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0909「小林製薬と『なろう系』小説の類似性について」

昨日は、最近飲んでいるマラリア予防薬である「マラロン」から始まって、メジャーな薬の由来を調べてみたりした末に、「カコナールのナールとカロナールのナールは違うナール」という事実を突き止めるところまで来た。昨日と言っても、この続きを書いているのは引き続きタンザニアのダルエスサラームに向かう飛行機の上だ。

前回扱ったカコナールの「ナール」はもともと「治る」が「ナール」になりカロナールの「カロ」は、「軽く」という言葉が変化したものらしい。本来は、「葛根湯で治る」が「カコナール」になり、「軽くなる」が「カロナール」になったわけだが、なんでそんな2つの違うフレーズが同じ「○○ナール」という着地をみたのか。

言語学者とかじゃないので専門的な見解は知らないが、まあそれは、「薬っぽさ」というのと、それに伴う「安心感」みたいなものなんだろう。「カロナール」が「カロナオル」だったら、ちょっと薬としての信頼感というか、背中を任せられる感じが損なわれる気がする。

このへんは書き続けるといくらでも書けてしまう気がするが、ドラクエの呪文なんかも、薬の名前に似た「元の意味をベースにして、語感で印象を強める」手法を使って命名されている気がする。

「イオナズン」の語源は、化学反応による爆発をイメージして、Ionize=電離という言葉らしいが、そのまま「イオナイズ」ではなくて「イオナズン」にしているのは、当然ながら「ズン」が欲しかったのだろう。イオナズンは多くのドラクエ作品で後半に登場する強力な全体攻撃呪文であるから、攻撃力に重みが欲しい。重みを表現するフレーズとして「ズン」以上のものはない。

そこで小林製薬が登場する。小林製薬の商品ネーミングのファンは多い。小林製薬のネーミングは、前述の薬品的な「語感」に依拠したものよりも、もう少し「意味としてストレートに殴ってくる」感じが強い。さかむけが治る「サカムケア」とかだ。薬っぽくする意識はあるが、それ以上に、ストレート・アヘッドな意味伝達への執念が感じられる。

しかし、中には薬品感に囚われない、むき出しのマニフェストになっているような商品名もあって、それが、「髪の毛集めてポイ」に代表される描写系のネーミングだ。

この感じ、何かに似ていると最近思ってしまうのだが、何かというと、最近隆盛している転生モノなどに代表される「なろう系」小説のタイトルだ。

「転生したらスライムだった件」を筆頭として、「自動販売機に生まれ変わった俺は迷宮を彷徨う」とか「悪役令嬢なのでラスボスを飼ってみました」とか。

これらのなろう系小説のタイトルが長い理由というのは、こういった作品群を生み出した小説投稿サイト「小説家になろう」でランキング上位になるためには、タイトルで内容を理解させ、読者を摑まないといけない、という理由らしく、ソーシャルメディア以降のネット記事における「見出し芸」の技術なんかに通じるものがある。

https://syosetu.com/

こういった「転生したらスライムだった件」系の小説タイトルと、「髪の毛集めてポイ」にはとても強い類似性があるような気がする。その根底にあるのは、「実際に手にとって内容を理解する前に内容のアウトラインを知っておきたい」という、現代人の時間の使い方の傾向ということになるのだろうか。

そのへんの、「読む前に面白いかどうかを判断してタイムパフォーマンスを上げる」みたいな心理の話は、下に貼った本に詳しく書いてあって、とても勉強になった。1000文字を超えてしまったので、これ以上ここでは掘り下げないことにするが、「髪の毛集めてポイ」は別にZ世代向けとかじゃないしなあと、自分で書いてて矛盾に気づいていたりもする。


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