相当アウェイなタイミングだったはずで、ここ数年、年を追うごとに人々は肉食を忌避したり、小麦粉に含まれている「グルテン」は私が移住してきたくらいからもう完全に不健康の象徴みたいな感じになってて、「グルテンフリー」(=グルテン入ってません)であることを条件に物を買って食っている人はだいぶ多い。ので、これらの偽肉もグルテンフリーだ。一昔にあった、「グルテン肉」とは一線を画すものなのだ。

だからどこのスーパーでも偽肉コーナーは広がっている。

それにしても、この体験を経て思うのは、人間は、肉的な、肉でないものであっても、このレベルまで来てしまうとかなり脳をだませるのだなということで、実際私などは食うのは好きだが、味覚についてそこまで求道しないタイプで、ある種味覚の合格ラインがすごい低い人間なので、もう日常生活では必要なとき以外はわざわざガチ肉を食わない気がする。

勝手な話だが、生物学的・細胞科学的に、動物性蛋白質というのものは複雑で、そこには動物であるがゆえの抗えない薬効がある物質が含まれているものだと思っていた。ゆえに、人間は肉ばっかり食うのだと思っていたが、今のアメリカの偽肉は本当にそこを超えてきている。こういうのを体験すると、インターネットももちろんそうなんだけど、やはり面白い時代に生まれたものだなと思う。日本に帰ったら確実に居酒屋で軟骨の唐揚げを食うけど(あれはアメリカでは居酒屋でも食えない)。

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