0504「大塚愛式トレーニング」

そんなわけで昨日の日記で筋トレをカミングアウトしたので、これからはわりと筋肉のことについて書いても良くなった。何はともあれ、運動していると全体的に調子は良いので、筋肉を休める日でも、30分自転車を漕いだりとか、そういうようなことをやるといろいろうまく進む感じがあるので、そういうことをしている。

しかし今日は妻が休んで、私が全体的に子供の面倒をみるような感じの土曜日だったので、徹頭徹尾子供中心だ。起きるときから子供たちが自分の上に乗ってきて跳ね回る。端から見ると間違いなく幸せそうな家族の光景なのだが、わりと腎臓が潰れそうだ。私の上で次男が跳ねながら「ベーコン焼いて!」と叫んでいる。そこから先、基本的に子供たちの断続的なリクエストに対応しながら午後まで過ごす。

うちは12歳と4歳と2歳なので、要求が多岐に渡る。12歳は日本のオンライン家庭教師の宿題が全然わからなくて聞いてくる。もう中学生なわけなので、方程式とかやったほうが余程とんちが不必要で良いように思うのだが、なんか知らないけど小学生の中学受験の頭良さそうな問題ばっかりやっている。家庭教師の先生はたぶん頭が良いのだろうな、と思う。長男には、基本的なルールの素振りをやってもらったほうが良さそうな気もするが、自分も家庭教師だったのでわかるが、どうしても、うまく階段を登れない子のことが理解できなかったりもするので、良し悪しだなと思う。

下の子たちは、お腹が空いたら腹減った腹減った言うし、どんどん散らかすし、2歳の方はちょこちょこウンコもする。「水をくれ」とか「牛乳をくれ」とか言うが、コップの色とか柄を間違えると、超怒られる。4歳の次男に、長女用のピンクのコップを渡すと猛反発を食らうし、長女に水色のコップを渡しても猛反発を食らう。女の子はピンク、男の子はブルー、みたいのは、後天的な刷り込みによるものだとずっと思っていたのだが、長女はデフォルトでピンクを好む人のようだ。

そんなわけで、本当に何もできない。妻は毎日これなわけであって、頭が下がるとしか言いようがない。いつの間にか完全に夜だ。東京がゴールデンウィークで何も仕事の連絡をしてこない「夜が気が楽な日々」が明日で終わるので、夜ゆっくり本を読んだりできる時間は、あとちょっとだ。明後日になると、本を読んでようが何をしていようが、夜中ずっとSlackの通知が来るような生活に戻ることになる。月曜日に同じく日本の仕事が多いレイさんと話した時、レイさんのSlack通知の絞り方とかを少し聞いて、ああそうだよなーとも思ったが、私の場合はスタッフが日本にいる会社の社長的なものでもあるので、ある程度柔軟に対応しなくてはならない。そのためにも、筋トレをして体力をつけなくてはいけない。

もろもろが終わってから筋トレをする。昨日書いたように明るくて前向きな自分になりたい。普段は、ジャズを好んで聴く私だが、筋トレのときは、軽やかにウェイトを上げられそうな軽快な音楽をワイヤレスヘッドホンで聴きながらスミスマシンを使用し、ダンベルを上げ、ラットプルダウンを行う。

そこに流れる音楽はつまり、大塚愛だ。筋トレをカミングアウトしたついでにカミングアウトしてしまうと、私は筋トレ中に大塚愛を聴いている。大塚愛ではない場合もあるが、筋トレには大塚愛が一番良いと思う。「愛 am BEST, too」を聴きながらウェイトを上げる。最近、何かの記事で、鍛えているときは鍛えている部位の名前を言うと良い、というのを見て、背筋を鍛えているときは、「背中っ、背中っ」と言い、肩を鍛えているときは、「肩っ、肩っ」と言っている。これをすることで、自分が鍛えている箇所への意識が強まって、筋トレの効果が上がる。

つまり私は、大塚愛の「さくらんぼ」を聴き、「肩っ! 肩っぁぁぁー!」などと声を絞り出すという狂態を、ニューヨークのアッパーウェストサイドの片隅で演じながら筋肉を追い込んでいる。音楽というのは重要だ。大塚愛が「もういっかい!」と叫べば、私も「もう一回上げてやる!」と思う。これが、キング・クリムゾンの「Starless」とかだったら、上がるものも上がらないだろう。この場合、上げることが目的なのだから、大塚愛が正しいのだ。大塚愛だから上がるウェイトがあるのだ。

ゴールデンウィークなのもあり、Facebookのタイムラインには、「ニューヨークでカフェをめぐっています」とか「ニューヨークでおしゃれホテルをめぐっています」みたいな、ニューヨークにいらっしゃった皆さんのヒップな投稿が並んでいる。そんなおしゃれな体験が繰り広げられているのと同じマンハッタン島で、ハゲた大男が大塚愛を聴きながら「肩っ! 肩っぁぁぁー!」と叫んでいる。これが真のニューヨークじゃあーーー、いや、「俺がニューヨークじゃあーー」とばかりに私はショルダープレスのウェイトを上げる。 

そして、筋トレが一通り終わると、何らかの賢者モードというか、ホルモンバランスが変わって、脳がカームダウンする。大塚愛の歌だけが耳に流れている。大塚さんが「CHU-LIPの恋模様〜〜〜」と唄っている。自分はいよいよダメかもしれない、と思う。

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